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またいちの塩を訪ねて
福岡県糸島市は、「住みたい町」の常にトップ。移住者対策も活発なエリアです。その糸島半島の西側、玄界灘と外海がぶつかり合う突端に「またいちの塩」の製塩所があります。
福岡市内から1時間程海沿いをドライブし、雑木林や砂利道を抜けると海が広がり、インディアンの基地のような古い木造の建物が威風堂々とたっております。
入り口近くには、見張り台とも見えるような展望デッキもあり、まさにアパッチの基地のような圧巻の建物に、期待度が膨らみました。案内人は、「またいちの塩」の創業者である平川秀一さん。その風貌も、基地の圧巻さを超える程のパンチがあります。
料理人としてのスタート
今から18年余前、26歳でこの糸島半島の突端に製塩所を構えました。カナダやヨーロッパを周った後、日本に帰国。料理の道を目指されたそうです。
時は、1997年。ようやく塩の製造、販売が自由化された年でもありました。1970年塩田の廃止から長い間、私たち日本人は塩化ナトリウム99.999%の塩っぱいだけの塩を食べさせられてきたのです。
自然のままにこだわる製法
製塩所の突端で海水をくみあげ、竹をつたわせて10日間かけて濃縮します。装置は全て木製にこだわるのが「またいちスタイル」。
海のミネラルと山のミネラルが注ぎ込むこの半島が、「またいちの塩」の原材料です。濃縮された海水を煮詰めること5日。木製の櫂で混ぜ、火力も電気やガスを使用せずに薪を使用。これも「またいちスタイル」です。
太陽と薪の熱だけでは、100リットルの海水から100gの塩しか作ることができません。天日で10日、薪で煮ること3日~5日。天候によってはもっとかかる場合もあります。毎日変化する自然と職人の五感を使っていきます。センサーや温度制御装置などどこにも見当たりません。
できた塩の結晶を杉の樽で沈殿させたものが「またいちの塩」。それを焼いたものが、焼き塩。
工房の設備や道具、どれをみても、オリジナルの自家製。それは、またいちの塩づくりに合う道具を作ることからはじまったからです。
塩の品質はもちろん、「またいちの塩」のビジネスの展開がまたまたユニークであり、モノ作りから次の世代へバトンをつなげていく魅力の種があります。
大人気!花塩プリン
敷地内には、またいちの塩を訪れた人が必ず、食べる大人気のプリン「花塩プリン」を販売しています。名前のとおり、潮の粒がプリンの甘さをより引き立ててくれます。
私も料理人の端くれとして、塩と水は料理の基本であると思います。ほんの一粒の塩が、素材を生かしたり、格別の風味を作り出したり、秘めた旨味を引きだしたり、という塩マジックがあります。
「またいちの塩」は、福岡市内ではよくみかけるようになりましたが、今回、紹介する「花塩」は、ここでしか買えないらしく、またいちの塩づくりの魂を感じられる商品です。一番結晶であり、味も旨味も濃厚。見た目には粒が粗いのですが、指先で簡単に崩れるため、トマトや刺身にパラパラとかけていただくのがおすすめの使い方です。余分な調味料は全く不要です。
平川さんの塩づくりの苦労も設備や道具からひしひしと伝わってきましたが、塩作りの楽しさも同時に感じることができました。
モノ作りっていいなあ~。本物を目指す生き方って素敵だなあ~と。
渋谷のセンター街、ハロウィンで盛り上がる若者たち。「またいちの塩」の基地、訪ねてみませんか?塩づくりしてみませんか?
忘れかけていた何かを想い出し、感じる場が「またいちの塩」製塩所であり、味であることは間違いありません。
またいちのしお 花塩 35g~40g ¥1200
※掲載情報は 2018/11/06 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家/フードディレクター
タカコナカムラ
山口県の割烹料理屋に生まれる。
アメリカ遊学中にWhole Food(ホールフード)に目覚める。
日本の伝統食・発酵食、乾物料理の第一人者として、数多くの商品開発や、オーガニックカフェのプロデュースに関わる。
現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を主宰。
通信講座(がくぶん)では、
「野菜コーディネーター」「発酵食スペシャリスト」
「AGEフード・コーディネーター」など食と美や健康に関する講座を多数監修。
一般社団法人ホールフード協会 代表理事