【クローズアップ】ビールは人生を楽しくさせてくれるもの 宮原佐研子(レシピ付き)

【クローズアップ】ビールは人生を楽しくさせてくれるもの 宮原佐研子(レシピ付き)

記事詳細


ビアジャーナリスト、そしてパンコーディネーターとして「ビールとパンのペアリング」を提案している宮原佐研子(さとこ)さん。フリーライターとしても活躍中の宮原さんがビールやパンの魅力を発信する記事は、わかりやすくニュース性があり、ippinの中でも高い人気を誇っています。今回はそんな宮原さんに、パンやビールとの出会い、ペアリングの考え方など、幅広く語っていただきました。

【クローズアップ】ビールは人生を楽しくさせてくれるもの 宮原佐研子(レシピ付き)

いきつけの店、京成小岩クラフト酒店の2Fにあるダイナミックなイラスト

パン、そしてビールとの出会い

【どのような経緯で、パンコーディネーターになられたのですか?】

 

パンは小さい頃から大好きで、今はもうなくなってしまった西荻窪の「リスドォル」というパン屋さんへ毎日のようにパンを買いに行っていたのを一番よく覚えています。買って帰り、家で食べるのが毎回楽しみでしたね。その後、どんどんパン好きが高じていきました。

 

会社員を辞めた後に、大好きなパンのことをもうちょっと突き詰めてみようと思い立ち、パンコーディネーターの資格を取りました。

 

【ビアジャーナリストになられたのは、その後になりますか?】

 

パンコーディネーターの資格を取得する一方で、それまでの広報や企画をした経験をいかせるような仕事ができたらいいな、と思っていいました。一方で、ライター業にも興味があり、ビアジャーナリストは大好きなビールと、興味のあるライターという、どちらの要素も併せ持つ仕事だと思いまして、日本ビアジャーナリスト協会のアカデミーなどでビールについて勉強を重ねました。

 

【本格的にビールに目覚めたのはいつ頃だったのですか?】

 

会社員時代の話にさかのぼりますが、当時オリエンタルランドが新規事業として舞浜に複合型の商業施設を作るということで、そこで働くあらゆる職種の募集をかけていたんです。そこに応募して入社してから紹介されたのが、現在、イクスピアリ内にあるブルワリー「ハーヴェスト・ムーン」の醸造責任者園田智子さんでした。

今でこそ「ハーヴェスト・ムーン」は美味しいクラフトビールとして世界的にも知られていますが、このスタート当初、園田さんともう一人の担当桜井さんは、ビール造りに関しては未経験でした。まずはいろんなビールを識ろうと、あちこち飲みに行くのですが、二人だけではなかなか飲みきれないということで、私も含め会社の仲間も一緒についていってお手伝いさせていただく機会が度々ありました。

 

そうしていくうちに、私もビールの奥深さや地ビールの美味しさを知りました。当時は地ビールが各地で次々と登場していた頃。中にはまだまだ質がともなわないものもあって残念に感じることもありつつ、同僚がどんどん美味しいビールを造るようになっていく過程を目の当たりにしたこともその後の私にとって大きな影響がありました。

情報を発信するジャーナリストとして

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廃棄パンを再利用して醸造するベルギーのビール『バビロン』はほんのり塩味

 

【現在は具体的にどのようなお仕事をされていますか?】

 

今はビールのライターの仕事が中心になっています。やはりこれからは季節柄、ビール情報のニーズが高くなりますし、近年クラフトビールがブームになっているのもその理由です。

 

【宮原さんのippin記事は、いつもタイムリーでわかりやすく、写真もきれいだと思っています。情報を発信する上で大切にしていることや、こだわりを教えていただけますか? 】

 

やはり、タイムリーなニュース性というものは大事にしたいと思うので、記事が公開される時期に合わせた催事のあるもの、新発売のものなどを選ぶようにしています。また、ippinの場合は必ずしもビールのコアなファンやマニアばかりじゃないので、わかりやすくてキャッチーなものを選ぶように心がけています。写真は大体、自宅であれこれ試しながら撮っています。自然光で撮るのがきれいに撮るコツですね。

 

【今まで出会ったビールの中で、特に印象に残っているものは?】

 

・ハーヴェスト・ムーン
今も大好きなブランドです。中でもシュバルツという黒ビールは、「何杯でも飲める黒ビール」というのがテーマなだけあって飲みやすいのが特徴です。香ばしさがあってキレもよい。私の亡くなった父もこのビールが大好きで、いつも喜んで飲んでいた姿を思い出させてくれます。

 

・宮崎ひでじビール
以前ippinでも紹介させていただきましたが、最近どんどんクオリティの高いビールを出している注目のブルワリーです。実はここでは、海外輸出向けに『栗黒(くりくろ)』という宮崎の栗を副原料としたスタウトビールを作っているんですよ。シアトルに送って、アメリカ限定で発売しています。先日、このビールを飲む機会がありまして、とても衝撃を受けました。最初の香りから始まって、ホップの苦味の後に栗の甘みがきて、まるで物語のように味がめくるめく変化するという、感動のおいしさでしたね。

