つるっとしたのど越しでコシのある、埼玉県民の夏の定番「加須うどん」

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知られざる小麦の特産地・埼玉県加須の名物

私は埼玉県で生まれ育ち、夏のお昼時は、県内の親戚から送ってもらったうどんを冷たく食べるのが定番でした。そんな感じで、子供のころから身近にあった「うどん」ですが、県内やお隣の群馬県を流れる利根川流域の肥沃な土地の地域が、江戸時代から続く良質な小麦の特産地だったと知ったのは、お恥ずかしながら大人になってからのことでした。

 

というわけで、懐かしいうどんの味を求めて、改めて加須へ。「手打ちうどんの町」としてマップを配布したり、フェスティバルを開催したりと、近年うどんでの町おこしに力を入れている加須には、成田山新勝寺、高幡不動とともに関東の三大不動尊とも称される不動ヶ岡不動尊 總願寺があり、門前で参拝客をもてなしたのが、うどん作りの盛んになったきっかけだったといわれています。

 

現在、加須市内にあるうどん店の数は、およそ40軒。実は埼玉県は、香川県に次いでうどん用小麦粉使用量が全国2位(3位は群馬県)という地位を誇っているのですが、讃岐うどんに比べると規模も知名度もとてもかなわない、知られざる存在なのが現状。しかし当地では、全国的ではない比較的ローカルなマーケットであることを逆手に、今も、うどん作りに輸入品の小麦粉ではなく、加須や県内産の地粉をこだわって使ったり、手こねと足踏みを念入りにしたり、うどんを切った後に棒にかけて干すなどして手間をかけた昔ながらの製法を守っているのが自慢なのです。

 

そのためか、麺はつるっとしたのど越しと、店によってはコシがかなり強い感じで、慣れると普通のうどんではモノ足りなるかも……。加須市内には、「加須手ぼし麺」などという名称でうどんの通販を行っている会社もあります。

 

加須でのうどんの代表的な食べ方のひとつは、刻んだきゅうりとともにごま味噌汁でいただく、夏にふさわしい「冷汁うどん」。現天皇陛下が皇太子時代に召し上がったこともあるという一品で、市内のうどん店「子亀」さんが発祥店です(上写真)。こちらでは、今も伝統的な製法でうどんを手打ちされています。体を冷やす働きのあるきゅうりと、疲労回復効果のあるごま味噌汁は、シンプルながらもまさに夏バテにぴったりの組み合わせ。うだるような暑さの中でも食欲が進むのがありがたい限りです。

 

ちなみに、埼玉県西部の川島町には冷汁によく似た「すったて」という郷土料理があり、どちらも過酷な夏の労働を乗り切るために農民たちが考え出した食べ物だったのでしょう。そんな昔の人たちの知恵に授かりながら、みなさまもうどんで元気に夏をお過ごしください。

つるっとしたのど越しでコシのある、埼玉県民の夏の定番「加須うどん」

こちらは、加須の不動ヶ岡不動尊 總願寺の門前にある、創業200年の老舗うどん店「岡村屋」さん。

※掲載情報は 2015/08/09 時点のものとなります。

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キュレーター情報

青木ゆり子

各国・郷土料理研究家

青木ゆり子

雑誌「ぴあ」等の記者を経て料理に目覚め、2000年に「世界の料理 総合情報サイト e-food.jp 」を創設。以後、各国の「郷土料理」をテーマに、サイト運営、執筆、レシピ研究および開発、在日大使館・大使公館での料理人、料理講師等などに携わる。

地方色あふれる国内外の郷土料理の魅力を広く伝えるとともに、文化理解と、伝統を守り未来につなげる地域活性化をふまえて活動を行っている。

「世界の料理レシピ・ミュージアム」館長。著書「しらべよう!世界の料理 全7巻」(ポプラ社)、
「日本の洋食~洋食から紐解く日本の歴史と文化」(ミネルヴァ書房)。

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