ポテトコロッケ
チョウシ屋 東京都中央区銀座3-11-6
生まれかわった歌舞伎座にほど近い銀座南エリアは、かつては木挽町と呼ばれ、今も下町風情が残るまち。その一角に昭和2年の創業時から店を構える「チョウシ屋」は、一見、どんなまちにもありそうな普通のお肉屋さんです。ところが、昼時と夕刻の2回、この店の前にはOLやサリーマンが列を作るのです。彼らのお目当ては、コロッケや豚カツ、ハムカツなどの揚げ物。なかでも、人気なのがポテトコロッケです。
じつは、チョウシ屋はポテトコロッケ発祥の店。千葉県銚子市出身の初代店主が店を開いたころは、コロッケといえばクリームコロッケのことで、レストランでしか食べられない高級料理でした。そこで初代は、日比谷の洋食店で働いていた経験を生かして、じゃがいもにひき肉を混ぜ、小判型に形を整えて揚げる「ポテトコロッケ」を考案したのです。クリームコロッケに負けないおいしさながら値段はその10分の1、ということでたちまち評判となり、連日、店先には長蛇の列ができたとか。やがて、この店からポテトコロッケのレシピは全国に広まり、今では誰もが、コロッケといえばまず、ポテトコロッケを思い浮かべるのではないでしょうか。じゃがいも、ひき肉、玉ねぎを材料に、味つけはシンプルに塩、こしょうのみ。パン粉をつけてラードでからりと揚げるという初代考案の黄金レシピを、現在は3代目が受け継いでいます。揚げたてをオリジナルソースと辛子を塗ったパンにはさんだ総菜パンも大人気で、キャベツなどは入れない潔さで、揚げ物のおいしさをシンプルに強烈に味わうことができます。
毎朝4時過ぎから仕込みを始め、営業は11時から14時半、16時から18時の1日2回。売り切れ次第店じまいということで、揚げたてのサクッとした食感と王道の味わいを求めてやって来たものの空振りに終わるお客も多いとか。早めの来店をおすすめします。
チョウシ屋 東京都中央区銀座3-11-6
※掲載情報は 2015/06/16 時点のものとなります。
食生活ジャーナリスト
岸朝子
大正12年、関東大震災の年に東京で生まれ、女子栄養学園(現:女子栄養大学)を卒業後、結婚を経て主婦の友社に入社して料理記者歴をスタート。その後、女子栄養大学出版部に移って『栄養と料理』の編集長を10年間務める。昭和54年、編集プロダクション(株)エディターズを設立し、料理・栄養に関する雑誌や書籍を多数企画、編集する。一方では、東京国税局より東京地方酒類審議会委員、国土庁より食アメニティコンテスト審議員などを委託される。
平成5年、フジTV系『料理の鉄人』に審査員として出演し、的確な批評と「おいしゅうございます」の言葉が評判になる。
また、(財)日本食文化財団より、わが国の食文化進展に寄与したとして食生活文化金賞、沖縄県大宜味村より、日本の食文化の進展に貢献したとして文化功労賞、オーストリア政府より、オーストリアワインに関係した行動を認められてバッカス賞、フランス政府より、フランスの食文化普及に努めた功績を認められて農事功労賞シュバリエをそれぞれ受賞。
著書は『東京五つ星の手みやげ』(東京書籍)、『おいしいお取り寄せ』(文化出版局)他多数。