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「じゃこの命に想いを乗せる」じゃこ天マイスターここにあり
今は一応「料理写真家」を名乗っている私ではございますが、修業時代の料理写真の師匠は宇和島出身の人でした。今から30数年前、アシスタントとして取材で宇和島を初めて訪れた時、師匠が「天ぷら」と呼んでいた「じゃこ天」を初めていただきました。
東京出身の私にとっては、いわゆる「さつま揚げ」だなという程度の認識でしたが、食べてびっくり、その素朴な美味しさに感動すら覚えました。師匠曰く、「お弁当代わりにご飯の上にぺロっとのせて学校に持ってった」というくらい、宇和島の庶民的郷土食だとのこと。
その取材時には他にも新鮮なお刺身や鯛めし、蜜柑など美味しいものと沢山出会い、温かくも豪快な地元の人々との交流もあり、とても楽しかったのを覚えています。宇和島東高校が甲子園で初優勝したのはその1、2年後だったでしょうか?
その後、写真家として独立してからもこの時のじゃこ天の味が忘れられず、地方出張で日本全国を訪れるたびに、「天ぷら」を買い求めてきましたが、味が強すぎたり風味が感じられなかったり、なかなか満足するものに出会えませんでした。そして、いつしか練り物類自体をあまり口にしなくなってしまいました。
しかし、最近になってついに「あのお味」に出会うことができたのです。それがSNSで友人が紹介していた、この「みよし」さんのじゃこ天です。
自ら「じゃこ天マイスター」を名乗る店主の三好ご夫妻が手づくりされているこのじゃこ天、「育ち盛りの子供からお年寄りまで、安心・安全・健康をお届けしたい」との想いが詰まっています。
宇和島で獲れたハランボ、ムツ、エソなどの厳選された新鮮素材を使用、もちろん色も黒いままで、練り製品ではありそうでほとんどなかった、保存料・化学調味料無添加のナチュラルな味わいは、その舌触りとも相まって、滋味あふれる美味しさです。
やっと念願かなって「出会えてよかったな」と思えるこのじゃこ天、とても懐かしくいただいております。
※掲載情報は 2016/05/19 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理写真家
今清水隆宏
1965年、東京都生まれ。東京造形大学卒業。1988年よりフリーランスフォトグラファーとして独立。
以後、国内・海外、料理研究家・シェフを問わず主に雑誌、料理レシピ、レストランなどの料理およびその周辺の撮影、書籍企画等を担当。他、百貨店等各種カルチャースクール、地方自治体等にて「料理写真講座」の講師、講演等でも活動。社団法人日本広告写真家協会会員。