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日本にも押し寄せてきた!ジャパニーズ・クラフトジンの潮流
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撮影:Addie Chinn
「京都産のジン」と聞いたら「え??どうして?」と思う方は私だけではないでしょう。外国からお酒を輸入してブレンドしているのではなく、京都の素材にこだわったジンが、実はいま熱い注目を集めているのです。
ジンはジントニックのベースとしてとても有名で、日本全国どこのバーに行ってもオンリストされている定番商品です。世界的な代表銘柄は、ビフィーター、ボンベイ、タンカレーなどに代表されるイギリスのもので、カジュアルな価格帯で入手可能なため、家庭でジントニックを作った経験のある方も多いことでしょう。このごく当たり前の蒸留酒が、なぜ京都と結びつくのでしょうか。
ふと頭をよぎったのが、以前読んだソムリエ協会教本の「ワイン以外のお酒」の記事。じっくりチェックしてみると、ジンの生産量は順調に伸びてきており、特にプレミアム価格帯のものが好調だと書かれています。従来のジントニックなどで飲まれるだけでなく、色々なフレーバーのプレミアムジンが開発されているのを改めて認識しました。また、ジャパニーズ・クラフトジンの代表として、今回の「京都蒸溜所 季の美」が掲載されているのです。ジン=ジントニックという私の認識は古いのだということに愕然とし、流行に取り残されていることを猛省。初めてプレミアムジンに真剣に向き合いました。決して妥協せず、卓越した職人技で最高級のものを作り上げるために、京都が選ばれたのですね。
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和の香りがたっぷり、ビロードのような舌触りのプレミアムジン
ジンはボタニカルと呼ばれる成分を抽出しますが、季の美では定番のジュニパーベリーの他に、檜、柚子、玉露、生姜、山椒、紫蘇、笹といった、日本ならではの素材を使用します。特に京都産にこだわった日本の旬のボタニカルをそれぞれの個性に合わせてブレンドし、数種の銘柄を作り上げていくのです。
ワインを教えている私は、まず香りだけで原材料を特定することにトライしてみました。「KINO TEA」は上質な茶葉、「KI NO BI」は柚子や山椒、「勢」はジュニパーベリーが爽やかに香り、どれも明らかに個性が違います。まるでアロマを楽しむように、気分によって選んだフレーバーをオンザロックでゆったりと楽しむと、1日の疲れがふっと抜けていきそうです。
さて次はテイスティング。蒸留酒はアルコールが高いので恐る恐る舌先で舐めてみると、普通のジンを味わった時のガツンとしびれるような感覚が全くないことに驚きました。なめらかでビロードのようなしなやかな舌触りなのに、アルコールは45%以上あります。このなめらかさの理由は、スピリッツのベースにありました。一般的なドライジンはコーン、小麦、糖蜜由来のニュートラル・スピリッツを使用するのですが、季の美ではライス・スピリッツを使用しています。ほのかな甘みと柔らかい口当たりが特徴的な、世界初のライス・スピリッツを使用したジンのしなやかさには、誰でも驚かされるに違いありません。
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キッシースズキのマティーニbyアレッサンド・パラッツィ(ロンドン、デュークスバー)
撮影;Addie Chinn
季の美で作る007「キッシー・スズキのマティーニ」
季の美プレミアムジンを使ったカクテルを集めた素敵な本があったので、手に取ってみました。
酒類評論家として活躍するデイヴ・ブルーム執筆の、世界で活躍する15人のトップバーテンダーによる「Classsic KI NO BI Cocktails」です。そこで釘付けになったのが、ロンドンのデュークス・ホテルでバーマネージャーを務めるアレッサンドロ・パラッツィ氏作の「キッシー・スズキのマティーニ」。
007と言えばマティーニを愛飲することで有名ですが、このマティーニはいくつかの物語からヒントを得ています。基本的には「007カジノロワイヤル」で考案した「ヴェスパー」のアレンジ版で、名前の由来は「007は2度死ぬ」でジェームズ・ボンドと恋に落ちた、日本の海女キッシー・スズキからです。
実は007シリーズの作者イアン・フレミングは、デュークス・ホテルの常連客で、足繫くデュークス・ホテルに通っていたのだそうです。007に出てくるお酒のチェックをこよなく愛する私としては、次回の訪問先として新たにロンドンのデュークス・ホテルが加わりました。アレッサンドロ・パラッツィ氏にストーリーをお伺いしながら、「キッシー・スズキのマティーニ」を頂けたら、と思うとワクワクが止まりません。
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デュークス・ホテルのバーマネージャー、アレッサンドロ・パラッツィ氏
撮影:Addie Chinn
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季の美には3本セットのミニボトルがあります。手のひらにすっぽり収まるくらいの小さなサイズですから飲み残す心配もありませんし、素敵なパッケージ入りなので、大切な方への手土産にもピッタリ。家庭で気軽にマリアージュさせるなら、柚子や山椒などのボタニカルが入った、フレーバード・チョコレートが合いそうです。
皆様も是非、世界の最先端を行く日本のプレミアムジンを先駆けで味わってみてください。
(TOP画像 ©JINNYAGI)
※掲載情報は 2020/10/04 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ソムリエ・ワイン研究家
林麻由美
企業、オンラインショップ、イベントにマッチしたワインセレクトやセミナーを行うソムリエ・ワイン研究家。
国内大手航空会社に乗務員として入社。国際線ファーストクラスを15年担当、世界55カ国以上を回り、世界各国のワインや様々な職業や人々に触れるうちに、ワインが繋ぐ人の縁の素晴らしさに感動する。
1995年に当時はまだ耳慣れない言葉だったソムリエの資格を取得、2001年にシニア・ソムリエも取得。その他、クージヌリー・ド・ブルゴーニュ、英国WSETLevel3、日本酒利酒師、温泉ソムリエ、フードアナリスト記者の資格を持つ。
現在は、ボルドーワイン騎士団理事、サクラアワード常任審査員、イベント・バンキング・フードイベント・プロデューサーとして、ワインと食の啓蒙活動に努めている。
JAL、アメックス、ダイナース、VISAの機関誌、ワイン専門誌では、テイスターや筆者として、ブルガリやディオールなどのファッションブランド企業、電通などの大手企業では、オーダーセミナーを行う。また、ジェラールチーズなどのオンライン販売では、チーズを使った料理とワインのマリアージュを提案している。