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パティシエと板前という二刀流の職人がつくる、日本料理店の絶品プリン
禅と武士の古都、鎌倉。シーズンを問わずインバウンドの波に呑まれ、寂を求めるには忙しすぎる。そこへいくと「鎌倉山」はいい。山々や里が霞のような櫻色に染まる桜のシーズン以外は落ち着いて過ごせる。
“山”といっても標高僅か100メートルほどの丘陵地。昭和3年に日本で最初の分譲住宅地(別荘地)として開発販売されたときから、付近を“鎌倉山”と称するようになったのだそう。当時は今以上のステータスがあって、時の首相や横綱、歌舞伎役者、女優などが移り住み、昭和8年には帝国ホテルが運営する交詢閣という社交場ができたほどだ。
鎌倉山ロータリーから常盤口交差点までの「鎌倉山さくら道」沿いは、旧別荘や邸宅、庭園を利用したレストランや料亭もあり、星つきレストランが点在するちょっとしたグルメスポットでもある。その一つが、日本料理『鎌倉山倶楽部』。昭和期に建てられた日本家屋の個室で懐石料理を愉しめる。ここのデザートのひとつに顔を出すのが、なんとプリン。プリンというデザートはシンプルで老若男女が愛する国民的スイーツだ。昨今はフレンチ、イタリアンからステーキハウス、回転ずし、焼肉店などさまざまな飲食店でデザートとして供される。
『鎌倉山倶楽部』は日本料理店だがパティシエがいる。シェフパティシエを務める石田時光氏の経歴はユニークだ。実家は平塚市の時宗寺院。幼少時から「食」に興味があったという彼は、信州大学農学部食料生産科学科を卒業後、その地信州の名店『菓匠Shimizu』の門をたたきパティシエとして6年を過ごすと、京都祇園の老舗割烹『浜作』で5年の板前修業をする。そんな彼は当然のように「食材」「生産者」に興味をもち、『鎌倉山倶楽部』のシェフパティシエに就任し、後に完成したのがこの「鎌倉山ぷりん」だ。
『鎌倉山倶楽部』のカフェでもありパティスリーでもある『tea salon鎌倉山倶楽部』で販売している。鎌倉の名所を描いた千代紙で着飾った、「鎌倉山ぷりん」と箔押しされた瓶におさまる。完全手づくり故、一日60個しかつくられない、いわゆる「なめらかプリン」だ。
プリンといえば、「卵」と「牛乳」が命。敢えてバニラなどの香料を添加せず、砂糖も主張しない「グラニュー糖」だけでつくられる。鳥取県大江ノ里自然牧場の、自家製自然素材飼料による、放し飼い鶏の産まれたて朝採り直送「天美卵」に、岩手産生乳を66度・30分の連続式低温殺菌製法ですぐにパック詰めする低温殺菌牛乳を使用。北海道産の生クリームも使い、シンプルにきれいにすっきりと食べさせる。素材にこだわるが、何かが突出した味わいではなく、甘すぎずくど過ぎず、それなのにしっかり深みある味わいをもたらしている。濃厚ではない、奥行きあるおいしさといったらいいのかな?
別容器で付いてくるカラメルソースはビターながら甘さは控えめで、これもあえて個性は抑えている。自分の好みでいえば、プリンそのものの完成度が非常に高いので、そのままで味わいたい。
鎌倉みやげに立ち寄っても良いが、オンラインショッピングも可能。店内で食べるときには、石田時光氏の実家の本堂脇の湧水を使ってサイフォンで淹れるコーヒーとセットで味わってほしい。浄化されるような時間を過ごせました。ちなみに、『tea salon鎌倉山倶楽部』ではランチメニューがあり、なかでも「京風ランチ」がおすすめ。出汁のきいた祇園の老舗割烹仕込みの一品が食べられるのだから!
あっ、鎌倉山ぷりんを購入する際は、事前に連絡して、取り置きしてもらうのがおすすめです。美味しいプリンを欲したら、“いざ鎌倉山ぷりん”!
※掲載情報は 2017/11/21 時点のものとなります。
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キュレーター情報
グルメプロデューサー、グルメブロガー
スイーツ番長
強面のルックスとスイーツのギャップ、そのライフスタイル、そして見識の深さ、個性的な文体と美しい写真による独自のスイーツ評が耳目を集め、テレビ、ラジオ、新聞雑誌、WEBコンテンツ、ソーシャルメディアなどでも活躍するほか、スイーツ&グルメなどのプロデュース、催事、イベント等も精力的に展開する傍ら、テレビコマーシャルなどにも出演。世界最大級の女子会と呼ばれる日本女子博覧会グルメ&スイーツプロデューサーに就任し博覧会イベントなどを積極的に展開している。
著書に「男のパフェ」(日本出版社)、「スイーツ番長の至高の10大スイーツ」(東京書籍)、「手みやげスイーツ100選」(東京地図出版)。TSUTAYA.com eBOOKs「ガチで美味しいパンケーキBest34 首都圏版」では自ら電子書籍の編集人も負う。
フードキュレーター協会代表、2014年にグルメブログのインフルエンサーユニット「たべあるキング」を旗揚げし主宰を務める。