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グリルで表面を焼いて食べるのが定番
地中海に浮かぶ島キプロスに行ってきました。
キプロスは日本の四国の半分くらいの面積しかない小さな国ですが、古来、中東とヨーロッパ、アフリカを結ぶ中継地として重要な役割を果たしてきた歴史があります。
現在は、キリスト教(正教会)のギリシャ系住民によるキプロス共和国と、イスラム教徒のトルコ系住民による北キプロス・トルコ共和国に分断されていますが、近年、両者の大統領の対話も行われ、統一に向けての期待が高まっている、といわれています。私が2001年に初訪問したときは、両エリアを往来するためのパスポート・コントロールも厳しかったのを覚えていますが、今回は検問がけっこうカジュアルな感じになっていて、びっくりしました。
さて、キプロスはまた、地中海の食文化を語る上でも欠かせない場所です。特に、キプロス原産の食材として有名なのが、ハルミチーズ。焼いても溶けない、塩漬けしたフレッシュなチーズで、キュッキュッという独特な噛みごたえがクセになります。
中東やイギリスなどヨーロッパでは割とポピュラーな食材ですが、本場キプロスのスーパーマーケットでも、さまざまな種類のハルミチーズが売られています。ハルミチーズの成分は、伝統的には羊乳または羊乳と山羊乳のミックスで作られてきましたが、近年は牛乳を混ぜたものも。ただし牛乳だけではハルミチーズとは呼べないそう。
牛乳だけを使った同様の噛みごたえのチーズには、最近日本でも生産されているブラジル発のミナスチーズなどがありますが、羊乳や山羊乳が加わると、コクがまるで違ってきます。
ハルミチーズの食べ方は、スライスしてグリルで表面を色つく程度に焼くのが定番ですが、これが最高!ハルミチーズを毎日食べるためだけにまたキプロスに行ってもいい、と思ってしまうくらいです(笑)。あまり焼きすぎると風味が損なわれるので注意しながら、細かくカットしてクルミ入りサラダに加えて食べても、とてもおいしいです。
ハルミチーズは、日本ではまださほど流通していませんが、アルテヴィータさんが輸入されている、さわやかな香りが広がるミントの葉入りハルミチーズが美味。ミントの葉は、昔はフレッシュさを保つ防腐剤代わりだったそうです。ぜひ日本でも、ハルミチーズのおいしさを体験なさってみてください。
※掲載情報は 2015/09/06 時点のものとなります。
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キュレーター情報
各国・郷土料理研究家
青木ゆり子
雑誌「ぴあ」等の記者を経て料理に目覚め、2000年に「世界の料理 総合情報サイト e-food.jp 」を創設。以後、各国の「郷土料理」をテーマに、サイト運営、執筆、レシピ研究および開発、在日大使館・大使公館での料理人、料理講師等などに携わる。
地方色あふれる国内外の郷土料理の魅力を広く伝えるとともに、文化理解と、伝統を守り未来につなげる地域活性化をふまえて活動を行っている。
「世界の料理レシピ・ミュージアム」館長。著書「しらべよう!世界の料理 全7巻」(ポプラ社)、
「日本の洋食~洋食から紐解く日本の歴史と文化」(ミネルヴァ書房)。