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海中貯蔵で生まれる自分だけの1本
宮城県気仙沼市にある日本酒の醸造元・男山本店。こちらでは毎年秋になると、純米酒『蒼天伝』の海中貯蔵を行っています。牡蠣の養殖用の網カゴを利用して、海中約10〜15メートルに、搾ったばかりの新酒の瓶を沈めて1年間熟成させるのです。男山本店社長の菅原昭彦さんのお話では、初めは興味本位でスタートした海中貯蔵だったそう。しばらく沈めて引き上げたお酒を飲んでみると、味に変化が見られ美味しかったというのです。それから、蔵での貯蔵との違いなどのデータを取るようになりました。
気仙沼の夏の海水温度は18度程度、冬は3度程度とかなりの差があるものの、海中は緩やかに温度が下がり急激な温度変化がないため、徐々に熟成が進みます。また、海のほどよい揺れなども、美味しさの要因のひとつではないかと分析されています。男山本店は、2011年の東日本震災で、国の登録有形文化財だった木造3階建ての本社屋が津波により全壊・流失。少し高台にあった築100年の酒蔵は門の手前で被害を免れ、何とか仕込みが続けられました。また、お酒を沈めていた唐桑地区の海も甚大な被害を受けたため、海中貯蔵も一時休止。
しかしその後、「海中貯蔵が復興の手助けにもなる」ということで、参加者を募った“体験ツアー”として、全国から集まった人たちの手で再開されました。蔵へ行き自分でラベルを貼った日本酒を海に沈めて熟成させる……。想像するだけでお酒好きにはたまらない!
美味しいものを楽しんで、それが気仙沼の復興支援にも繋がる、という仕組みです。今年も11月14、15日に海中貯蔵が行われます。JTBのツアーに参加することで自分だけの1本を沈めることができるというもの。残念ながら市販はされていません。しかし男山本店のお酒は、海中貯蔵酒以外もとても美味しいんです。海中貯蔵に使われている『蒼天伝』ブランドは、世界最大規模のコンペティション、IWC(インターナショナルワインチャレンジ)の『SAKE部門』でGOLDメダルを受賞する実力派。男山本店は「味で恩返し」を目指している蔵元さんです。通常のお酒を楽しむのも良し。ツアーに参加して、自分だけの海中貯蔵酒を育てるのも良し。日本酒の楽しみ方がひとつ増えるといえますね。
※掲載情報は 2015/10/22 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ご当地グルメ研究家/リサーチャー/日本外食リサーチ&PR協会
椿
日本全国の美味しいモノを世の中に残すために日々奮闘中。「その地域で長く愛されているローカルフード」を探し、そこに如何に根付いているのかを研究。
テレビ番組、WEB、雑誌、イベントで、地域の食や最新グルメ情報のリサーチ・取材・寄稿・レシピ提供・情報発信などを行っている。
2013年より気仙沼の海の中に純米酒を沈めて熟成させる「海中貯蔵プロジェクト」を行う。