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普段着のお茶こそ、上質を。ありだ思う
金沢と言えば、加賀百万石。前田利家の名が浮かびます。このところ、新幹線の影響で金沢に行く機会が増え、行くたびに驚かされるのが、前田公がもたらした文化の多種多様なこと。たったひとりの江戸時代に入城した大名が今に伝わる文化をこれほど残したなんて、まるで、フィレンツェのメディチ家?と思うほど。
この棒茶も、そのひとつと聞きました。お茶は葉の部分を煎じて飲むわけですが、茎も無駄にしないように……とおっしゃったとか。かくして棒の部分を使った番茶が生まれます。しかし、棒の部分を煎じるには、高温が必須で、表面が少し焦げたようになる。その香ばしさが、魅力ではあるけれど、どうも、味は野性的で、いかにも番茶っぽい。そこで、やわらかさのある、新茶=一番茶の茎を浅く煎じてつくってみたのが、こちらの献上加賀棒茶だそう。
私が出会ったのは、日本酒とともに金沢のおいしいものを扱う福光屋さんのショップでした。かれこれ、10年くらい、わがやのお茶のスタメンです。(あと3つあるので、そのうちご紹介しますね、笑)
いかにも、普段着のお茶ですが、こういう日々のお茶ほど、上質なものにして、自分をいたわりたいな、と思います。
急須に入れて、湯をそそぐと、ふわ~っと香ばしい香りが。忙しい日も、たった10分でも、いやされ、満たされます。好きな急須や湯のみならなおさら。
1杯目は熱いまま、2杯目は湯を入れて長めにおいて、冷たくしていただくのがわが家流です。今も、鹿児島、静岡、石川の3県の新茶の茎が原料。パッケージには、目立たないところではあるけれど、こんなことが書いてあります。
よい食品の条件とは……
・なにより安全(添加物や食品衛生の点で安心)。
・美味しい(形状・色沢・香味・食感のすべてが本物)。
・適正な価格(品質にてらして安い値段)。
・ごまかしがない(不当・誇張表示、過剰包装がない)。
うんうん、その通り。日常こそ、こういうものに囲まれていたいなと共感します。もし手に取られたら、こんな良い商品をつくるための条件の方も、書かれているのでごらんになってみてください。
さて、この加賀棒茶。うちでは、棒茶くるみごはんを炊くときにも使います。
棒茶くるみごはん 材料
米:2合
濃い目に入れた加賀棒茶:360cc
クルミ:30粒くらい(4等分に砕く)
塩:小1
水の代わりに、加賀棒茶で炊く、それだけです。炊飯器の場合は指定の水加減で。野太いだけじゃない上質なほうじ茶の香りと、くるみの食感が新鮮です、ぜひ。なんだか、秋に似会うごはんだと思います。
※掲載情報は 2015/10/05 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家
山脇りこ
主宰する代官山の料理教室リコズキッチンや、雑誌や書籍を通じて、和食をベースに現代のモダンなエッセンスを加えた家庭料理を、“作る楽しみ”を大切に、日々提案している。食材から味をひきだし、調味料は基本のものを最小限に、ひと手間は惜しまず、調理はシンプルに、という引き算の料理が得意。全国の伝統的な製法を守る醤油・酢などの蔵をまわり『調味料の教室』やWEBで紹介、発信。ライフワークとして『だしの教室』も続けている。農林水産省の 「 和食の保護・継承に向けた検討会 」 委員(平成27年)。料理本のアカデミー賞と言われるグルマン世界料理本大賞2014でグランプリ受賞。 『かけこみおだし塾』(講談社/日本図書館協会選定図書) 『かる塩・かる糖料理帖』(小学館) 『ていねいに仕込んで食べる 1週間のつくりおき』(ぴあ)など著書多数。アメリカを中心に『Banzai Banquets: Party Dishes that Pack a Punch』(Vertical社/講談社刊のおもてなし本の英訳)も刊行されている。