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醤油の町・銚子で造られています
JR銚子駅を降りると、広い道路がまっすぐ延びている。その先に輝くのは利根川河口であります。そのどんつきに近い場所にあるのが、寛永7年(1630)創業の醸造所「銚子山十」。
歴史を感じさせる木造二階建ての軒先に下がる暖簾には「ひ志お」と染め抜かれている。醤油の原型といわれる「ひしお(醤)」を意味しており、今でもその醤を造っている醸造所なのだ。
店主の室井さん(写真)は「醤司(しょうし)」という肩書きを持つ職人。その無骨な指先からはうまそうな醤油の味がしそうである。
うまみ猛烈
銚子山十のひしおは、大豆と大麦を原料にして造られる。発酵させてから桶に仕込み、塩水を加え、約1年間寝かせれば出来上がるのだが、このときひしおの上面に濃厚な液体がにじみ出てくる。これが「源醤(げんしょう)」であります。
いわばひしおのエッセンスであるから、出来る量は少ない。それを瓶詰にして販売しているのだ。
あのですね、源醤のうまみは猛烈です。店頭でぺろりとひと舐めしたとき、思わず「何だこのうまみ...尋常じゃない!」と声を上げてしまったほどすごい。
そこで何度も原材料をお聞きしたが、大豆と大麦と塩水だけなのだ。
たったそれだけで尋常じゃないうまみが出てくるのは、まさに発酵の力でありましょう。
うどんで試してみる
かくのごとし。釜揚げうどんでも試してみた。
たいていはねぎを散らして生醤油だけで食べることが多いのだが、それだと醤油のしょっぱい風味が勝ちすぎることもある。
そこで醤油の替わりに源醤をひとたらしすると、これがまたウマいのなんの。
醤油と違って塩味のとがった部分がなく、舌触りがとても丸い。しかしうまみは数倍も激烈である。
香りも違う。醤油が華やかなアルコールっぽさを揮発するのに対して、源醤は揮発してくるものが少なく穏やか。どちらかといえば生味噌に近い香りで、その中にはよく熟したプルーン、チョコレート、わずかにカラメルの香りも含まれている。
うまみが濃いので使う量が少なくて済むのも利点だと思う。もともと、とても希少な液体なのだ。大事に、ここぞという時にだけ使いたい。お値段は210g入りで1100円也。
ごちそうさま!
※掲載情報は 2017/03/20 時点のものとなります。
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キュレーター情報
缶詰博士
黒川勇人
昭和41年福島県生まれ。平成16年から世界の缶詰を紹介する『缶詰blog』を執筆。缶詰に精通していることから"缶詰博士"と呼ばれ、TVやラジオ、新聞など各種メディアで活躍中。国内外の缶詰メーカーを訪れ、開発に至る経緯や、製造に対する現場の“思い”まで取材するのが特徴。そのため独自の視点から缶詰の魅力を引き出し、紹介している。
著書は『おつまみ缶詰酒場』(アスキー新書)、『缶詰博士・黒川勇人の缶詰本』(タツミムック)、『缶づめ寿司』(ビーナイス)、『日本全国ローカル缶詰 驚きの逸品36』(講談社プラスアルファ新書)『缶詰博士が選ぶ!「レジェンド缶詰」究極の逸品36』(講談社プラスアルファ新書)、『安い!早い!だけどとてつもなく旨い! 缶たん料理100』(講談社)など。小曽根マネージメントプロ所属。
お問い合わせ Mail:k-k@kosone-mp.com