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紹介している商品
今回は、私の夏の味をひとつ紹介致します。
それは盛夏の頃、ある方からいつも送っていただく旬の一品、『旬茄』の「水なすぬか漬け」という商品です。
サッパリと口当たり良く食べやすい上、夏バテにも効く糠漬けです。
手元に届いた箱を開けると、一面ぬか床です。そこに手を入れると、ぷっくりと丸い紫色の水なすが出てきます。6個、8個、10個入りがあります。糠を取って洗うとその姿はつややかで美しく、皮は薄いです。ヘタをむしり、手で裂いて器に盛り付けます。サクッと簡単に裂くことができます。
糠床から出した浅漬け水なす ヘタは緑色でみずみずしい
一番のコツは、盛り付けたらすぐに食べること。時間が経ち空気にふれると、茶色く変色して味も落ちてしまいますから。
水なすは生食できる茄子ですから、まず2~3日目ぐらいの浅漬けを味わいます。
アクは少なく、甘みのあるみずみずしさがたっぷりで、サラダ感覚で味わえます。水なすの特徴を最も楽しめる食べ方です。
日に日に味に変化が生まれるので、その都度新しい味が楽しめます。私は、一週間以上経過した古漬けも大好きです。糠の香りと乳酸発酵の酸味ある深い味わいは、日本酒との相性もバッチリです。
しっかり漬かった水なす。
糠床から出して洗えば、手でざっくり裂いてすぐに盛り付ける手早さがおいしさのコツ!
漬かり具合に関わらず、そのまま裂いて食べるのがお勧めですが、ひと手間かけるなら……浅漬けには、粗びき胡椒を一振りしてエキストラバージンオリーブオイルを一垂らせば、冷やしたスパークリングワイン、白ワインとも合います。モッツァレラチーズを添えてもおいしいです。
エキストラバージンオリーブオイルとの相性も良く、
粗びき黒胡椒の香りがアクセント!
和風なら、青じそと茗荷を加え、鰹節を振って、醤油をほんの数滴垂らせばオツな味です。
レモンなどの柑橘類の果汁を絞ると、一層爽やかです。
古漬けになると、おろし生姜を添えると風味が広がります。
ここで、なすの歴史を紹介しましょう。
なすは、奈良時代の7世紀にはインドの僧侶が中国を経て日本に伝えたといわれています。当時は「奈須比」と記され、平城京で栽培されていたと記録が残っています。
平安時代には、内膳司の管轄の畑で栽培されており、漬物のレシピも『延喜式』に残っています。
泉州水なすは、泉佐野市が発祥地とされています。この地は温暖な気候で、溜池が多く水はけが良く、海が近いため地下水に塩分が混じることなどが、みずみずしい水なす作りには最適でした。江戸時代初期には、本格的な栽培が行われ始めますが、不思議なことに、泉州以外の土地では、同じ水なすが作れないのです。絞れば水がしたたり落ちるほどの水なすは、夏の暑い時期の農作業の合間に食し喉の渇きを潤すのに最適な、地産地消の夏野菜だったのです。
美味しいけれど皮も薄くデリケートな水なすは、流通に適さず、長らくここだけで食べることができた地域野菜でした。
現在でも水なすの栽培は難しく選別基準も厳しい中で、「旬茄」では、最高級の厳選した朝取りのものを契約農家から仕入れているそうです。漬物は、素材の吟味が何より大切と考えているからです。
初夏から秋にかけては、最盛期を迎える旬の水なすですが、冬にはハウス栽培のものを使用するため、このぬか漬けは一年中手に入れることができます。
「旬茄」の水なすは、まず一つ一つ丁寧に手仕事で塩もみし、表面にかすかな傷をつけます。塩は自然天日塩です。昔ながらの方法で作られた塩は、海水中のミネラルや酵素を充分含んでいます。
次に、糠に漬け、皮につけたかすかな傷から、糠のうま味を引き込みます。糠床は、水なす本来の味を損なわないよう塩分濃度を控えめに2日目、3日目でもあっさりと食べられるよう工夫しているそうです。
なるほど、ぬか漬けは苦手という方にも食べやすいあっさりとした味に仕上がっています。ぬかの風味が好きな方は、一週間以上冷蔵庫で寝かしておいてもおいしく食せると思います。
「旬茄」の販売の方々が大切にしていることは、「商品をご購入されて達成」ではなく、「お客様のお口に入り喜んでいただける」までを仕事と考えていることだそうです。
自宅の食卓にも、ご贈答やおもたせにも、泉州水なすの糠漬け「水なすぬか漬け」は喜ばれるイッピンです。
岸和田市の本店をはじめ、全国のデパートなどの店舗、またインターネットでの購入が可能です。
※掲載情報は 2018/08/28 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ライフスタイルデザイナー
長尾典子
日本伝統の知恵と美を取り入れた現代の食と暮らし方”Nippon Stylish Life”を提唱。
西宮市内のサロンと各地で、テーブルコーディネート・料理・英語・食文化をテーマに幅広く活動中。
季節開催「Japan Cool Seminar in Tokyo」では伝統美味食をテーマに、レストラン・料亭を会場に、その日だけのオリジナル料理を味わい学ぶ講座。
旅館・ホテルの食空間提案、英語による和食文化、テーブルコーディネートセミナー、オリジナル食器デザイン販売も手掛ける。
著書『12か月のLifestyle Book 食卓からしあわせは始まる』エピック
『和食の力に魅せられて 伝統美味食の世界』エピック
食卓文化研究家、食空間コーディネート資格認定講師、卓育インストラクター、カラーコーディネーター、英語講師。
食空間コーディネート協会理事
京都文教短期大学、大阪夕陽丘短期大学非常勤講師。
奈良女子大大学院生活環境修士。現在、現在、龍谷大学博士後期課程。
mail:nagao@a-de-v.com