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フランス古典菓子のベースが根付くパティシエ佐伯裕生氏の新しい表現
こんにちは。料理家/食アートコーディネーターの中村まりこです。
2016年9月、田園調布の町の一角に、パティスリー「コティレドン」がオープンしました。この閑静な住宅街においては初めての本格派パティスリーの登場です。通りすがりに気になって窓から店内をのぞきこむと、知らず知らずのうちに魅惑的なフランス菓子の世界へ引き込まれていました。
コティレドンの店内に並ぶ焼き菓子やケーキは、オーソドックスなフランス古典菓子のフリをしつつ、未知なる世界感を秘めた鈍い輝きを放っています。
<焼き菓子>
焼き菓子のパッケージには、アイロニカルな表情がカワイらしくもドキッとさせる、うさぎのロゴマークがプリントされています。オーソドックスな外見なのに、包まれたお菓子を食べたら別次元の味覚体験ができる、コティレドン流のウィットが感じられます。
カヌレ、ガレットブルトンヌ、クロワッサン、フィナンシェ、フロランタン、マドレーヌなど、いずれも定番フランス菓子ですが、どれ1つとってもコティレドンのパティシエ佐伯裕生氏の世界観が反映されていて、1つ1つに新しい発見があり、その新次元の美味しさに感動しました。
佐伯氏オリジナルの「サブレ・ショコラ・アブリコ」は、サブレ&チョコレート&アプリコットジャム&クミンの異色な組み合わせ。
この組み合わせがどのような発想で生まれたのか、佐伯氏に尋ねてみると、
「サブレ&チョコレート&アプリコットの組み合わせが存在し、アプリコット&クミンの組み合わせも存在する。(であれば)それらを足してみたら美味しいのではないか」とのこと。
シンプルだけれども、誰もやらなかった発想。正に天才です。
クミンとチョコレートの出会いは、お菓子というジャンルにかかわらず、初めての経験です。仲人のアプリコットとサブレの存在が、絶妙なマリアージュを実現しています。
<ケーキ>
ケーキの外見は、よくみると古典的な型から解き放たれた個性的なビジュアルをしており、外見を構成するエレメントの組み合わせにも驚きがあります。佐伯氏から「酸味と苦みのアクセントがキリリと効いている」と説明された「カプリス」という名のタルト・オ・フレーズに至っては、外見からは味の想像ができませんでした。
「ひょんな偶然から生まれた」という「カプリス(気まぐれ)」は、パティシエの天性に神が介在した偶然の産物だけに、経験のない美味しさに出会えるはずです。こちらは、イチゴが美味しい期間のみの展開です。
パティシエ佐伯氏の世界感が表現された「コティレドン」のスイーツに甲乙はつけられませんが、記憶に強く残ったものはシンプルな定番焼き菓子「ガレットブルトンヌ」。これ一つだけで、パティシエ佐伯氏の世界にどっぷりと浸かりたくなることでしょう。
パティシエ佐伯氏ご自身が「お菓子」に魅了されたきっかけを聞いてきました。
「学生時代、おそらく2、3回目のデートで1つのマロンパフェをシェアして、パフェの一番上に1つしか載っていないマロンを譲り合っているカップルを見て、人の心と心を近づけるのはお菓子だ……と感じた」
佐伯氏の新しい表現は感動を生み、その感動を人に伝えたくなります。
まさに人と人とを感動で繋ぐ、魅力あるお菓子を生み出すパティシエだと感じました。
コティレドン パティシエ 佐伯裕生氏(略歴)
瀬戸内生まれ。オテル・ドゥ・ミクニにてパティシエを約5年経験された後、トロワグロ東京の開業から参加して約5年、恵比寿カフェレストランでの5年を経て、計17年間にわたってデザートを作り続け、2016年9月、フランス古典菓子のような「定番」の中に「新しい発見を」という思いで田園調布に「コティレドン」をオープン。
※掲載情報は 2017/03/27 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家・食アートコーディネーター
中村まりこ
SHOKUart代表
料理家
東京出身。
ELLE grumet フードクリエイター部、料理教室 鎌倉legame cooking 主宰、フードスタイリング、レシピ開発、イベント講師、食に関する記事の執筆、を中心に活動。
食に造詣の深い父とウクライナ人の母から2つの食文化を習得。世界23ヵ国で生活した高校3年間を原点に、料理の道へ。
和食材も自由に取り入れた料理ジャンルからでなく素材からボーダレスな料理を経験上を軸に独創的な組み合わせで「empirical&unleash」を表現する「SHOKUart」設立。
外国の方にむけて「私達の日常の和食を伝えたい。」思いから、日本家庭料理の料理教室 "Authentic Japanese Cooking Class" も主宰。
外国人向けのWedマガジンサイトへのレシピ提供も手掛ける。