大阪寿司だが、稲荷と海苔巻きの“助六”も旨い!巣鴨の「八千穂寿司」

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毎日食べても飽きない「助六」

大阪寿司だが、稲荷と海苔巻きの“助六”も旨い!巣鴨の「八千穂寿司」

桜の開花がちらほら聞こえてくると、花見に行きたくなるのですが、若い頃はさほど興味のないことでした。しかし、齢を重ねると花見の季節になると何だか胸が騒ぐのです。この桜は、来年のまた観られるのだろうかと、自分の歳を思わず数えてしまいます。

 

今年はどこへ花見に行こうかと考えるのですが、人ごみの多い所は避けてあまりメジャーな場所には行きません。毎年必ず行くと決めているのは、自宅のある西巣鴨のマンションから見える王子の飛鳥山公園なのですが、公園自体より石神井川下流の音無川の桜を観ながら散歩するのを楽しみにしています。ただ、この川沿いの遊歩道はあまり花見弁当を広げるという雰囲気ではないので、もうひとつに穴場の小石川植物園に向うのです。

 

小石川植物園は植物学の教育・研究を目的とする東京大学の教育実習施設で、日本でもっとも古い植物園なのです。江戸時代に、8代徳川吉宗の時代に薬草園として使われるようになり、やがて園内に診療所を設けたて、これが小石川養生所になったという歴史があるのです。ちなみに飛鳥山公園に桜の植林を命じたのも吉宗で、暴れん坊将軍は偉い!この小石川植物園には梅、桜をはじめ菖蒲なども季節、季節で楽しめる場所なのでよく通っているのです。

大阪寿司だが、稲荷と海苔巻きの“助六”も旨い!巣鴨の「八千穂寿司」

花見と言えば団子ですが、私は団子ならぬ折り詰めの寿司を買って毎年出かけているのです。小石川植物園は都営三田線「白山駅」の近くなのですが、ふたつ手前の「巣鴨駅」近くにある「八千穂寿司」で寿司の折を購うのです。

大阪寿司だが、稲荷と海苔巻きの“助六”も旨い!巣鴨の「八千穂寿司」

「八千穂寿司」は大阪寿司の店なのですが、大阪寿司と言えば「箱寿司」なのです。大阪寿司は、江戸前の握り寿司に対して、木型を用いた箱寿司(押し寿司)で、酢締めの鯖、昆布締めの鯛、焼き穴子、茹でたエビ、玉子焼きなどがあります。この「八千穂寿司」を教えてくれたのはフランス料理「ヌキテパ」の田辺年男シェフだったのです。

 

なぜ、フレンチのシェフが大阪寿司なのか?これは、五反田の「ヌキテパ」で田辺さんの誕生会とかクリスマスのパーティーで最後の締めに八千穂寿司のいなり寿司が登場するのです。田辺さんの自宅が八千穂寿司の近くにあり、昔からこの稲荷を好んでいたのですが、田辺さんはかなりの寿司好きなのです。

 

稲荷寿司は天保年間に名古屋で油揚げの中に寿司飯を入れたものが考案され、全国へ広がったと言われています。関東の稲荷は、油揚げを半分に切って2個の四角い袋にしますが、関西では油揚げを対角線に切って2個の三角の袋にします。中身も関東では白いご飯かアサの実かゴマを入れる程度ですが、関西では五目飯を入れるのです。八千穂寿司の稲荷は完全に関東仕様なのです。また、八千穂寿司には細巻きもありますが、関西では細巻きは作らずに大巻き(おおまき、ふとまきともいう)なのです。さらにいうと、関西では「巻きずし」と呼びますが東京では「海苔巻き」なのです。

 

そして、この稲荷と海苔巻きの組み合わせを「助六」というのは有名ですが、江戸時代の中期に歌舞伎の市川團十郎家の人気の歌舞伎十八番「助六所縁江戸桜」が大流行していました。稲荷寿司と海苔巻きの組み合わせは、この「助六所縁江戸桜」の通称から取られたものなので皆さんご存知ですね。

 

名古屋で稲荷寿司が出現した時代は大飢饉の時で、簡素な油揚げにご飯を詰めたものが時勢に有っていたのです。同様に、江戸でも贅沢を禁止する倹約令が出されており、江戸前の魚を使った握り寿司に代わって、油揚げを使った稲裏寿司と海苔巻きが人々に好まれていたのです。油揚げの「揚げ」と海苔巻きの「巻き」から「揚巻」と呼ばれるようになり、「助六所縁江戸桜」の主人公・助六の思い人である吉原の花魁の名前も同じく「揚巻」という名前でした。寿司の揚巻きにあやかるようにと、いつしか「助六」と呼ぶようになったのだそうですが、本当にこの組み合わせが大好物で毎日食べても飽きませんね。

大阪寿司だが、稲荷と海苔巻きの“助六”も旨い!巣鴨の「八千穂寿司」

今年も八千穂寿司の寿司持参で花見に行こう!

大阪寿司・助六

八千穂寿司 住所:東京都豊島区巣鴨1-18-9 03-3945-4080

※掲載情報は 2017/03/10 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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