 

・ベルギーのBABYLON(バビロン)

これもippinでご紹介させていただきましたが、ベルギーでは廃棄される食品の12%がパンであるということから、その廃棄パンを原料に作られているビールです。古代同じようなところから生まれて進化したビールとパンが、およそ5000年の時を経て再びこうして出会えたことに、限りないロマンを感じます。

 

 【シチュエーション別におすすめのビールを、いくつか教えていただけますでしょうか?】

 

いつも同じ銘柄ばかりではなく、料理に合わせてワインを選ぶのと同じように、その食事ごとに合うビールを選んでいただけたらと思っています。

 

・エールビール×お寿司
上面発酵で作られるエールビールには甘さや麦の香ばしさがあるので、お寿司など味わいの繊細な日本食にも合いやすいですね。

 

・樽熟成のビール×パーティー
去年くらいからトレンドとして日本のブルワリーでもいくつか樽熟成のビールを出し始めていて、今年も増えるはずです。これは、ワインやウイスキーと同様に樽の木の種類によって味や香りに影響が出るビールで、古樽を使ったものには独特のニュアンスが加わった味わいが楽しめます。買ってからしばらく温存しておいて、ここぞ!というお祝いの時に飲んでみては。

「パンとビールのペアリング」が面白い!

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近所のローソンで気軽に購入できる、ビールとパンのおすすめペアリング

 

【宮原さんは「パンとビールのペアリング」を提案されていますが、これはどのようにして生まれた発想ですか?】

 

まず、パンもビールも麦から生まれているという共通点があります。みなさんパンに合うお酒はワイン、ビールに合うおつまみは枝豆、という方も多いと思うのですが、パンもビールも素材は同じなのだから、合わないはずはないと考えました。

 

【日本パンコーディネーター協会主催で実施された「パンとビールのペアリング体験講座」とは、どのような内容だったのでしょうか?】

 

前年度に1年間で全4回のコースを実施させていただきました。最初にダイジェスト的に原料同士の合わせ方、色の合わせ方というものを一通りご紹介しながら味わっていただき、白、ゴールド、黒、茶と、毎回「色」を切り口としたテーマで構成していきました。具体的には、「白」の回ならヴァイツェンという小麦ビールやホワイトエールに、小麦のうまみのある食パンを合わせる。「ゴールド」なら最近話題のIPAと呼ばれるビールにはハーブやオレンジを使ったパンなどを、「黒」では黒ビール系とあんぱんなどを合わせました。

 

【「色」で合わせるという観点が面白いですね。相性の良いビールとパンを合わせるには、どのような考え方がありますか?】

 

まずは、合わせやすいベーシックな方法として、「白×白」のように同じ色系統を合わせる方法があります。そして、同じ産地で合わせてみる。さらに、同じ味の系統で合わせるという方法も。上級編になると黒ビールとアイスクリームを合わせるなど、「甘い×しょっぱい」のように異なる味の掛け合わせてみたり。そして最上級はワインで言うところのマリアージュで、それとそれを掛け合わせることで新たな味が生まれるというものです。

 

【ビールとパンはどちらも比較的手に入りやすいものなので、ワインと料理のマリアージュよりも、気軽に挑戦できそうです。身近なところで手に入るおすすめのペアリングはありますか?】

 

・僕ビール、君ビール。×サックリメロンパン

体験講座でも好評だったペアリングの一つを用意しました。組み合わせるビールは、ローソン限定で販売されているヤッホーブルーイングの『僕ビール、君ビール。』です。このビールには、ローソンオリジナルの「サックリメロンパン」がとっても良く合うんですよ! このビールの柑橘系のフルーティな香りと、ホップの苦味が効いたさわやかな味わいに、メロンパン特有の甘酸っぱさと、外側のクッキー生地のサクっとした歯ざわりが実に良くあうんです。身近にある中では、今一番楽しんでいただきたいペアリングですね。

宮原さん直伝!ビールをもっと楽しめるレシピ

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自家製ドライトマトと干しぶどう。フレッシュと盛り合わせて違いを楽しんでも

 

【ホームパーティなどにおすすめの、簡単に作れて、しかもビールと合うような一品を教えていただけますか?】

 

・ドライトマト(レシピ)

ビールにもよく合い、パンにのせるのもおすすめで、私が誰かのお家へお呼ばれした時によく持っていきます。作り方はとっても簡単で、トマトを1/2や1/4のなど適当な大きさにカットして、120度のオーブンで焼くだけ。トマトの大きさにもよりますが1〜2時間焼けば出来上がりです。

 

どんなトマトでもOKで、パンにのせるとトマトソースのような味わい。カプレーゼ的にチーズと合わせても美味しいですよ。もちろんそのまま食べても、フレッシュトマトよりも旨味と甘みが濃縮されるので、すごく喜ばれます。同じ方法で、トンプソンという種なしブドウを使ったものも用意しましたが、これがまた非常によいおつまみになります。

 

【--これは美味しい! トマトもブドウも、ドライというよりもセミドライという感じで、味は濃厚なのにジューシーですね!】

 

