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納豆発祥の地は京都
「関西人は納豆嫌いが多い」というのは、全く根も葉もないガセネタといわれています。なぜなら、納豆発祥の地は京都だからです。京都府右京区京北町の常照皇寺の資料には、納豆が描かれた藁苞納豆の絵画が発見されています。
修文大学健康栄養学部非常勤講師の野田裕子氏の著作によると、光厳法皇が丹波山の常照皇寺で隠遁生活をしていた際、村人たちは藁に煮大豆を入れたものを献上していたそうです。
はじめから納豆を献上するつもりではなかったでしょうが、たまたま藁の納豆菌が作用し、糸を引き、食べてみると美味しいことから、京都御所に献上するのが習わしとなりました。その習わしは、江戸末期まで続いていたそうです。その納豆作りをしていた村人はその後、通称八幡太郎(源義家)に召集され、後三年の役を機に東北地方に兵隊として派遣されました。行く先々で納豆作りを教え、納豆の技術は東へ東へと伝わっていきました。
納豆発祥の地に関しては他に、秋田県横手市説、熊本県説もあり、いずれも確証にはかけるようです。今では納豆といえば茨城県水戸市が有名ですが、これは戦後の地域おこしの一環で誕生したものです。しかし納豆が食卓の定番となったのは、水戸納豆の功績でしょう。
もともと「納豆」という言葉はなく、朝廷に「豆」を「納める」ことから「納豆」という言葉が生まれたといわれています。やっぱり、京都が発祥の地が有力なり。しかしなぜ、関西人は納豆が苦手という都市伝説が生まれたのでしょうか。京都は多種多様な食材が集まり、納豆ばかりを食べる必要がなかったので、特別頻繁に食されることがなかったとも言われています。
かくいう私は、大学4年間とOL時代2年間を京都で暮らしていましたが、関西の人が納豆を嫌いというイメージは全くありませんでした。比叡山から石を投げると学生と坊主に当たるといわれますが、納豆は非常にコスパのよい良質タンパク源として長い間、学生と坊主を支えてきたのだと思います。
京都の大学でも、ひときわ個性的な大学が立命館大学。その中でもより個性的な人材が集まる、産業社会学部(通所「産社」)では「食」をキーワードにし、地域経済社会と連携して京北プロジェクト活動をしています。このプロジェクトで2008年に商品開発したのが、「りつまめ納豆」です。
納豆の原材料に選ばれたのは、オオツル大豆。これは中粒タイプの京都の在来種の大豆です。残念ながら現在では、京都府下での栽培はなく滋賀県で作られています。その「りつまめ」の製造を担ったのは、京都市の『牛若納豆』。先代の福三田邦彦社長から「納豆の発祥の地は京都やで~」と聞いたときは、びっくりしました。
工場を見学した際に、一番印象に残ったのは、国産大豆の品種の多さ。大豆の特色を出すために、浸水時間、煮方、発酵時間などを研究し、それぞれの大豆に合う仕込みを丁寧に続けていらっしゃいます。大豆の品種で納豆を選ぶ、納豆マニアをうならせるこのこだわりが、『牛若納豆』の魅力です。「うちの納豆は納豆臭さがない」「臭い納豆はかなわん」と、上品な納豆に仕上げるのもまた、京都の牛若納豆スタイルです。
社長とご一緒した北山の「鬼太鼓(おんでこ)」という居酒屋には、牛若納豆メニューがずらり。その「鬼太鼓」のオススメメニューは、「なっとろろ」。納豆ととろろと卵、この組み合わせがとても美味しいです。
関西では、中粒から大粒の納豆が好まれます。納豆が一品料理として確立しているため、粒が大きい方が大豆の味を楽しむことができるからです。一方関東では、納豆はごはんにかけて食べるのが主流の為、小粒納豆が人気となりました。
「りつまめ」は、京都市内のスーパーや百貨店では販売されていますが、全国各地の催事などでしか見かけることができないレアもの。先日都内の催事で見つけ、さっそくまとめ買いをして冷凍しました。中粒で納豆臭くない、はんなり上品な納豆は、味はもちろんのこと、花の学生時代を過ごした、私にとってちょっぴり青い想い出が詰まっています。合コン、ダンパ、徹マン、どれも2度とすることがない若気の至りだらけ。学生時代、烏丸通りにあった喫茶店「赤レンガ」でウエイトレスのバイトをしていた頃のこと。ちょうど、ノーパン喫茶が京都で流行っており、バイトできる友人が羨ましかったなぁ。MKタクシーの食べ放題バイキングで、栄養補給していたっけ……。
朝ごはんに「りつまめ」を食べると、何やら「うふっ」と昔のことを想い出しては、ちょっぴり恥ずかしくなり、ごはんをかきこみ過ぎてしまいます。納豆のない朝ごはんはありません。全国の方に、中粒のオオツル大豆「りつまめ」を是非、試して頂きたいです。
※掲載情報は 2019/04/29 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家/フードディレクター
タカコナカムラ
山口県の割烹料理屋に生まれる。
アメリカ遊学中にWhole Food(ホールフード)に目覚める。
日本の伝統食・発酵食、乾物料理の第一人者として、数多くの商品開発や、オーガニックカフェのプロデュースに関わる。
現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を主宰。
通信講座(がくぶん)では、
「野菜コーディネーター」「発酵食スペシャリスト」
「AGEフード・コーディネーター」など食と美や健康に関する講座を多数監修。
一般社団法人ホールフード協会 代表理事