よしる
ヤマサ商事
魚貝類と塩でつくる発酵食品・魚醤と言えば、「しょっつる、いしる、ナンプラー、ニョクマム」など、日本をはじめとする「アジア地域の調味料」とイメージをしがちですが、最も古いものの一つは、古代ローマに存在していました。
その名はgarum(ガルム)。『アピシウス料理大全』に登場しています。魚の内臓と甲殻類に塩を加えて作るガルム、最高級のものはかなり高価な値段で取り扱われていたようです。
魚のたんぱく質、発酵によるアミノ酸、グルタミン酸、そしてミネラル、ビタミン類の宝庫であり、味も栄養も充実した調味料ガルムは、数々の料理とデザートの美味しさを生むためだけでなく、なんとワインや水と割って飲んだり、薬や、化粧品として塗布しても使っていたりしていたと記述があるのです。
今回は幅広い力量を持つこの魚醤のうち、日本の能登に古くから伝わる「よしる」を紹介します。漢字では「魚汁」と書きます。
「よしる」の材料は鰯と塩だけのシンプルなもの。能登沖で獲れた鰯に塩を加え18か月発酵熟成させ、加熱、濾過して作る逸品です。
私と「よしる」との出会いは、もう5年以上前のこと。サロンに通う生徒さんに頂いた1本でした。
魚醤は、一般的には香りが強いものが多く、好き嫌いが分かれるところですが、「よしる」は鰯だけで作られているため、香りは優しくマイルドです。何に使ってもおいしいと言われる通り、例えば刺身醤油代わりに使ってもOKです。しかし、醤油より塩分が強いため、我が家ではもっぱら隠し味として使っています。
うどん、蕎麦汁の味付けに加えたり、お好み焼きの生地にほんの少し垂らしたり、煮物の味を決めるのに最後に少し加えたりしています。
野菜天ぷらをのせた卵とじうどん 汁の味の決め手は「よしる」(振り掛けた黒い粉は前回ご紹介した「黒七味」)
長尾典子オリジナル折敷にのせて
特に魚介類を使った料理にはよく合います。料理の味が締まり、深まり、コクが出ます。
朝ご飯の一枚。写真左上の煮物と右下の鯛のアラ潮汁にも「よしる」
豆腐裏ごしに野菜を加え、ワンタン皮で包んだオリジナル飛竜頭の餡かけ汁にも「よしる」を加えて長尾典子オリジナル舟形漆器と折敷でおもてなし
特におでん(関西では関東煮(かんとうだき)と呼ぶ方が親しみ深い)に加えるととてもおいしくなり、一番好きな使い方です。
また、冷蔵庫のありもので作る、和風チャーハンの隠し味にも欠かせません。あり合わせの材料で作ったとは思えないほどおいしく出来上がります。
つまり、もうひと味深みがほしい時には、必須の“お助けの一本“といえます。
カレールーを使わず野菜たっぷりでつくる、ローカロリーなシーフードカレーの隠し味は「よしる」
大豆からつくる醤油と比べると、糖質が少なく、糖の摂取が気になる方にも嬉しい「よしる」。
塩分は多めですが、ほんの少しで味とうま味が出るため、塩分を摂りすぎることもないでしょう。毎日気軽に使えますよ。
毎日のおかずがグンと美味しくなる、秘密にしておきたい隠し味の調味料「よしる」。
逸品だから、ここでそっと紹介します。
ヤマサ商事の「よしる」は、ネット販売が最も便利ですが、金沢では、近江町市場、大和デパート地下食品売り場で求められます。お値段はまちまちのようですから、事前にチェックしてお求めください。
1本500mlボトルですが、日持ちするので、お口に合えば何本かまとめて購入するのも一案ですよ。
住所:石川県鳳珠郡能登町小木21-173
TEL:0768-74-0455
ヤマサ商事
※掲載情報は 2017/06/28 時点のものとなります。
ライフスタイルデザイナー
長尾典子
日本伝統の知恵と美を取り入れた現代の食と暮らし方”Nippon Stylish Life”を提唱。
西宮市内のサロンと各地で、テーブルコーディネート・料理・英語・食文化をテーマに幅広く活動中。
季節開催「Japan Cool Seminar in Tokyo」では伝統美味食をテーマに、レストラン・料亭を会場に、その日だけのオリジナル料理を味わい学ぶ講座。
旅館・ホテルの食空間提案、英語による和食文化、テーブルコーディネートセミナー、オリジナル食器デザイン販売も手掛ける。
著書『12か月のLifestyle Book 食卓からしあわせは始まる』エピック
『和食の力に魅せられて 伝統美味食の世界』エピック
食卓文化研究家、食空間コーディネート資格認定講師、卓育インストラクター、カラーコーディネーター、英語講師。
食空間コーディネート協会理事
京都文教短期大学、大阪夕陽丘短期大学非常勤講師。
奈良女子大大学院生活環境修士。現在、現在、龍谷大学博士後期課程。
mail:nagao@a-de-v.com