結婚式の引き出物に受け継がれるキリシタン文化!?砂糖菓子の意外なルーツ

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形を変え生き続けるポルトガル菓子

有平糖(あるへいとう)という美しい飴菓子をご存知でしょうか。色鮮やかで形も自由に整えられるため、美しい菓子に仕立てられお茶席の菓子や引出物として使われることも多い伝統菓子です。「あるへいとう」という変わった名前の語源はポルトガル語で、これもまた16世紀にポルトガル人がもたらした南蛮菓子の一つなのです。「有平糖」のルーツをたどるとポルトガルにおける砂糖の歴史へとつながっていきます。

 

歴史を遡ること8世紀、イベリア半島の大部分はアラブ人に占領されていました。アラブ人が作っていた「アルフェロア」(糖蜜)もしくは「アルファニド」(白い物という意味で、糖衣菓子のこと)が、その後、ポルトガル語で「アルフェニン」と呼ばれる飴菓子になったようです。

結婚式の引き出物に受け継がれるキリシタン文化!?砂糖菓子の意外なルーツ

「アルフェニン」は、気候が温暖でサトウキビ栽培に適していたポルトガルの南部アルガルヴェ地方で主に作られた菓子です。

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15世紀当時、砂糖は高価な交易品だったため、砂糖の生産拡大を目論んだエンリケ航海王子が、同じく温暖なマデイラ島にアルガルヴェのサトウキビ農家の移住を奨励したことから、マデイラ島と、そののちアソーレス諸島のテルセイラ島での大々的なサトウキビ栽培が始まりました。「アルフェニン」菓子がテルセイラ島に渡ったのもこの頃と思われます。1473年にはコロンブスも砂糖商人としてマデイラ島を訪れています。しかも、15世紀にマデイラ島で制作された、サンピエトロ寺院の模型の「アルフェニン」をバチカンへ奉納したという記録も残っています。

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精巧な細工が可能な「アルフェニン」は、その白さゆえにキリスト教の儀式に用いられるようになり、白い鳩、王冠、動物などの形を模して作られるようになりました。また、その美しさから、婚礼の食卓でも装飾として使われるようになったようです。

 

キリスト教の宣教師たちが「アルフェニン」を宗教儀式で使用したことから、これが日本にも伝わり「有平糖」という名で残ったと思われます。その後、キリスト教弾圧により日本では多くの人々が改宗を迫られましたが、有平糖を冠婚葬祭で使用する風習は残り、九州地方を中心に美しい砂糖菓子が引出物として使われるようになったとも言われています。

 

ポルトガルから生まれた伝統が、日本の伝統として現代にも生きているのです。

 

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現在でも、「アルフェニン」はテルセイラ島の伝統菓子として作られ、年に2回、初夏と冬に教会に奉納する宗教行事が行われています。教会に訪れる人びとは「アルフェニン」を祭壇に飾り、祈りを捧げます。その「アルフェニン」は鳩や牛などの動物であったり、体の悪い部分を象ったものであったりします。悪い部分を捧げ、代わりに良いものを与えてくれるよう願うのです。「有平糖」のルーツをたどり、伝統が息づく美しいテルセイラ島をぜひお訪ねください。

※掲載情報は 2016/08/18 時点のものとなります。

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ポルトガル大使館

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ユーラシア大陸の最西端に位置するポルトガルは、日本が初めて出会った西洋の国です。1543年の種子島到来をきっかけに日本に南蛮文化を伝えたポルトガルは、日本人の日常生活や食文化に深い影響を残しました。皆様も歴史の授業でポルトガル人到来は勉強されたのではないでしょうか。
鉄砲、西洋医学、絵画で使われる西洋技術、西洋音楽・洋楽器、天体観測機、パンや菓子等、この時代にポルトガル人が日本に伝えたものは数多くあります。カステラ、金平糖、ボーロなどは語源もレシピもポルトガルからもたらされました。パン、コップ、ボタン、てんぷら、おんぶ、かっぱ、ばってら、じょうろ、チャルメラ、オルガン、カルタ、シャボン、タバコ、ビロード、ビードロ等、日常語として定着している数多くの言葉がポルト ガル語由来なのです。
歴史的建造物、自然景観、多彩な食文化、温暖な地中海性気候、15箇所の世界遺産と、無形文化遺産に認定された民謡「ファド」などの多様な魅力に魅せられ、ポルトガルを訪れる観光客はリピート率が高いことで有名です。「初めて訪れるのに懐かしい国」と多くの日本の皆様に親しまれるのも、470年以上にわたるおつきあいがあるからかもしれません。

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