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高知といえば、坂本龍馬、吉田茂元首相、パワフルな女性たちの代名詞「はちきん」、皿鉢料理、土佐犬など、豪快なイメージが湧いてきます。
たしかに、高知の人たちは明るくて、酒豪ぞろいで楽しい。そして、フレンドリー。地元民が集う「ひろめ市場」で飲もうものなら、隣に座った老若男女とたちまちうちとけて一緒にわいわい飲んでいるという、土地柄でもあります。
そんな高知県には、日本酒の蔵元が18あり、四万十川、仁淀川などの清らかな水と豊かな米、有能な杜氏さんたちの醸す名酒が数々作られています。
今回は、お酒ではなく、その中の銘醸「司牡丹」の酒粕を使った「食べる酒粕」をご紹介します。
酒粕は身体によく、美味しいもので、関西では板粕をあぶっておやつに食べるというお年寄りの話を聞いたことがあります。
魚を粕に漬け込んでも美味しいし、冬には、温まる粕汁などもご馳走。が、最近はどうもお料理に使うことが少なくなっているようです。
そこで、見つけたのがこの「食べる酒粕」。
食べてみたら、高知らしく酒粕に宗田鰹、味噌などで味つけした非の打ちどころのない美味しさでした。
今回、高知に行く機会があり、せっかくなので「司牡丹酒造」さんに伺いました。
この蔵元がある佐川町は、世界に誇る「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎氏の出身地でもあります。古い土蔵造りの街並みが残る一角に、司牡丹酒造はありました。
聞けば、1603年開業の歴史のある蔵元。現在の酒蔵はさすがにその当時のものではありませんが、大いに歴史を感じる建物です。ここで「船中八策」などの名酒が生まれています。
坂本龍馬も司牡丹を飲んでいたというお話を聞き、その時代にタイムスリップしたような気分になりました。
「食べる酒粕」の話に戻りましょう。蔵元さんのところには当然、たくさんの酒粕ができます。この酒粕を使った美味しいものができないだろうか?あれこれ試行錯誤の結果、逸品が生まれました。
それが、酒粕に高知でたくさん獲れる宗田鰹を使い、味噌、柚子胡椒などで味つけした「食べる酒粕」。
実際、この手の合わせ味噌的なものはよくあります。が、他と違うのは、酒粕が入っているために味が奥深いこと。やはり発酵の力はすごいと思い知らされます。
お酒のおつまみやごはんのおともにはもちろんいいのですが、野菜と合わせたくてディップにしてみました。
「食べる酒粕」にブルサンのクリームチーズ、ハーブ&ガーリックを1対2くらいの割合でよく混ぜるだけ。食べる酒粕にはすでに美味しい味がついているし、クリームチーズにはガーリックとハーブの味が入っているので、ほかには何にもいりません。
酒粕、味噌、チーズってみんな発酵食品。国は違っても、同じ発酵食品同士って合うんです。
日曜市でみつけた、二十日大根、ミニ大根、ミニ人参を洗ってそのまま、食べる酒粕をつけてがぶりとかじれば、南国土佐の味が口中いっぱいに広がります。久しぶりに高知に来て、やっぱり高知はいいなぁと思いました。
また訪問したい。ディップをいただきながらそう思いました。
司牡丹酒造
電話番号:0889-22-1211
※掲載情報は 2017/03/30 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フードカルチャープロデューサー
博多玲子
東京生まれの東京育ち。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業。
なんとなくポルトガル語学科に入ったのと同様、大手出版社に入社。仕事をしてみたら、編集の仕事の面白さに目覚め、『LEE』『Marisol』などの創刊に携わる。以来、長年女性誌、ビジネス書などの単行本の企画・編集を手がけた後、独立。担当範囲は、食、住、旅など。
現在は、書籍や雑誌の企画編集ライティングを手がけるかたわら、玉川高島屋・玉川テラスにてエディターの目線で面白いテーマを取り上げる「博多玲子サロン」で、セミナーをほぼ毎月開催。
個人的には、人気シェフのお料理教室や、「ぐうたら料理サロン」にて自身の料理教室や食事会を不定期開催。また、企業のアドバイザーなども手がける。
今まで地方にたびたび取材や旅行に行き、素晴らしいものが埋もれていることを実感。これからは本当に役立つ地方活性に力を入れていきたい所存。
手がけた書籍:
『タニアのドイツ式整理術完全版』(集英社)
『ザ・サンドイッチ・レシピ』『HOME PARTY 料理と器と季節の演出』(世界文化社)
『りんごLovers』『まいにち、パン。』(主婦と生活社)など