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味付けは3種類
スペインの居酒屋兼カフェ「バル」に行くと、缶詰の中身をバゲットに乗せただけのおつまみを出すところがたくさんある。ツナやオイルサーディン、柔らかく煮たパプリカなどの缶詰をパカッと開け、バゲットに乗せてEVオリーブ油をさっとかけるのだ。
その光景を見たときに、僕は本当に羨ましかった。
「ああ、スペインでは缶詰文化が奥深いな」
この思いであります。
今回紹介したいのは、そんなバル料理の再現にぴったりの缶詰。その名も「缶ティパスト イベリコ豚のマリネシリーズ」だ。
味付けは「イベリコ豚とひよこ豆の白ワインソース」「イベリコ豚とオリーブのオレンジソース」「イベリコ豚と白インゲンのトマトソース」の3種類がある。
造り手の誠実さ
代表して「イベリコ豚とオリーブのオレンジソース」を開缶。
ひと口大にカットしたイベリコ豚には、一見していいサシが入っているのが判る。オリーブもハリがあっていい缶じ。小さなオレンジ色の粒はにんじんであります。
原料のイベリコ豚は、基本的には「ベジョータ」という最高ランクのものが使われている。イベリコ豚は「ドングリを食べて育ったスペイン原産の豚」、という認識が多いけれど、それは誤りである。イベリコ豚にもランクがあって、例えば最下位のものはドングリは食べず、穀物などの飼料で育つのだ。それに対してベジョータは、60日以上の放牧期間にドングリや草など自然の産物を食べて育っており、その数量はイベリコ豚生産量の10％以下とも言われている。
そのベジョータを使っているのだから、この缶詰はとても贅沢な缶詰ということ。しかしその誇るべき情報を、缶には記載していないのだ。なぜか？
現段階では最高の原料を使っているが、今後長期に亘って製造していくとなると、様々な要因でベジョータ以外のイベリコ豚を使う可能性もある。だからランクは書かずに「イベリコ豚」という総称を書いているのだ。
正確性を重んじて最低限の表記だけにとどめる。しかし実際に使う原料は、その時に調達できる最高のものを使う。缶詰とはいえ、造り手の誠実さが現れていると思う。
イベリコ豚のうまみがよく判る
かくのごとし。
手前の「イベリコ豚とオリーブのオレンジソース」は、オレンジ果汁の甘酸っぱさが心地好い。オリーブもジューシーだ。
左側の「イベリコ豚と白インゲンのトマトソース」は、トマトソースの酸味が特徴的。そのソースが染み込んだ白インゲンもねっとりとしてとても美味しい。
右奥の「イベリコ豚とひよこ豆の白ワインソース」は、ほのかな甘さが素晴らしい。シンプルな味付けなので、イベリコ豚を噛んだときににじみ出る脂身の美味しさがよくわかる。
ほかに野菜を添えれば、それだけで立派な酒肴であります。ここではルッコラを使ったが、ピリッとしたルッコラの風味がよくマッチしたと思う。
お値段は参考価格でそれぞれ税込650円。まだ発売して間もないが、一部大手デパートなどで扱いが始まったところだ。
ごちそうさま！
※著者注 下記公式サイトに「イベリコ豚のマリネシリーズ」はまだ掲載されていませんが、販売は三越伊勢丹などで行われています。
※掲載情報は 2017/05/26 時点のものとなります。
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キュレーター情報
缶詰博士
黒川勇人
昭和41年福島県生まれ。平成16年から世界の缶詰を紹介する『缶詰blog』を執筆。缶詰に精通していることから"缶詰博士"と呼ばれ、TVやラジオ、新聞など各種メディアで活躍中。国内外の缶詰メーカーを訪れ、開発に至る経緯や、製造に対する現場の“思い”まで取材するのが特徴。そのため独自の視点から缶詰の魅力を引き出し、紹介している。
著書は『おつまみ缶詰酒場』（アスキー新書）、『缶詰博士・黒川勇人の缶詰本』（タツミムック）、『缶づめ寿司』（ビーナイス）、『日本全国ローカル缶詰 驚きの逸品36』（講談社プラスアルファ新書）『缶詰博士が選ぶ！「レジェンド缶詰」究極の逸品36』（講談社プラスアルファ新書）、『安い！早い！だけどとてつもなく旨い！ 缶たん料理100』（講談社）など。小曽根マネージメントプロ所属。
お問い合わせ Mail:k-k@kosone-mp.com
