シャルル・エドシック、その愛称は“シャンパン・チャーリー”

シャルル・エドシック、その愛称は“シャンパン・チャーリー”

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60、40、10

 

これらの数字はシャルル・エドシックの看板シャンパン『ブリュット レゼルヴNV』を語るうえで大事な数字です。ぶどうはシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエで、それぞれ3分の1ずつブレンドしていますが、原酒に使っているクリュの数が“60”。NVの味わいに膨らみをもたせるためのリザーヴワインの量が“40%”。そして、そのリザーヴワインの熟成期間が平均“10年”以上であることを示したものです。

 

加えて、NVの熟成期間は3年以上で、デゴルジュマン後、半年から1年間休ませてから出荷しています。丁寧な造り、時間をとても大事にしているシャンパン・メゾンです。

 

気泡はワインに溶け込み、口あたりはまろやか。コルクの状態から推察できるように、熟成感と複雑味があるので、用意していたカシューナッツやヘーゼルナッツ、クリーミーで胡桃のような味のコンテ18カ月とも良く合っていました。包容力のあるシャンパンです。重厚なニュアンスを備えながら、樽を一切使っていない点にも注目できます。

ヒュー・グラント主演の『シャンパン・チャーリー』

シャルル・エドシック、その愛称は“シャンパン・チャーリー”

創始者のシャルル=カミーユ・エドシックの愛称は“シャンパン・チャーリー“。エドシックがランスにシャンパン・メゾンを立ち上げたのは1851年で、弱冠29歳でした。翌年にはアメリカ市場に進出。Charles (チャールズ)呼称から、チャーリーと呼ばれていました。

 

その愛称をタイトルにした作品が、1989年制作の『シャンパン・チャーリー』です。テレビ放映されたという記録はありますが、劇場等では日本未公開です。私は『Champagne Charles』で検索して、youtube(字幕なし)で鑑賞しました。

 

主演はエドシックがメゾンを興した時と同年齢だった英国俳優のヒュー・グラントです。ヒュー様が輝いていた時なので、ダンディーで粋だったと言われているエドシックに良く似ています。冒頭にあるNVのミュズレにはエドシックの肖像が使われていますが、映画の映像と重なりますよ。

 

劇中、エドシックの父親がシェフ・ド・カーブとエドシック(14歳のはず)を伴い、ロシア・サンクトペテルブルグの皇帝ニコライ一世にシャンパンを献上するシーンがあります。ナポレオンの作法を見たことがある皇帝は、エドシックにシャンパンを高く掲げさせ、サーベルでボトルの首を見事にカット。今で言うシャンパン・サブラージュですが、映画では、それを“ロシアン・メソッド“と表現していました。

トップ・キュヴェでは際立つ長熟期間

シャルル・エドシック、その愛称は“シャンパン・チャーリー”

シャルル・エドシック『ブラン・デ・ミレネール1995』はシャルドネ100%のトップ・キュヴェです。「ダンディーなエドシックが生きていたら、どんなボトルの装丁を考えるか」とメゾン側が思いめぐらせて創造した黒とシルバーの粋なデザインで、2000年前に古代ローマ人たちが遺した石灰質(クレイエール)の石切り場で熟成させていることから、“千年“を意味するミレネールと命名したシャンパンです。

 

シャンパン市場を見回すと、10年以上熟成させてから出荷すると言われているトップ・キュヴェたちも、現実には10年未満でデビューすることが多いです。そのようななかで、際立って長い熟成期間を誇るミレネール。20年という歳月を10度のセラーでじっくりと過ごしてきた逸品から、長熟シャンパンの得も言われぬ魅力を感じてください。

※掲載情報は 2015/10/07 時点のものとなります。

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キュレーター情報

青木冨美子

ワインジャーナリスト

青木冨美子

NHK、洋酒メーカーを経て、現在フリーランス・ワインジャーナリスト。(一社)日本ソムリエ協会前理事、機関誌『Sommelier』前編集長。17世紀、3つのコトー(丘陵斜面)で造るシャンパンの愛好家によって組織された「オルドル・デ・コトー」が起源の由緒ある団体『シャンパーニュ騎士団』から2009年5月シュヴァリエ(騎士)受章、2012年5月には、オフィシエ(将校)受章。2013年4月オーストラリアワイン名誉スペシャリスト受賞、ワイン本の執筆や監修、企業向けのワイン講師。『NHK文化センター青山校』、『ホテルオークラ ワインアカデミー』専任講師。Facebook『ワインのこころ Non Solo Vino版』でワイン情報発信中。著書に『おいしい映画でワイン・レッスン(講談社)』、『映画でワイン・レッスン(エイ出版)』監修『今日にぴったりのワイン(ナツメ社)』ほか。

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