幅広い世代に愛される『リチャード ジノリ』のストーリーを追う

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フィレンツェの磁器生産に大きく貢献したジノリ家の教え

イタリア・フィレンツェに本拠地をかまえる『リチャード ジノリ』は、ヨーロッパで3番目に古い歴史を持つ伝統ある磁器窯です。

 

『リチャード ジノリ』は、“リチャード・ジノリさん”が創窯したわけではなく、「リチャード製陶所」と「ジノリ製陶所(ドッチア窯)」という2つの会社が合併し、今の『リチャード ジノリ』という会社名となっています。

 

私はこの2つの会社が合併する前の、ジノリ家という名門貴族が5代続けて運営していた頃の1735年から1896年にかけての歴史がとても好きです。なぜなら、ジノリ家という一流貴族による経営というのは、非常に貴族らしい「品のある、ノーブルな経営スタンス」だったからです。

 

『フィレンツェ貴族からの招待状』(山下 史路著、文藝春秋、1998年)では、「貴族社会は閉鎖的」といわれるなか、著者である山下氏とジノリ家現当主であるロレンツォ氏の貴重な対談エピソードが紹介されています。

 

「貴族」と聞くと、お金持ち、セレブリティ、豪華で華やか、というイメージを持たれがちですが、実際の「貴族」とは、いったいどんな方々のことを指しているのでしょうか。

 

1400年代後半のジノリ家の先祖ピエーロは、子ども達に商売をさせるときに、<誠実で高潔であれ>と絶えず教え続けたといいます。

 

ジノリ家の現当主・ロレンツォ氏によると、貴族は資料を持ち、歴史に非常に高い関心を抱いて暮らしているため、その辺の学者よりもずっと研究熱心で正確な知識を持っているそうです。

 

ジノリ(ドッチア)窯創業者であるカルロ・ジノリ侯爵も、化学に明るく、当時ほかの窯元が職人まかせだった磁器開発を、自らが宮殿内に実験室を作り、研究に時間を費やし、その結果、ヨーロッパで3番目に古い歴史を持つ窯となりました。

 

ジノリ家先祖ピエーロの<誠実で、高潔であれ>という教えは、5代続いたジノリ家指揮のもと運営されていた時代の経営スタンスに、大きな影響を及ぼしており、初代だけでなく、 2 代目、3 代目……と、父に遜色ない活躍ぶりで、土の改良、意欲的な工場増設、そして福利厚生を充実させて職人の働きやすい環境づくりを心掛けるなど、フィレンツェでの磁器生産に大きく貢献していきます。

 

そもそもフィレンツェといえば、ルネサンス文化の中心として毛織物業で栄えていましたが、その後、国を治めていたメディチ家とともに衰退の一途でした。その国の侯爵で議員も兼ねていたカルロ・ジノリ侯爵が、自国の衰退を憂い、再び繁栄をもたらすには硬質磁器の生産が必要と考えていったわけなのです。

 

私はジノリの歴史を通して、『貴族の一番の価値はパトロン精神である』、いわゆる『ノーブル・オブリゲーション』を感じずにはいられませんでした。

長い間愛され続けているロングセラーシリーズ

さて今回ご紹介する逸品は、『リチャード ジノリ』のロングセラー「イタリアンフルーツ」です。

 

青紫のプラムを中心に、フルーツや小花を絶妙なバランスで散らしたこちらのシリーズは、1770年頃に、トスカーナ地方のある貴族の別荘で使うディナーセットとして考案されたのがはじまりです。

 

小花の絵付けには何種類かのパターンがあり、その判断は職人に任されています。そのため、何枚かを見比べると微妙に柄が違っており、それがこのシリーズの愉しみの一つとなっています。

 

やわらかい金の曲線と、花びらのようなブルーのラインに縁取られた、可憐で華やかなティーカップ&ソーサー。

 

デザインの奥にある、ジノリ家の気品を感じながら、優雅なティータイムを演出するのにいかがでしょうか。

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※掲載情報は 2018/10/31 時点のものとなります。

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キュレーター情報

加納亜美子

料理家/西洋陶磁史研究家

加納亜美子

洋食器を中心とした高級食器シェアリングサービス「カリーニョ」や、食器の魅力を伝えるため「おうちレストラン」をコンセプトとした会員制料理教室「一期会」を運営。洋食器輸入代理店とのコラボレーションイベント、百貨店文化サロンでのセミナー講師、レシピ開発、商品開発、WEB雑誌へのコラム執筆など、多岐にわたり活動中。

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