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辛さと酸味弾けるカレーに混ぜるインドのナスピクルス
カレーの付け合わせは、大事に思っている。
ジャパニーズスタイルカレーライスの福神漬け、らっきょう。欧風カレーのレーズンやシュレッドチーズ、アーモンドスライス。タイカレーなら本場ではフレッシュのグリーンチリをかじりながらカレーをすするという。そしてインド。インドはアチャールというインドスタイルの漬物がある。英語表記ではピックルとなるもの。わたしたちが日々食べる漬物とは少々ニュアンスが違うのだが、食べればやはり漬物のポジションの食べ物だ。
銀座のカレー店『デリー』はご存知だろうか。東京の老舗カレー店の三本指に入る名店。特に有名な「カシミールカレー」はここのオリジナルだ。わたしは湯島にある上野店が昔から馴染みで足繁く通っている。
『デリー』のテーブルには緑色のきゅうりの漬物とともにタマネギのアチャールが入ったステンレスの容器が置いてある。フレッシュなタマネギを辛味と酸味で仕上げた、いわばインド周辺国の浅漬けだ。わたしはこれが好物で、『デリー』の田中社長には毎度申し訳ないのだが、容器を半分ほど空にしてしまう。
そんな『デリー』のカレーの付け合わせの中で、実は店頭メニューでは提供されていないものがある。それは物販コーナーで店内で販売もされている「シェフスワミの特製ナスのピクルス」。これがクセになるうまさなのだ。
この瓶詰めピクルス、デリー常連の剛の者などはレジで買い込み席でカレーを注文、そのままカレーに添えてしまうという荒業を繰り出す者もいるそうだ。それくらい魅力的なものだとわたしも感じる。
さて、この日は暖簾分け店、富山県高岡市にある『デリー』の「コルマカレー」を用意した。銀座店のオリジナル、パウチの「コルマカレー」と比べて少し甘めの仕上がりがチャーミングだ。
甘く深い味わいと焙煎の香ばしさ。たまらなくうまい。ここにナスのピクルスを合わせる。
ピクルスの独特の香りはブラウンマスタードとオイルによるものだ。
辛く、酸っぱく、香りが強い。これがカレーを食べ進めるのにいいアクセントになる。日本のカレーライスのスタイルのように、たまに福神漬けをつまむというやり方はしない。カレー自体に混ぜるのだ。これがとてもいい。辛味、酸味で味に大きな変化が出るが、コルマカレーも個性が強いもの、負けてはいない。おおらかに包み込んで新しい美味しさを提示してくる。夢中で食べてしまう。
ふと思いついて、前の日に作ったベーコンと白菜、ソーセージのポトフと合わせてみた。これがまた意外な美味しさを引き出してくれた。
スモークソーセージやベーコンに負けない個性的な味。しかしそれらを抑え込みもしないしなやかさも併せ持つ。旨味とスパイスがよくなじんだオイルがとても重要なのだ。
ポトフに香りと酸味がのって楽しい変化が生まれる。ヨーロッパ料理が南アジアのテイストに変化する。いや、ヨーロッパにもこういう味のものはあるのではないだろうか。そうか、ドイツ料理のザワークラウトか。ロシアの方でも酸味が強い漬物を食べると聞く。そんな各地に想いを馳せるのも食の大いなる楽しみのひとつだ。
※掲載情報は 2018/02/24 時点のものとなります。
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キュレーター情報
カレーライター・ビデオブロガー
飯塚敦
食、カレー全般とアジア料理等の取材執筆、デジタルガジェットの取材執筆等を行う。カレーをテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」が10年目で総記事数約4000、実食カレー記事と実食動画を中心とした食と人にフォーカスする構成で読者の信頼を得る。インドの調理器具タンドールの取材で09年秋渡印。その折iPhone3GSを購入、インドにてビデオ撮影と編集に開眼、「iPhone x Movieスタイル」(技術評論社 11年1月刊)を著す。翌年、台湾翻訳版も刊行。「エキサイティングマックス!」(ぶんか社 月刊誌)にてカレー店探訪コラム「それでもカレーは食べ物である」連載中。14年9月末に連載30回を迎える。他「フィガロジャポン」「東京ウォーカー」「Hanako FOR MEN」やカレーのムック等で食、カレー関係記事の執筆。外食食べ歩きのプロフェッショナルチーム「たべあるキング」所属。「ツーリズムEXPOジャパン」にてインドカレー味グルメポップコーン監修。定期トークライブ「印度百景」(阿佐ヶ谷ロフトA)共同主催。スリランカコロンボでの和食レストラン事業部立ち上げの指導など多方面で活躍。