旬の果物や野菜で作る風雅な砂糖菓子「五智果」

旬の果物や野菜で作る風雅な砂糖菓子「五智果」

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ほどよい甘みの中に素材の風味をとじこめた唯一無二の銘菓

「桃林堂」は、上野にある東京藝術大学の近くに店を構える老舗の和菓子店です。戦災を免れ、江戸時代の町割りや落ち着いたたたずまいが残るまちかどに建つ店舗は、門口のしだれ柳が目印。かつて役者の住まいであった大正時代の木造家屋をそのまま利用したという店構えには、ひと昔前にさかのぼったようななつかしさを覚える方も多いでしょう。店内には緋もうせんを敷いた立礼席も設けられ、お抹茶とお菓子をいただくことができます。私も、上野公園内にある東京文化会館での音楽会の帰りにたびたび立ち寄り、名演奏の余韻に浸りながら甘味をいただくという至福のときを過ごしたものです。本店は大阪で1926年(昭和元年)の創業ですが、この上野店もその後すぐに開店し、今に続いています。

 

5月から9月まで限定販売の生水ようかんや、無花果や金時芋で作る季節感たっぷりの棹菓子なども人気ですが、桃林堂でなんといっても有名なのは、「五智果」。食べやすく切った国産の新鮮な果物や野菜を、経験豊かな菓子職人が時間をかけてゆっくりと蜜で炊き上げ、砂糖をまぶして仕上げたこの店オリジナルのお菓子です。五智果という菓名は密教の教えに因んだもので、「蕗の青」、「蓮根の白」、「人参の赤」、「金柑の黄」、「無花果の黒」という五つの色を、五つの知恵を象徴する五智如来になぞらえているとか。砂糖の甘さの中にも、果物や野菜本来の味わいがしっかり生きていることに、いつも感心させられます。店内のショーケースには、無花果や八朔、金柑、洋梨、人参、蓮根、セロリ、蕗など、旬の果物や野菜が常時15種類ほど、季節ごとに少しずつ品揃えを替えながら並んでいます。味わいとともに、それぞれの色、形も楽しんでいただけるので、お遣い物にも重宝するひと品です。

旬の果物や野菜で作る風雅な砂糖菓子「五智果」
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※掲載情報は 2015/08/17 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岸朝子

食生活ジャーナリスト

岸朝子

大正12年、関東大震災の年に東京で生まれ、女子栄養学園(現:女子栄養大学)を卒業後、結婚を経て主婦の友社に入社して料理記者歴をスタート。その後、女子栄養大学出版部に移って『栄養と料理』の編集長を10年間務める。昭和54年、編集プロダクション(株)エディターズを設立し、料理・栄養に関する雑誌や書籍を多数企画、編集する。一方では、東京国税局より東京地方酒類審議会委員、国土庁より食アメニティコンテスト審議員などを委託される。
平成5年、フジTV系『料理の鉄人』に審査員として出演し、的確な批評と「おいしゅうございます」の言葉が評判になる。
また、(財)日本食文化財団より、わが国の食文化進展に寄与したとして食生活文化金賞、沖縄県大宜味村より、日本の食文化の進展に貢献したとして文化功労賞、オーストリア政府より、オーストリアワインに関係した行動を認められてバッカス賞、フランス政府より、フランスの食文化普及に努めた功績を認められて農事功労賞シュバリエをそれぞれ受賞。
著書は『東京五つ星の手みやげ』(東京書籍)、『おいしいお取り寄せ』(文化出版局)他多数。

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