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ドイツ大使館大使公邸で開催された晩餐会へ。駐日ハンス・カール・フォン・ヴェアテレンドイツ連邦共和国大使(以下、大使)と大使夫人のおもてなし、小林茂樹公邸料理長のオリジナリティ溢れるドイツ料理、ドイツワインを楽しんだ一夜。いただいたお料理からは、「グローバルな視野で見る食の世界観」そして「食の新たなご縁」を学べた気がします。ドイツの魅力と日本の魅力について語らい、楽しませていただきました。
緑豊かなドイツ大使公邸へ
「楽しみ!」公邸までのアプローチは緑が豊か。全体が見渡せしっとり落ち着いた雰囲気。出会う人々、晩餐会への期待が高まる瞬間です。
「こんばんは。ようこそいらっしゃいました」
小雨のじっとりした空気も晴れるかのような笑顔でお出迎えいただき中へ。まずはメインダイニングでのディナー開始前、皆さんでアペリティフを楽しみます。
晩餐会は着席スタイルで
窓からは夕暮れと緑が見え、あたたかみある照明とテーブルコーディネートがとても素敵。
テーブルコーディネートの秘訣はドイツの著名ブランド「マイセン」の食器、テーブルキャンドル、そして何と言っても、フラワーアレンジメント。伺えば大使夫人がご趣味でなさっているとか。紫陽花は季節感があり素敵ですが、色や形に個性がありテーブルでのアレンジには難しいと思いますが、とても素敵でした。お花があるだけでグンと華やぎます。
「今夜はクラシックでもあり、新しくもある。そんな新感覚のドイツ料理とおいしいワインをお楽しみくださいね」大使の柔らかな笑顔に癒される、と同時に「ビールじゃなくて?」とつい一言、私。
「そうです、今日はとびきりおいしいワインです」さらにニッコリ。
ドイツといえば、ソーセージ、ザワークラフトや大きなアイスバイン(豚肉料理)そしてドイツビール……。だけではないのですよね、反省、反省。
小林料理長のお料理から「真に迫るグローバルな感覚」を学ぶ
今夜は6品フルコース。一言で言うと「真に迫るグローバルな感覚」とでもいいましょうか、ハッと新たな考え方に気づかされ、多くを学ばせて頂けました。一番そう感じたのは最後に小林料理長のお話を伺ってからなのですが、例えば食材については「ドイツ産であることに、こだわりすぎていない」のです。
もちろん、例えば主食のパンはドイツ産スペルト小麦を使っていたり、ドイツ産の食材は随所に活かされていたと思います。でもホワイトアスパラガスはフランスのロアール産、スープのグリーンピースはイタリア産です。
誤解なきよう、その「こだわりすぎていない姿勢」が食べる側にとって、押し付けっぽくなく、すごくスマートでいいのです。すごくナチュラルなお考えに共感いたしました。
小林料理長曰く「僕はフレンチ出身で、大使ご夫妻とのご縁でここにいます。ドイツの食と食文化を学び、守るべきクラシックと広げるべきモダンさを組み合わせています。今は素材をドイツ産にこだわることより、広い視野でいたい。つまり“ヨーロッパとアジア”の感覚でいます。おいしさを優先したいですし。」
「ヨーロッパとアジアの感覚」なるほど!大使館での晩餐会=「ドイツ産か日本産」かなと思いがちな自分の視野の狭さをまたまた反省。
もちろん、「ドイツと日本」を意識したお皿もいただいたのですが、全体が軽やかで重苦しくなく好印象だったのは、料理長のこういう考えがベースだったのだなと痛感。
押し付けではなく、ドイツ料理がベースにあり、お皿の背景にはドイツの食文化が見えてくる……素晴らしかったです。
一番印象的だったのが、2皿めの「アイスバインとチキンのコンソメゼリー グリーンピースのクリームスープ」です。3重に重なったお皿にクラシックなスタイルを感じ、味のモダンさにトキメキました。底の方にアペリティフで出たアイスバインのゼリーが入っており、グリーンピーススープは適度ななめらかさ。時々舌に厚みを感じる濃厚さは、イタリア産の冷凍豆を牛乳でのばし、隠し味に八角やスパイスの刺激をしのばせているから。クラシックとモダンの融合さが五感を突き抜けていく。全体的なゆるゆる感が絶妙なおいしさでした。
以下、スープの前に出たお料理も合わせて順にご紹介すると、ホワイトアスパラガスとポーチドエッグ 黒い森のハムパウダーを乗せて
サーモンと帆立のロールキャベツ 胡瓜のブレゼ アップルワインソース
エルダーフラワーのグラニテ
鴨のローストサワーチェリーソースとヘーゼルナッツのピューレ
手前には象徴的に山形産のさくらんぼがちょこん。なんだかドイツと日本の友好的な印象がし、全体的にドイツの伝統と革新がわかりやすく共存していました。お味もおいしく好みの一皿。チェリーソースと鴨はもちろん、ヘーゼルナッツとの相性も良いことと、赤ワインとすごく良く合う!(赤ワイン:2009 Kirschgarten)
お酒はそんなに強い方ではないのですが、ついつい進んでしまいました(笑)。
デザート「ココナッツ、レモングラスの香りのジャスミンライスプディングとマンゴのシャーベットと季節のフルーツ」
ライスプディング、キウイ、マンゴー、ココナッツ、ベリー。この画像だけでは「ドイツ大使館での晩餐会、デザート」とすぐに繫がらないかもしれません。でも小林料理長の「ヨーロッパ×アジア」のグローバルな視野での、真に迫った友好感覚が前面に伝わってくる一皿。ドイツ共和国連邦大使館大使公邸にいるからこそのデザートかもしれません。
最後に、申し訳ありません。自分の視野の狭さを反省反省と言いつつも、それでもやっぱり欲が出てしまい。「視野が狭まる意見かもしれませんが、今度は日本の食材をメインに小林料理長のフルコースが食べてみたい」そうお伝えしたら「それは素敵なアイディアですね!」と大使夫人。笑顔でお応えいただけ大感謝です。
ご一緒させていただいたキュレーターの皆様と。多くを学ばせて頂きました、お招き頂きありがとうございます!
※掲載情報は 2016/06/23 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フードジャーナリスト
里井真由美
2012年食専門家として独立。グルメ誌で連載開始、世界15カ国以上のレストランに着物で伺うスタイルが話題に。テレビ番組はコメンテーターやグルメレポート等2年間で70以上に出演。現在「jcom街声!グルメランキング」レギュラー出演中。
最近では講演、大学講座、コンテスト審査員、日本の食文化を高めるべく海外のクールジャパンセレモニー出席や、お米の世界大会審査員等国際的に活躍の場を広げ、2015年ミラノ万博日本館のオフィシャルサポーターにも任命される。
<兼任>
◎(社)日本ソイフードマイスター協会顧問
◎ 日本の食の親善大使「食のなでしこ」
◎ 米食味鑑定士、唎酒師、オリーブオイルソムリエ
◎ ASEAN食のコンシェルジュ
◎ 「たべあるキング」和食・フレンチ・アジアン担当
【テレビ出演】
■NHK「美の壷」■テレビ朝日「関ジャニの仕分け」■日本テレビ「メレンゲの気持ち」■フジテレビ「笑っていいとも」■TBS「花まるマーケット」他