わが家でフレンチレストラン料理が堪能できる9種のテリーヌ

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代官山のフレンチ人気店が作るテリーヌ

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記憶の糸をたどり、フランス料理の自分にとっての原点のイメージは何だろうかと考えた。季節は12月の寒い夜で、場所は西麻布の路地裏に、ほのかな灯りが見える一軒家のビストロ。40年以上前の思い出で記憶があまり定かではないが、その頃就職したデザイン事務所が西麻布の交差点近くにあったが、西麻布というよりは「霞町交差点」の方が通じる時代で、今の六本木ヒルズの手前だって「材木町」とまだ、呼ぶ人もいたのだ。ボスともうひとりのデザイナーにアシスタントの私という小さな事務所だった。その先輩デザイナーが事務所を辞めるというので、送別会に男3人がビストロでテーブルを囲んだのだった。明日から、自分一人がアシスタントとして残る心細さと、他の客もいなくて師走の寒さもあり気鬱な思いだった。ましてや、ビストロ料理など1度も食べたことがなく、はじめてのフランス料理体験だった。オードブルで“パテ・ド・カンパーニュ”というのが出て来たが、当然生まれてはじめて食べる味だった。細かく刻んだ肉類がパイ生地で包まれていて、その後この田舎風のパテがあると必ず注文するようになり、お気に入り(何とかのひとつ覚えとも言うが)になったのだ。それから、幾星霜、齢(よわい)を重ねフランス料理とはどのくらい遭遇したのだろうか。人の嗜好はさほど変わってはいないのではないだろうか。いまだに、パテ・ド・カンパーニュがメニューにあれば、真っ先にオーダするのだ。以前はパテとテリーヌは歴然と違っていたが、パイ生地で包まないパテやテリーヌ型で抜かないテリーヌと、その区別や定義が、どうもあいまいになってきているようだ。パイ生地で包むのはパテ・アンクルートと呼ぶが、パテもパイ生地ではなく、キャベツなどで包んだものでもパテと呼び、テリーヌもテリーヌ型を使わずに葉野菜などで、仕上げたものもテリーヌと呼ぶようになり、テリーヌ型自体も長方形だけでなく、さまざまな形のものも出現している。

 

 東京・代官山のフレンチレストラン「レザンファン ギャテ」は、ミシュランガイドで10年連続☆を獲得しているが、ここのテリーヌは群を抜いて高い評価を得ているのである。店名の「レザンファン ギャテ」は我儘(わがまま)に育った子供たち」という意味で、オーナーの藤井由美さんが、細部までこだわったアール・デコとミッド・センチュリー・モダンと融合した大人のためのレストランなのだ。藤井由美さんは不二家創業一族で、「ペコちゃん」のキャラクターのモデルだったという話も聞いたことがある。そして、ここでのスペシャリテは華麗なテリーヌ。通年つくられている定番テリーヌと季節替わりのテリーヌ‥…。常にお店に用意されている9種のテリーヌから、前菜を選ぶことができるのだが、中には最初から最後まですべてテリーヌで通すお客様も多いそうだ。ここでの一切れのテリーヌはそれぞれ、ソースも添えられ、盛りつけも凝っていて一品料理の趣だ。オーナーの藤井さんは、「テリーヌはフランス料理のエスプリを閉じこめた小宇宙」と、徹底的に味にこだわり、そのテリーヌが見せる断面の美しさは溜め息が漏れるほどだ。

  

 この「レザンファン ギャテ」のテリーヌが自宅でも食べられるのだ。「レザンファン ギャテ」の取り寄せ専門の工房「ラ ボンヌ テリーヌ」から、冷凍の9種のお惣菜「プティ・テリーヌコレクション」が届いた。冷凍されているので冷蔵庫の中でゆっくり4時間ほど解凍し、中を開けると9つに仕切られた通常のレザンファン ギャテのテリーヌよりぐっと小さめな直径40ミリサイズの9つのテリーヌが入っているのだが、この大きさならいっぺんに食べきりできるのだ。9種の「プティ・テリーヌコレクション」の中身は、フレンチの定番メニューの“田舎風テリーヌ”、ペルノーたっぷりのサフラン入り魚介ソースの“テリーヌ・ブイヤベース”だが、ブイヤベースのテリーヌは初めて食べる味でこれは添えられているソースをかけて食べるのだ。ハムとパセリのテリーヌ“ジャンボン・ペルシェ”に“魚介のリエット、オレンジ風味”! ちょっとリエットの説明もしなくては、パテ、テリーヌ同様リエットもこのグループに属し、乱暴な言い方をすれば、リエットを固めるとパテやテリーヌに変身するのだ、これはバゲットがいくらでも食べたくなる味なのだ。ほろほろ鳥を使った“ほろほろ鳥とフォアグラ、レンズ豆のテリーヌ”次から次へとフランス料理の宝石箱を開けている様な感覚なのだ。さらに、“トウモロコシと枝豆のテリーヌ”、“鶏肉と豚足のテリーヌ”に“スモークサーモンと香草入りクリームチーズのテリーヌ”と、最後のもうひとつ“プレミア田舎風テリーヌ”。

 

 

 テリーヌをワインとバゲットで、堪能し満足し、わが家にフランスレストランが引っ越してきたようなちょっと贅沢な晩餐だった。

 

わが家でフレンチレストラン料理が堪能できる9種のテリーヌ
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ラ ボンヌ テリーヌ工房

※掲載情報は 2017/09/22 時点のものとなります。

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後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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