【本日は、もう一品ご用意いただいているということですが、そちらもご紹介をお願いします。】

 

・ビールで作る「シャーベット」(レシピ)

ビールを飲むために凍らせることはおすすめしませんが、シャーベットとして楽しむ方法があるんですよ。これも簡単で、ビールにハチミツなどで甘味をつけて、蓋付きの容器になどに移して凍らせるだけ!(笑) ビールは凍らせてもカチカチにならず、スプーンなどで突くとすぐに崩れてシャリシャリのシャーベットになります。ポイントはちょっと甘いかな?と思う位に事前に甘味をつけることです。

 

実はこのアイデアは、アニメの「ルパン三世」がヒント。ルパン三世と次元が、暑い室内でかき氷にビールをかけて食べているシーンがあって…。それがずっと頭に焼き付いていて、ある時ビールそのものを凍らしてみたらどうなるかな?と思ったのが始まりです。

宮原さんってどんな人?愛用品や将来の夢について

【ビールを飲むとき、パンを食べるときに、日頃から愛用しているアイテムがあれば、お見せいただけますでしょうか?】

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◆キーホルダー式オープナー
これは、瓶ビールの蓋を開ける時に使う「栓抜き」ですね。「ハーヴェスト・ムーン」が開業したときに配ったもので、2000年オープンですから、かれこれ15年くらい愛用しています。肌身離さずどこへ行くときも持っていて、それこそバーベキューをしていても「ああ、私持ってるよ!」と、すぐに ビール瓶を開けることができます。

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◆VICTORINOXのパンナイフ
このナイフ、実はトマト用なんです。刃先が細かな波上になっているので、形を崩さずにパンが切れるので、とても便利です。コンパクトなサイズも持ち運ぶのに丁度よく、出先でも大活躍してくれます。

 

【今後、ビールやパンに関連することで、やってみたい夢はありますか?】

 

北海道の余市町にある、知り合いが経営するワイナリーの敷地内の一部で、ホップを育てさせてもらっています。ホップって、ビール原料として使うための植物というイメージが強いですよね? でも、もとは日本国内で自生していたほど身近な植物なんですよ。このホップを、もっと身近に、例えばグリーンカーテンとして育てるなど、もっと身近に感じてもらえるような楽しみ方を提案してみたいと思っています。

 

それと、今はホップの効いた苦味のあるビールが人気ですが、ホップの鞠花を乾燥させたものを茶葉と同じようにティープレスに入れてビールを注ぐと、すごくホッピーなビールが飲めるんですよ。ランドル(フィルター)の簡易版ですね。こんな感じで、ホップをもっと身近に楽しんでもらえるような方法を提案していけたらと思っています。

【宮原さんにとって、最近のマイブームはありますか?】

去年からはビール列車に乗ること(笑)!いやぁ、面白いですよ!以前はどこに行くにも車だったんですけど、やはりビールが飲めないのでどうしたものかと思っていたら、この存在を知りまして。あちこちで観光列車も登場しているので、それに乗るのが今私の中でかなりブームになっています。先日も西武鉄道の「52席の至福」に乗り、今度は熊本と鹿児島を走る「肥薩おれんじ鉄道」の観光列車「おれんじ食堂」に乗る予定です!

【クローズアップ】ビールは人生を楽しくさせてくれるもの 宮原佐研子(レシピ付き)

ビールが苦手、という人でも笑顔になれるビールは必ず見つかります

 

【最後に、宮原さんにとって「ビール」とはどのようなものですか?】

 

笑顔になるもの。人生を楽しくさせてもらうものだと思います。ビールは乾杯で始まってワイワイガヤガヤ楽しく過ごせる場所で飲むものというイメージもありますし、実際飲むと気持ちもふわっと楽しくなりますよね。ビアスタイルは現在世界に100種類以上ありますが、少し前まで日本ではピルスナータイプしか作っていなかった時代があり、その頃私たちはたった1種類のビールしか知らなかったのです。私もまだ飲んだことのないビアスタイルもたくさんあって、ビールは苦いものだけじゃないんです。いろんなシーンで、あなたのお気に入りのビールを見つけて欲しいですね。

 

【取材協力】

【クローズアップ】ビールは人生を楽しくさせてくれるもの 宮原佐研子(レシピ付き)

京成小岩クラフト酒店
東京都江戸川区北小岩6-15-8
TEL: 03-6319-8346
公式サイト
http://kkcb.tokyo/index.html

 

【プロフィール】

日本パンコーディネーター協会認定パンコーディネーター、日本ビアジャーナリスト協会所属ビアジャーナリスト。雑誌『ビール王国』(ワイン王国)、e-MOOK『ビールの教科書』(宝島社)、ビアエンタテインメントムック誌『ビアびより』(KADOKAWA)他、日本ビアジャーナリスト協会HPなど執筆多数。日本パンコーディネーター協会主催の講座「ワインよりおすすめ?パンとビールのおいしい関係」でパンとビールのペアリング体験講座も実施。

※掲載情報は 2016/06/06 時点のものとなります。

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