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ますの鮮度ともちもち酢飯のバランスも秀逸
北陸新幹線で活況を呈する北陸ですが、終点の金沢のある石川県は勿論のこと、手前の富山県も活気づいています。先日も取材で訪れたのですが、富山駅前は再開発で綺麗に整備され、以前とは別世界が広がっていました。そんな富山の名物のひとつに「ます寿し」があります。「ます寿司」、「ますのすし」、「鱒寿司」とも表記されたりしますが、歴史の古い郷土料理です。
江戸時代の享保年間に富山藩主であった前田利興の家臣吉村新八が、将軍徳川吉宗に鮎寿司を献上し、絶賛されたそう。これは鮎ですが、ます寿しもこれが起源とされています。形状は「わっぱ(曲物)」と呼ばれる丸型の木箱で、放射線状に笹の葉を敷き、酢飯とますの切り身を入れて、重石をした、押し寿し。商品により、ますが下に隠れているものや上に載っているもの、二段重ね、三段重ねなどがあります。
最近は食べやすいように丸型でなく、量の少ない四角形のタイプもあり、より気軽に味わえるようになりました。歴史の古い料理ですから、様々な会社から販売されています。それぞれ良さがありますが、僕は究極のます寿しと呼ばれる逸品を地元の方に教わりました。それが高岡市の『味の山正』の「ます寿し」。他と明らかに違う点があります。それは、受注生産。あらかじめ電話かメールでオーダーして、直接に取りに伺うか、送ってもらうシステム。ふたを開ければ、青笹の香りがふわっとただよい、それをめくれば、中から美しきほんのりピンク色のますが顔を出します。放射線状に切って味わえば、まさに受注生産ならではの鮮度の良さ、そして手作りの丁寧さが卓越。優しい〆具合なので、ます本来の風味や旨みも満喫できます。つやつやのシャリも、酢飯がきつくなく、甘さもあり、もちもちとした食感なのもGOOD。全てにおいて、まじめな「ます寿し」なのです。
※掲載情報は 2015/04/23 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フードジャーナリスト
はんつ遠藤
東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方をひとりでこなし、取材軒数は8000軒を超える。全国のご当地グルメの知識と経験を活かし、ナムコのフードテーマパーク事業にも協力し、現在、東京・大手町のご当地やきとりテイスティングパーク「全や連総本店 東京」の名誉館長も務める。『日経トレンディ』にてトレンドリーダーにも選出。「週刊大衆」「JAL(Web)」などに連載中。また近年は料理研究家としてTVラジオ雑誌などで創作レシピを紹介している。著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』(幹書房)、『おうちラーメンかんたんレシピ30』『おうち丼ぶりかんたんレシピ30』『全国ご当地やきとり紀行』など25冊。