スパイス料理の扉を開く、新鮮スパイスのカレーキット

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1回使い切りでフレッシュなスパイスから作るカレーを楽しもう

「男の料理」として取り上げられるトップがカレーライスだ。また、女性でスパイス料理に興味を持つ人も増えているという。日曜の午後、買い出しに行って、こだわり抜いて買ってきた材料の数々。美味しいお肉を吟味して、市販の固形カレールウを使いつつも隠し味に自分だけの秘密の材料を入れて、自慢の技を使って。丁寧に時間をかけて自分で作ったカレーライスの価値というものは計り知れないものだ。

 

そんなサンデーシェフの次のステージが、市販固形ルウなどを使わない、本格的なスパイスカレーだろう。これがなかなか大変だ。何しろ右も左も分からない。スパイスを買い集めようにもどこから手をつけていいのやら。そんな時に採用すべきガイドを見つけた。そのガイドはカレーキットだ。名前は「AIR SPICE」。

スパイス料理の扉を開く、新鮮スパイスのカレーキット

東京カリ〜番長の名前を聞いたことがあるだろうか。その創立メンバーでもありカレー食文化の研究家として活躍する水野仁輔さんが手掛けるスパイスでカレーを手軽に作るキットだ。しかしこの「AIR SPICE」、そんな簡単な言葉で済ませるのは惜しい、良質、かつその裏側に込められたメッセージが伝わるものなのである。

 

「AIR SPICE」はカレーで困っている人のための福音だ。多くの人の悩み「どのスパイスを揃えたらいいのかわからない、使い方がわからない、買ったスパイスが余ってしまう、手に入りづらいものが多数ある」、まだまだあろう。スパイスの鮮度という問題もある。それを一括で解決しようという思いが根底にある。

 

「AIR SPICE」は雑誌の通販と同じで1号のみ購入、購読で3ヶ月、6ヶ月、1年コースなどが選べ、月替わりのカレーキットが届くのだ。これはちょっと楽しい。もちろん0号「基本のチキンカレー」は単品販売もある。0号以外も単品販売があったようだが人気なのであろう、どれも売り切れていた。

 

今回取り上げた0号という名の「基本のチキンカレー」、先日行われたイベント「LOVE INDIA 2017」にて購入してきた。楽しみにとっておいたこのキットを作ってみよう。

 

パッケージが大変に洒落ている。これが毎月届くのは楽しいだろうな、と想像ができる。ブラウンの素朴な色のパッケージを開くと中はサックスブルー、なんと洒落ていることか。いちいち楽しくなる。キットの内容はふた袋のスパイスのみだ。それと、リーフレット。スパイスの片方の袋はホールスパイス。種や実などの粉砕していないスパイス達。じっくり観察するのもそれぞれを嗅いでみるのも楽しい。もうひと袋はパウダースパイスのミックス。一見するとカレー粉だ。これも匂いを嗅いでみよう。あなたの知っているカレー粉とは違う香りがするはずだ。毎月レシピに合わせて調合がなされ、インドでのパッケージングののち日本に送られてくる良質で新鮮なスパイスの香りだ。

スパイス料理の扉を開く、新鮮スパイスのカレーキット

さて、リーフレット。これも美しい写真が載った洒落たデザインで、表題に「AIR SPICE JOURNAL」とある。スパイスを楽しむジャーナル、というサブタイトルにわくわくする。水野仁輔さんがこの「「AIR SPICE 」に対する思いとスパイスを楽しむ生活を提案する文章が載っている。裏に返すとレシピと調理のコツが書いてある。

 

さて、カレーを作ってみよう。材料はリーフレットの中に書いてある。近くの店で鶏肉とヨーグルトを入手。塩、ニンニク、しょうがなどはキッチンにあるものを使った。 「AIR SPICE」のパッケージの中には近所で買えるもの以外、つまり探す、集めるのが大変で、 購入量の調整も難しい「スパイス」のみを集めてある。なるほど、ことごとくスパイスカレーを作るときの問題を解決しているというわけだ。

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調理はリーフレットを読めば実に簡単だ。包丁仕事は鶏肉、タマネギのスライスだけ。あとは用意した材料をレシピのアドバイスに従って鍋に放り込み、炒めていくだけ。YouTubeで動画での調理解説もある。

 

リーフレットで水野仁輔さんは大事なことを言っている。カレーは煮込み料理ではない、ということ。ただ鍋にいろいろ入れてグツグツとやっていくのではない。その前に「炒める」工程が出てくる。これが大事なのだ。

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油を鍋に敷いて熱し、そこにひと袋目のホールスパイスの方を入れる。徐々に香りが立って、色が変わるのを見るのは楽しいものだ。それを見て、自分の経験にする。そのことがとても楽しい。

