2日目が一番おいしい?!桜のシーズンに食べたい奈良・吉野山の「柿の葉寿司」

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悠久の歴史とともに、手作りの味を

2日目が一番おいしい?!桜のシーズンに食べたい奈良・吉野山の「柿の葉寿司」

今年も桜の花の季節がやってきました。桜の名所は日本各地にたくさんありますが、私にとって印象深かった場所のひとつが、奈良の吉野山です。

吉野山は、奈良、和歌山、三重にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコの世界遺産に登録されている霊山であり、また奈良時代にさかのぼる昔から、時の天皇や万葉人たちがこの地に咲き乱れる桜の花の美しさを愛してきました。吉野自体が縄文・弥生時代から文化の発達していた土地であり、ただ桜の花がきれいというだけではなく、悠久の歴史を今に伝える日本人の心の故郷という趣きが、たまらなく魅力的なのです。

そして吉野の名物といえば、柿の葉寿司!由来には諸説あるようですが、1336年に始まる南北朝時代、吉野に朝廷を置いた南朝の後醍醐天皇らへの献上品として、近隣の里より届けられた熊野灘のさばで作った寿司から誕生したといわれています。浜で塩漬けにしたさばを熊野街道沿いに運搬し、柿の名産地としても知られる吉野地方で、熟成したさばを薄く切って寿司飯に乗せ、柿の葉で包む発想が生まれたとか。江戸時代になると、夏祭りのごちそうとして庶民の間にも広まりました。

寿司にしみこんだ柿の葉の芳香と独特な味わいが何ともいえないおいしさで、今では奈良県民のソウルフードともいわれるほど。さばと並んで、サーモンピンクが鮮やかなさけの柿の葉寿司もポピュラーです。奈良県内には現在、実にたくさんの柿の葉寿司のお店があるのですが、本場の吉野山で、しかも桜の花の季節にいただくのはまさに格別です。

南朝時代の中心地でもあったという吉野山の金峯山寺の参道には、いくつかの柿の葉寿司の名店が軒を連ねています。中でも、吉野杉の箱に詰めてできたての手作りを販売している「ひょうたろう」さんの柿の葉寿司は、しっかり酢と塩をきかせたさばと、まろやかな甘酢の寿司飯が絶妙な組み合わせが、いつまでも後を引くような味わいでした。桜のシーズン中は、店頭販売は昼前には売り切れになってしまうこともあるほど人気のよう。

作りたてもおいしいのですが、お店では「2日目が一番おいしい」というキャッチフレーズで、地方発送も行っているようです。他にも、「やっこ」さんや「醍予(だいよ)」さんといった名店や、参道の道端で地元のおばあちゃんが売っている手作りの柿の葉寿司も、捨てがたい味です。

吉野山の桜は、山の麓から山頂に向けて順に下千本、中千本、上千本、奥千本と呼ばれ、開花時期がずれているので、比較的長く楽しめます。今年(2015年)の開花予想は、下千本が4月2日頃から、奥千本が4月14日頃からとのこと。満開までの期間は1週間前後で、週末などは毎年非常に混雑します。ですので、早朝に訪ねたり、少し時期をずらすなどした方がゆっくり楽しめると思います。南朝の哀しい歴史に想いをはせて、史跡を訪ねながら散りゆく桜をめでるのも乙ではないでしょうか。

※写真は吉野山・下千本の桜です。

※掲載情報は 2015/03/28 時点のものとなります。

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キュレーター情報

青木ゆり子

各国・郷土料理研究家

青木ゆり子

雑誌「ぴあ」等の記者を経て料理に目覚め、2000年に「世界の料理 総合情報サイト e-food.jp 」を創設。以後、各国の「郷土料理」をテーマに、サイト運営、執筆、レシピ研究および開発、在日大使館・大使公館での料理人、料理講師等などに携わる。

地方色あふれる国内外の郷土料理の魅力を広く伝えるとともに、文化理解と、伝統を守り未来につなげる地域活性化をふまえて活動を行っている。

「世界の料理レシピ・ミュージアム」館長。著書「しらべよう!世界の料理 全7巻」(ポプラ社)、
「日本の洋食~洋食から紐解く日本の歴史と文化」(ミネルヴァ書房)。

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