【レポート】発見と出会いと発掘と。日本でもますます広がるアルゼンチンワインの世界

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新たな色、新たなブドウ品種、新しいエリア、でも伝統もまた素敵

アルゼンチンワインのことは数度、ippinで紹介してきました(「アルゼンチン発マルベック。濃厚さとエレガンスの競演を心ゆくまで堪能しよう」https://ippin.gnavi.co.jp/article-6238/)(「【ワインを贈る#1】気品と重厚と革新。目上の方にこそアルゼンチンワインを」https://ippin.gnavi.co.jp/article-4745/)。

 

そこではいくつかのキーワードをちりばめました。アンデスの美しき自然と標高差、メンドーサという世界に誇れる良質なエリア、トロンテス、マルベックといったアイコンとなるブドウ品種。それらは、2016年の夏の段階でもなお、アルゼンチンワインのとっかかりとして知っていただきたい情報であり、ある意味ではそこを抑えていただければアルゼンチンワインは存分に楽しめるという情報でもあったと思います。

 

しかし、この晩秋、アルゼンチンワインの世界が日本にプレゼンテーションしてきたのは、僕自身、よりアップデートしなければ、しかも大幅に、というものでした。それはうれしくもあり、あまりの多様な情報に悲鳴を上げたくなるようなものでもありました。

 

悲鳴といっても嬉しいものもあります。そもそも、その多様は、アルゼンチンにおいては昔から続いていたことでもあり、また、アルゼンチンにおいて、ここ10年で生まれてきたもでもありました。

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カバー写真と2枚目の写真は『BODEGAS KRONTIRAS』のワイン。いずれも以前掲げていたメンドーサ×マルベックという定番の地域とぶどう品種の組み合わせ。これぞアルゼンチンワインという趣かと思えば、カバー写真のロゼは、やさしくほがらかで、美しいワイン。オーガニックなワイン造りを目指していることだけではなく、伝統の場所、ぶどうを使いながらも今の時代にあった表現をしようとしている点が、「ここ10年の新しいアルゼンチン」。2枚目のマルベック100%ワインも、大人のエレガントさを持ち、いわゆる「アルゼンチンワイン=ビッグBBQに合う豪快で大らかな昔のイメージのワイン」という方程式は成り立ちません。

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これまではメンドーサという名産地を軸にアルゼンチンワインを紹介してきましたが、そのよさは伝え続けるとして、新たに知るべきエリアもプレゼンテーションされました。アンデス山系に連なる標高の高いエリアから、今度は南(南半球なので言ってみれば北へ)の平原へ。パタゴニア。そこがまた多様なアルゼンチンを教えてくれる場所。上の写真はそのパタゴニアのリオ・ネグロエリアで生まれたワイン。ピノ・ノワールやメルローといったぶどうを使うワイナリーですが、このワインで使われるのはトゥルソー。フランスのジュラやサヴォワといった地域で知られる品種ですが、こうしたあまり著名ではないぶどうを、しかも、12ヶ月間コンクリートで熟成させるというユニークな方法で造るといったチャレンジをしています。繊細で、弱弱しいかと思う口当たりなのにどこか芯がしっかりしていて、小さくて可愛らしく、でも野にしっかり根を張った果実を存分に感じられる素敵なワインでした。これも「アルゼンチンワイン=ビッグBBQに合う豪快で大らかな昔のイメージのワイン」という方程式は成り立ちません。

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そのほかにも、美しく優美、しかし、かわいらしいロゼや、アルゼンチンではかなりの収穫量を持ちながらも日本では無名といっていいボナルダを使った飾らないワインも印象的でした。確実に新しいアルゼンチンワインの流れは、日本にも近づいていますが、逆に、「アルゼンチンワイン=ビッグBBQに合う豪快で大らかな昔のイメージのワイン」、このオールドスクールな方程式も、まだ日本では一般的とはいえません。しかもこうした昔ながらのアルゼンチンワインもまた、日本の幸せな肉とのシーンに幸せをもたらしてくれるものだと思いますし、トロンテスやマルベックというここ数年、日本におけるアルゼンチンワインの先鞭をつけてくれたぶどう品種も、まだまだ日本ではこれから広がっていくべきものといえるでしょう。

 

ワイン業界に身をおいていると、つい、新しいトピックスに飛びつきがちですが、そのよさはもちろんお伝えするとしても、業界で注目されるこうした新しいトピックス、新しいアルゼンチンのワイン造りのトレンドはもちろん、こうした今まで伝え切れなかった、まだ広がっていないアルゼンチンワインもぜひ楽しんでいただきたいと思います。多様化は情報の氾濫にもつながり、捉えきれない、面倒くさいということにもなってしまうかと思いますが、ぜひ、その多様化も楽しんでいただければ。世界第5位のワイン生産国アルゼンチンと日本のワイン好きの皆さんの関係はまだ始まったばかり。一度触れて、味わってください。

※掲載情報は 2016/12/05 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岩瀬大二

ワインナビゲーター

岩瀬大二

MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。

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