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あらかじめ刻んでおいたタマネギをスパイスの香りが上がる鍋に入れて炒めてゆく。その過程、レシピに載っている小さなアドバイスがとても的確で面白い。タマネギを炒める過程で「木べらで鍋底をこすった時に鍋底がしっかり見えるくらいまで炒めれば水分が飛んでいる証拠」という表現。とてもわかりやすい。実験と実践を長く続けてきた水野さんらしい表現だ。

 

そうやってレシピにそってカレーを仕上げていく。あまり料理をしない人がつまずきそうなのが、分量外、レシピ外の調整だろうか。例えば今回、レシピには香菜(パクチー)と生クリームを使うよう指示があるが、括弧付きで(あれば)とある。まずはレシピ通りに作るのがいいだろう。しかしあくまで「あれば」なのだ。鶏肉の下準備でもあらかじめ下ごしらえで塩こしょうをしておくとより味わい深くなります、とある。これも任意なのだ。「任意」には経験のない初心者はついうろうろとしてしまう。

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私はよく思うのだが、レシピはあくまでガイドである、ということ。柱として絶対と考えるのもいいが、枝葉まで寸部違わず、というのは家庭料理においてはナンセンスであろう。レシピを自分の舌に引き寄せるのだ。まず初めはレシピに忠実に、その次の段階で自分で決めた忠実の範囲をはみ出ぬ程度に自分で味の微調整をする。面白いはずだ。わたしだったら別の具材をいろいろ入れるのはNG、チリパウダーを少し追加、塩を少なめ、トマトピューレをあと 1 さじ、などはわたしの感覚だと範囲だと感じる。

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さて、完成したものがこれ。大変に香り高い美味しそうな匂いがキッチンに溢れる。幸せな気分だ。ごはんを用意して盛り付けよう。

 

ひと口。うん、これは美味しい。

 

辛さのバランスがいい。普通の人だとちょい辛めだろうか。このキャラクターのカレーにはこの辛さ、というものが確実にあると思っている。それを楽しもう。辛さを調整するのではなく、この料理はこういう辛さなのか、という楽しみ方だ。

 

普段あまり使わないメースが入っていた。油で熱した時に強く香りが立ったがこれがうまく引っ込む。シナモンは思うより強くないな、と感じた。いや、強いのだがメースも含め他のスパイスとのバランスで頭の高さが揃えられる。それでシナモンの存在感ある大きさから思うより強くないと感じるのだろう。クミンはホールで、たまに噛むと香りがふっと前に出てきてこれも楽しい。そういう香りの底でタマネギの甘みが舌を刺激する。食べすすめていくと料理の温度が下がってくる、すると香りの雰囲気が変わってくる。スパイス料理というのはなんと楽しいものだろうか。

 

フレッシュなスパイス使いきりでうまいカレーを作る。うまいカレーは鮮度高いスパイスが大事、を体現したキット。ごはんが多めに欲しくなる旨味と刺激。これはいいものだ。

 

自分で手を動かした、という実感とともに、このスパイスの組み合わせで引き出される香りや味わいに唸る。いったいこれはどうしてこうなるのだろう。あのスパイスの組み合わせにはどんな秘密が隠されているのだろう。そう思ったあなたはもはや水野仁輔さんの手のひらの上、術中にはまっている。彼がにこにこと笑っている姿が見える。

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さあ、もうあなたは次のカレーのことを考えているのではないか。街に飛び出してインドレストランを探すのもいい。書店で水野仁輔さんのレシピブックを探すのもいいだろう。その前に「AIR SPICE」の次号がどんなカレーなのか、確認してみよう。それを注文してから街に出ても遅くはない。

 

AIR SPICE TV

https://www.youtube.com/channel/UCFgZYMvk59q3nkwwuiJQASQ

※掲載情報は 2017/06/21 時点のものとなります。

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キュレーター情報

飯塚敦

カレーライター・ビデオブロガー

飯塚敦

食、カレー全般とアジア料理等の取材執筆、デジタルガジェットの取材執筆等を行う。カレーをテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」が10年目で総記事数約4000、実食カレー記事と実食動画を中心とした食と人にフォーカスする構成で読者の信頼を得る。インドの調理器具タンドールの取材で09年秋渡印。その折iPhone3GSを購入、インドにてビデオ撮影と編集に開眼、「iPhone x Movieスタイル」(技術評論社 11年1月刊)を著す。翌年、台湾翻訳版も刊行。「エキサイティングマックス!」(ぶんか社 月刊誌)にてカレー店探訪コラム「それでもカレーは食べ物である」連載中。14年9月末に連載30回を迎える。他「フィガロジャポン」「東京ウォーカー」「Hanako FOR MEN」やカレーのムック等で食、カレー関係記事の執筆。外食食べ歩きのプロフェッショナルチーム「たべあるキング」所属。「ツーリズムEXPOジャパン」にてインドカレー味グルメポップコーン監修。定期トークライブ「印度百景」(阿佐ヶ谷ロフトA)共同主催。スリランカコロンボでの和食レストラン事業部立ち上げの指導など多方面で活躍。

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