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明治屋の社員K氏がたまに贈ってくれるベーコンがある。塩分、甘さもほどよく、豚ばら肉の美味しさがよく分かるベーコンだ。
いったいどこで買っているのか訊いてみたら、新潟は魚沼市にあるホリカフーズで買っているという。
ホリカフーズはコンビーフやソーセージなどを造っている老舗企業。明治屋のコンビーフも同社が製造しているのであります。
このベーコンはそもそも、ホリカフーズの社内販売用に造られたそうな。それを買った社員が家族で食べたり、取引先や客に贈ったりしていた。
それが数年前から一般客も買えるようになった。明治屋のK氏もその味を気に入り、定期的に購入しているという。
明治屋といえば日本の洋食界をリードしてきた企業。K氏だけでなく、同社の社員の多くがこのベーコンを買っているという。つまり食のプロが認めた味なのだ。
とはいえ、今のところ販売は工場併設の直売所のみ。通販もやっていないから、欲しくなったら南魚沼市まで行くしかない。
亜硝酸Naは悪者か?
と、ここで博士はおもむろに台所へ向かう。
ベーコンを厚めに切って鍋で炒める。その脂で鶏もも肉、玉ねぎ、しめじも炒める。
同時に、別の鍋で赤ワインを一本分、煮詰めておく。それをさっきの鍋にどぼどぼ投入し、フォンドボーを足してローリエを浮かべる。塩で味をちょいと調整…。
ところで、このベーコンには亜硝酸Naが使われている。一般には発色剤と呼ばれているやつだ。
亜硝酸Naの役目は肉の色合いを保つこと(色素の固定。着色しているわけじゃない)。そして、もっと大事なのは食中毒を起こす菌類の繁殖を防ぐことであります。
中でも最強のボツリヌス菌は高温に強く、基本的には摂氏120度で4分間以上加熱しないといけない(食品衛生法)。しかし亜硝酸Naを加えることでボツリヌス菌の繁殖を抑制できるから、もっと低い温度での加熱で殺菌できる。
ということは、ですよ。
肉に過剰な加熱をしなくてもいいから、肉本来の美味しさが活かされるわけであります。
ちなみに亜硝酸Naは加熱すると分解されるので、出来上がったベーコンには微量しか残っていない。その量も食品衛生法で基準が決められております(1kgに0.07g以下)。
増量剤を使わぬ正直製法
かくのごとし。鶏肉の赤ワイン煮であります。
鶏や牛の赤ワイン煮にベーコンを加えるのは、その特有のコクを加えるため。ソースにも深みが出るので、それが染み込んだ鶏肉がまことにウマい。
1kgの生肉で出来るベーコンは700g〜800gだそうだ。歩留まりでいうと7、8割ということになる。安価なベーコンの中には還元水あめなどの増量剤を使って歩留まりを向上させるものがあるが、ホリカフーズはそれを一切やらない。
お値段は1kgで2,000円であります。
ごちそうさま!
※掲載情報は 2017/12/14 時点のものとなります。
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キュレーター情報
缶詰博士
黒川勇人
昭和41年福島県生まれ。平成16年から世界の缶詰を紹介する『缶詰blog』を執筆。缶詰に精通していることから"缶詰博士"と呼ばれ、TVやラジオ、新聞など各種メディアで活躍中。国内外の缶詰メーカーを訪れ、開発に至る経緯や、製造に対する現場の“思い”まで取材するのが特徴。そのため独自の視点から缶詰の魅力を引き出し、紹介している。
著書は『おつまみ缶詰酒場』(アスキー新書)、『缶詰博士・黒川勇人の缶詰本』(タツミムック)、『缶づめ寿司』(ビーナイス)、『日本全国ローカル缶詰 驚きの逸品36』(講談社プラスアルファ新書)『缶詰博士が選ぶ!「レジェンド缶詰」究極の逸品36』(講談社プラスアルファ新書)、『安い!早い!だけどとてつもなく旨い! 缶たん料理100』(講談社)など。小曽根マネージメントプロ所属。
お問い合わせ Mail:k-k@kosone-mp.com