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醤油の仕込みの復活に挑戦
福岡県の糸島という地域に、同業者も注目し応援している若きつくり手がいます。城慶典さんが、先々代の使っていた木桶などの道具を整備し直して、自社での醤油仕込みの復活に挑み始めたのは2010年でした。
甘いタイプの醤油が一般的な九州の地において、大豆と小麦と塩だけで木桶仕込み醤油を手掛けたいという想いは、同業者でも尻込みするような挑戦で、製造と販路の開拓と二つの大きなハードルを抱えてのものでした。
ただ、ゼロからの出発だからこそ試行錯誤もできるものです。2010年の最初の仕込み以来、使用する麹菌や原料、仕込み水のバランスや撹拌の仕方など、一定の形の出来上がっている醤油蔵ではできない程の試行錯誤を繰り返してきています。
結果として、濃口醤油の「生成り、」は地元の飲食店はもちろん、東京の百貨店からも「ぜひ使いたい!」というラブコールが寄せられるまでに至りました。
待望の新商品の登場
そして、その「生成り、」の新バージョンが満を持して発表されました。うすくち醤油と再仕込み醤油です。
うすくち醤油は、見た目が淡くて塩分が少し高めの醤油です。製麹工程までは濃口と同様ですが、塩水量を多めに仕込み、一夏しっかりと発酵させて落ち着いた頃に、甘酒をブレンドして搾っています。木桶仕込みのうすくち醤油は珍しい存在で、一般的なうすくち醤油よりも少し色は濃いですが、その分味もしっかりしています。
城さんは「お湯で10倍程薄めて味見いただくと、このうすくちの良さが分かっていただけるのではないかと思います」と薦めています。
再仕込み醤油は、醤油で醤油を仕込むタイプのもので、この種類の醤油の流通量はとても少ないものです。2010年に仕込みをした「生成り、」を2013年に圧搾し、そこで得られた醤油をそのまま仕込み水として使ってさらに二夏の発酵・熟成を経て圧搾したものです。
城さんは「濃口に比べ大豆・小麦を倍の量使用しているため濃厚な醤油です。再仕込み醤油は味のしっかりした食材や料理と相性がいいです。また、普段濃口だけで調理する料理も補助的に再仕込みを少し足すと、濃口だけでは出せないコクや深みを付与できます」と表現しています。
※掲載情報は 2015/11/18 時点のものとなります。
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キュレーター情報
職人醤油 代表
高橋万太郎
1980年群馬県前橋市出身。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し、2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100ml入りの小瓶で販売する「職人醤油」を主宰。これまでに全国の300以上の醤油蔵を訪問した。