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緻密でしなやかな、カベルネ・ソーヴィニヨンの進化形
秋が深まるにつれ、重厚感あふれるカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワインが飲みたくなるのは、私だけではないはず。今回紹介するのは、ナパ・ヴァレーにてフランシス・フォード・コッポラ監督が擁する『イングルヌック』(当時はニーバム ・ コッポラ)にて研鑽を積み、独立された日本人醸造家、林泰久氏による初ヴィンテージワイン「PAULOWNIA」です。
先日のお披露目会では、フラッグシップはじめ、セカンドとロゼを試飲させていただきましたが、30ケースしか生産していないロゼワインは、一瞬にして在庫切れになってしまったという希少アイテム。カベルネ・ソーヴィニヨン100%で造られ、マロラクティック発酵を行わないため、緻密な果実味と凛とした酸が美しく際立っています。カジュアルなシーンにオススメというセカンドラベルも驚くほどクオリティが高く、それでいて幅広い料理に寄り添いそうな、フレンドリーさを感じさせてくれる優れもの。
そしてフラッグシップのパウロニアは……味わい深さとすさまじい熟成ポテンシャルを感じさせる、群を抜いたスケール感。イングルヌック時代の師、シャトー・マルゴー出身のフランス人醸造家フィリップ・バスコール氏の影響を受けたという林さんの醸すワインは、カリフォルニアらしい華やかな果実味の中に、メドックの哲学を思わせる複雑味とエレガントさが感じられ、カベルネ・ソーヴィニヨン100%とは思えない緻密さとしなやかさに溢れています。林さんの温和なお人柄もワインの味わいに反映されているのかも……とお話をうかがいながら、しみじみ実感したのでした。
カベルネ・ソーヴィニヨンの新しい一面を垣間見ることができる、日本人魂が詰まった「PAULOWNIA」。大切なお客様へのギフトとしてもおすすめしたい、逸品です。
※掲載情報は 2017/09/26 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ワイン研究家 株式会社食レコ 代表取締役
瀬川あずさ
聖心女子大学卒業後、施工会社の秘書を務め、多くの飲食店のリーシングや施工業務に携わる。その後、趣味が高じてワインエキスパート、日本酒利酒師の資格を取得。記者・ライター業、飲食コンサルティング業、ワイン講師など食やワインにまつわる仕事に精を出す。2014年、食に特化したリレーションサービスを提供する 株式会社食レコの代表取締役に就任。ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」新宿校の主幹講師も務め、食やワインを通じた豊かなライフスタイルを発信している。