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初めてほやに出会ったのは、暑い夏の青森の夜でした
ホヤはお好きですか。海のパイナップルなどという別名がありますが、実体はそんな生やさしいものではございません。なんとも不思議な生き物に見えますが、その味をひとたび知るやあなた、まあそこへ座って、わたしの話を聞いてください。生まれて初めてほやに出会ったのは、暑い夏の青森の夜、ねぶたの囃子が響き渡る居酒屋さんの片隅でした。
見たこともない奇妙な物体がお皿の上に運ばれてきます。何か変だな〜おかしいな〜と思いながら恐る恐る、濃厚なマンゴー色のでれっとした一切れを口に入れると、わあびっくり!見た目からは想像もつかない高貴で奥深い味と旨みと香りに加え、口の中の筋肉が緩むような脱力系のほやほや食感。これは日本酒に合いますね。ぐび、ほや、ぐび、ほや、ぐび、ほや、酒肴好きにはたまらない辛党大人のみちのくラビリンス、以来わたしはすっかりほやにとりつかれてしまったのです。
ほやは鮮度が命!水揚げから1日経つだけで鮮度がガクッと落ち、苦みやえぐみが出てきてしまいます。宮城、岩手、青森という水揚げの95%を占める本場・東北以外ではど〜しても味が落ちてしまう「お取り寄せできないグルメ」なのです。
えええ〜、そこをなんとかおかあさん!親心あればほや心。取り寄せほやをお願いします。わかりました。そんなあなたにご紹介したいのがこちら!味の加久の屋「ほやの塩辛」。
塩辛と言いましても浅漬けですので刺身に近く、あのほやっと力の抜けるやさしい口当たり、海をまるごと感じる磯の香り。大丈夫です。鮮度も保たれ存分においしく味わえます。
ほやの旬は5月から8月。11月からの産卵期を控えて、夏場はグリコーゲンやタウリンなどのエネルギーを身体に蓄えるため、甘みと旨みがあっていちばんおいしいのです。
味の加久の屋では、とりわけ栄養価の高い5月から7月のものを、朝の水揚げからタイムロスをテッテー的に抑え、水洗い、剥き加工し、その日のうちに急速凍結します。塩辛の販売は年間を通してですが、製造ごとに「剥き加工したほや」を解凍して浅漬けの塩辛にするため、いつでも品質と鮮度の保たれたほやの味が保てるのです。
ホヤはふつう漢字で書くと「海鞘」ですが、栄養成分豊富で、美容にも滋養強壮にもよいことから「保夜」と書くという説もあります。なるほど「新婚ほやほや」の語源は、実はそういう意味だったのですね。(いいえ、違いますけどね。)
ところで味の加久の屋って聞き覚えがありませんか?そうです。青森八戸名物の強気で贅沢なウニとアワビのお吸い物缶詰「いちご煮」の製造元なのです。あの八戸の漁村の郷土料理を缶詰にして全国へ広めた会社が作ったほやの塩辛ですから、品質は保証付きです。
ほやの養殖には、なんと3年から4年かかります。実は、2011年の大津波でほとんどのほやが流れてしまいましたが、震災後に再開した幼生が成長して、今年ようやく復活しました。うれしいですね。それからみなさん、
ほやの養殖にはカキ殻を使うってご存知でしたか?わたしはさっき知って、今びっくりして書いています。ほやの幼生をカキ殻に植え付けて棚に吊るすのだそうです。三陸の海のカキとほや、お互いの特性を生かして支え合っているんですね。
4年がかりで成長した宮城県産のほやの塩辛。三陸の海が生んだやさしくも個性的な味の結晶!ほやの塩辛!復活おめでとうございます。
※掲載情報は 2015/08/20 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ベジアナ・農業ジャーナリスト
小谷あゆみ
※東京世田谷のベランダ菜園で野菜をつくるアナウンサー・ベジアナです。
もしも日本中のベランダでみんなが1つでも野菜をつくったら、暮らしが楽しく豊かになるに違いありません。
レストランの有名シェフをリスペクトするように、全国にあるおいしい農畜産物とそれを生み出す生産者や農業そのものがリスペクトされる社会をめざして活動中。
「1億総プチ農家プロジェクト」を掲げて、小さな感動を発信しています。
おいしいものを食べる人も、つくる人も笑顔に。
農のある暮らし、都会のあなたのベランダからはじめてみませんか?
NHKEテレ「ハートネットTV 介護百人一首」出演中
NHKEテレ「楽らくワンポイント介護」毎週(土)出演中
・農林水産省/ 食料農業農村政策審議会・畜産部会および医福食農連携プロジェクト選定委員