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イースター(復活祭)の前に食べる「セムラ」
この可愛らしいシュークリームの様な食べ物は「セムラ」と言います。セムラは、ブリオッシュみたいな甘いパン生地の中にマジパンが入っていて、パン生地の間には生クリーム、そして上には粉砂糖がふり掛けられている、非常に甘いスイーツです。また、カルダモンも練りこまれているので、ちょっぴりスパイシーな大人の味もしますが、大人から子供まで愛される味となっており、コーヒーと抜群に合うまさにFIKA(フィーカ)するにはうってつけのスイーツです。 FIKAに関しては前回もご紹介しましたが、簡単に言うとコーヒーブレイクです。スウェーデンでは、友達や同僚、家族、様々な人とコーヒーを飲んで甘いお菓子を食べて距離を縮めるという文化が根付いています。スウェーデンでは、北極圏にも入るラップランド以北では、太陽が1日まったく昇らない日も出るくらい暗い冬となります。そんな中でも、自然享受権という法律があるスウェーデンは自然との触れ合いを大事にして、森の散策をしたり、スキーやスケートをはじめとしたウィンタースポーツを存分に楽しんだりもします。 もちろん暖かい家の中で過ごすことも大事にされていて、FIKAという文化がそれを支えたりもしています。このように長い冬でも様々な工夫で冬を満喫するスウェーデンですが、春の到来を告げるものとして、国民からとても愛されているもの、それが「セムラ」です。
キリストの復活を祝うイースター(復活祭)。昔はこの復活祭から数えて45日前から断食に入り、その断食に入る前日に家にある贅沢なものを食べきるのが風習でした。スウェーデンでは、その際に栄養価の高いこの「セムラ」も食べられていて、今ではイースター前の45日間に国民がセムラをよく食べるという風習に変わってきています。日本では、まだ馴染みが薄い「セムラ」ですが、東京でもテイクアウトができるお店があります。
セムラを味わえるお店は六本木にあった
東京メトロ六本木駅B1出口出て徒歩1分のところにある、北欧料理専門店の「リラ・ダーラナ」は40年近く北欧料理をファンに提供し続けている老舗。ここでこの春を祝う「セムラ」がテイクアウトできます。
店内は、スウェーデンを象徴する馬の置物「ダーラヘスト」も様々な色が置いてあり、お店の雰囲気は全体的に柔らかい感じ。ここで長年腕を振るっているのが遠藤芳男シェフです。
今年38年目を迎えたリラ・ダーラナですが、遠藤さんが2代目のシェフ。福島県・会津にはゲストハウスの「リラ・ダーラナ」があり、この六本木はその2号店と言うような位置づけ。先代の下で働いていたときは、もちろん1年に1回は北欧に視察にも行っていたとのこと。お店の表記は北欧料理ですが、お店の名前にもなっている「ダーラナ」はスウェーデンにある地方の名前で、ストックホルムという都市部と比べて、ダーラナという地方は、伝統的な文化や風景がいまでも色濃く残っている地域で、先代が一番北欧の中で好きな場所と言うことでお店の名前に入って、今でも使われています。
お店では20年くらいセムラを提供しているので、恐らく日本で一番長く提供している自負があるそうです。最初はそれこそ大使館からイベントで出したいから作って欲しいというような流れで始まったものですが、業態がレストランなのでテイクアウトにしづらいところもあり、当初はご要望がある時だけ提供をしていました。今のように期間を決めてテイクアウトができるようにして販売しだしたのは、5年ほど前からとのことです。
「セムラ」の味は独特で後を引くのが特徴ですが、リラ・ダーラナで出すセムラは日本サイズで、スウェーデンではもっと大きくてマクドナルドのハンバーガーサイズくらいあるものもあります。スウェーデンの町のパン・洋菓子店はイースター時期までセムラがずらっと並び、その時期で一番美味しいセムラはどの店のものかという投票がメディアでも取り上げられたり、最近で言うとクレープの様に食べやすいセムラが誕生する等、新しい波も広がってきています。 このセムラを食べながら皆でFIKAを楽しむというイベントが、ここリラ・ダーラナで3月15日に開催されました。主催はなんとミュージシャンのカジヒデキさん!
スイート・セムラ・パーティー
当日のお店前にはカジヒデキさんのオフィシャルマークが参加者をお出迎え。会場はカジヒデキさんと、セムラを愛する方々がFIKAを楽しんでいます。カジヒデキさんは「セムラソング」という曲を作られるほどセムラの大ファン。今回のようなセムラを囲んで行うイベントは2回目。
カジヒデキさんは1996年頃からスウェーデンでレコーディングをしています。2003年2月から3月に、マルメ地方にある、スウェディッシュポップの殿堂とも言えるタンバリン・スタジオでレコーディングをした際に、一緒だったミュージシャンのマネージャーがキッチンで作ってくれたのがセムラとの出会い。その美味しさに感激をしたのと同時に、街を見渡すとその時期セムラで溢れているのが目に入り、はまっていき、レコーディングでスウェーデンに訪れる際には、必ずセムラを食べ比べするようになったとのこと。そして2013年2月にリリースしたアルバム「SWEET SWEDISH WINTER」にはセムラの作り方を唄にした「セムラソング」も作っていて、セムラ愛を音楽という形にしています。 当日のイベントでは、セムラソングを含めて3曲の曲を披露し、合間にスウェーデンでの想い出を語り、参加者を沸かしました。曲が終わり、カジヒデキサンの掛け声で、またFIKAが再開し、セムラとコーヒーを片手に、それぞれの会話を参加者は楽しんでいました。
スウェーデンの冬は、長く厳しいという印象が強いかもしれません。ただ、その分長い冬の後に訪れる春は、非常に貴重なもので、その楽しいキラキラとした春を待ちわびながら工夫をしながら冬を過ごします。春を呼ぶお菓子と言っても過言ではない「セムラ」を食べて、濃い目のコーヒーを飲んでFIKAしながら、もう目の前の春が来る楽しみをかみ締めてみませんか?
※掲載情報は 2015/03/17 時点のものとなります。
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キュレーター情報
スウェーデン大使館
福祉の先進国スウェーデン。男女平等の国スウェーデン。それだけではなく観光としても有名です。スウェーデン北部に広がる大自然、世界一美しい首都ストックホルム、有名なガラスの王国など、スウェーデンには見所がいっぱいあります。食文化も非常に豊かで、洗練された乳製品はもちろん、牛肉、豚肉、魚介類の消費も多く、ジャガイモが付け合わせとして茹でて供されることが多いです。また、スウェーデン料理には膨大な種類のパンがあります。形や大きさ、ライムギ、エンバク、オオムギ、白パン生地、黒パン生地、サワードウ、全粒粉といった材料で非常に多くのパンが愛されています。多くの肉料理、特にミートボールが、リンゴンベリー・ジャムを添えて食べられており、代表的な伝統料理となっております。スウェーデン料理の菓子は、伝統的に酵母ロールパン、クッキー、ビスケット、ケーキの様々な種類があります。フィーカ(Fika、お茶の習慣)もスウェーデンで欠かせない食文化です。食文化という側面で、皆様にスウェーデンの魅力を感じ取っていただければ何よりも幸せです。