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独特の文化を有する「ザールラント」
フランスと国境を接しドイツ南西に位置する「ザールラント」。フランスのパリまでは電車で約2時間弱程度ですので、この地方の人々の多くはドイツ語とフランス語のどちらも話す事ができます。第二次世界大戦後に一時フランスの管理下に置かれていた事もあり、フランスの文化の影響も色濃く残る地方でもあります。ザールラントの特産品は日本でも人気ある陶器ブランド「ビレロイ&ボッホ」や、鉄鋼で栄えた歴史があり、今では世界文化遺産にもなっている「フォルクリンゲン鉄工所」があります。
そしてザールラントの人々が何よりも誇りに感じているのは、世界で唯一のバーベキュー「シュヴェンカー」があることです。
「シュヴェンカー」とは?
「ザールラント」の各家庭には必ずと言っていいほど鋼で作られた三脚のような支え棒が置いてあります。そしてその三脚の中心からは、チェーンが垂れ下がっています。これが「シュヴェンカー」です。
この器具を使ってバーベキューをするのですが、その方法もとても独特で気が短い人には全く向かないバーベキューです。まず三脚の垂れたチェーンにバーベキュー用の鍋をかけます。そしてその下に火を用意するのですが、伝統的には炭は使わずブナや果実の樹脂の少ない木を使います。火の用意ができたら肉を焼き始めますが、肉は豚の脂身が多いロース部位をメインに、ソーセージや牛の脂身がついている部分を使います。肉を焼く人も「シュヴェンカー」、焼かれる肉も「シュヴェンカー」、焼く器具も「シュヴェンカー」と呼ばれます。つまり「シュヴェンカー」が「シュヴェンカー」で「シュヴェンカー」を焼くのが「シュヴェンカー」です。何だか混乱してしまいそうですが、ザールラントの人は決して混乱しません。静かに「シュヴェンカー」の鍋を見守ります。
もともと「シュヴェンカー」の意味は揺らす、振り動かす、という意味ですが、お肉を焼く人は均等に火が通るようにこの鍋をぐるぐると回します。ワインやビールを飲みながら、何時間も回すのです。これこそが、「シュヴェンカー」の醍醐味です。時には2時間も3時間も家族と友達と会話をしながら、鍋を回す事もあります。1年に70回以上「シュヴェンカー」をやっている人もいます。12月26日は必ず森に入って「シュヴェンカー」を行う伝統もあります。
最後に、この鋼で作られる器具「シュヴェンカー」は代々親から子へ受け継がれていきます。100年以上の歴史があるものも存在します。つまり、「シュヴェンカー」は家族の絆を深めてくれるものでもあるのです。
今回は広報文化担当公使付アシスタントのカロリン・ヴァイドマンさんにお話をお聞きしました。
2014 ドクター ワグナー リースリング クーベーアー
フランスの文化を色濃く残すザールラントでは、ワインも盛んに飲まれます。日本ではなかなか「シュヴェンカー」ができるチャンスはありませんが、せめてバーベキューをしながらザールラント地域のワインを楽しんでみてください。
華やいだ酸、リースリングの繊細な果実の甘みが広がります。やや甘口タイプですが、はつらつとした味わいですので、食事とも相性の良いワインです。
2014 ドクター ワグナー リースリング クーベーアー トロッケン
ザールらしい繊細な風味と引き締まった酸、生き生きとしたミネラルを追及して造っています。あらゆる食事との相性が抜群です。
※掲載情報は 2016/07/03 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ドイツ連邦共和国大使館
駐日ドイツ連邦共和国大使館は、日本におけるドイツ政府を代表する機関です。ヨーロッパの中心に位置しているドイツと日本は、去る2011年、外交関係を樹立してから150周年という節目を迎えました。そして、今後も互いに両国が協力し合いながら、現在の友好関係を保ち、またより深めながら手を取り合って未来へ向かっていこうという思いをこめ、「ドイツと日本-ともに未来へ」というモットーの下、日本の皆さんにより深く、広く、ドイツを知ってもらうべく、様々な形で活動を行っています。こちらのサイトでは、ドイツの伝統や郷土・食文化についてお伝えします。