名門インド料理店の“貫禄”カレー

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草分けにして実力派のインド料理店「アジャンタ」

名門インド料理店の“貫禄”カレー

こう蒸し暑い日が続けば、「カレー、喰いてぇ〜ッ」という衝動に襲われる方も多いのではないか。いや、きょうびカレーなど吉野家に行けば350円でまァまァのものが食べられるし、いくらでも衝動を癒やす方法はある。ただ、せっかくなので美味しいカレーが食べたい、しかしわざわざレストランに行くのも面倒くさい……。

 

そういう究極的にわがままな私の「“必殺”解決策」は、麹町「アジャンタ」のテイクアウト利用である。「アジャンタ」は旧日本テレビ本社の向かいというロケーションもあって、昔からメディアの露出も多い有名店。1957年に阿佐ヶ谷で産声を上げた、文字どおりインド料理店の草分けである。1961年に九段に移転、近所のインド大使館の方々の愛顧を得て成功、今やインド料理好きならば知らぬ者のない店といえる。一般に有名な老舗でしかも人気があれば、図に乗ってしまうというか、時代に迎合してしまうというか、むしろ美味しい店は少ないのが現実である。


しかし、「アジャンタ」は美味しい。

家に居ながらにして、最高のカレーが食せる愉悦

名門インド料理店の“貫禄”カレー

何を食べても外れがないし、タンドリーチキンのジューシーで見事な焼き上がりなど、名店ならではの懐の深さを感じる。しいてイチオシといえば、チキン・ティッカ・マサラ。同店のHPによれば「英国人があみ出したカレー」とあるが、オーセンティックなスパイスが香り立つ、それでいて、どこか日本人にもなじみやすい味わいのあるカレーだ。50年をこえる歴史あればこそ実現し得た、インドと日本と英国の「麗しき結合」というべきか。こういう料理を家で食べられるのは嬉しい。

 

そして私が家庭でカレーを食べるときのささやかな秘密兵器は、「オリエンタル社の販促スプーン」。1950年代から1970年代まで配られてきた歴史モノで、40歳代後半から上の方ならば、頭にコックさん顔のついたデザインに見覚えのある人も多いはず(ちなみに今でも同社のネットショップで購入可能)。
 

このやや軽めのスプーンでカレーを食べると、すこぶるオツな味に感じられる。もともとカレーは高級感のある食べものではないので、間違ってもクリストフルのシルバーで食べてはいけない。すこしチープなくらいが、主役であるカレーを引き立てる。

 

「アジャンタ」のカレーは決して日本人の味覚に迎合したテイストではなく、実際のところマニア心をくすぐる趣もある。

たとえばビートルズ「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のB面1曲目、「ウイズイン・ユー ウイズアウト・ユー(これも英国人があみ出したインド音楽、に違いない)」のシタールを聴いて、「カレー、喰いてぇ〜ッ」と思ってしまうような変わり者にこそ、喜ばれる代物かも知れない。

※掲載情報は 2015/06/18 時点のものとなります。

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キュレーター情報

横川潤

エッセイスト 文教大学 准教授

横川潤

飲食チェーンを営む家に生まれ(正確には当時、乾物屋でしたが)、業界の表と裏を見て育ちました。バブル期の6年はおもにNYで暮らし、あらためて飲食の面白さに目覚めました。1994年に帰国して以来、いわゆるグルメ評論を続けてきましたが、平知盛(「見るべきほどのものは見つ)にならっていえば、食べるべきほどのものは食べたかなあ…とも思うこの頃です。今は文教大学国際学部国際観光学科で、食と観光、マーケティングを教えています。学生目線で企業とコラボ商品を開発したりして、けっこう面白いです。どうしても「食」は仕事になってしまうので、「趣味」はアナログレコード鑑賞です。いちおう主著は 「レストランで覗いた ニューヨーク万華鏡(柴田書店)」「美味しくって、ブラボーッ!(新潮社)」「アメリカかぶれの日本コンビニグルメ論(講談社)」「東京イタリアン誘惑50店(講談社)」「〈錯覚〉の外食産業(商業社)」「神話と象徴のマーケティングーー顕示的商品としてのレコード(創成社)」あたりです。ぴあの「東京最高のレストラン」という座談会スタイルのガイド本は、創刊から関わって今年で15年目を迎えます。こちらもどうぞよろしく。

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