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銀座4丁目の交差点近くに宝飾店で有名なミキモトビルがあります。その地階に日本を代表するフランス料理のグランメゾン「銀座レカン」もあります。約2年間ビルの新築のためにお休みしていましたが、6月1日にリニューアルオープンすることになりました。
銀座レカンの総料理長の高良康之さんとご縁があって、フランス料理の本を作ることになり、2月に早朝7時から撮影で通うこと8 回。銀座レカンが建築中のために、グループの系列レストランで同じ銀座(三原橋)のロテスリーレカンで撮影をしていました。ロテスリーレカンは昼営業があるので、厨房での撮影は午前中までで、午後からは地下にあるブーランジェリーレカンの厨房での撮影になったのです。この地下の厨房はレカングループのパン工房で、フランス産小麦粉とブルターニュ地方の塩を使用し、香りの高い銀座レカン定番のバゲット トラディショネルやバゲット コティディエンを焼いているのです。他にもパン ド カンパーニュ、カカオニブとクルミを練りこんだ酸味が強めのカカオニブ・ノア に山型食パンのパン ド ミ ファリーヌ コンプレ 、パン ド ミ など沢山のパンやサンドイッチとケーキ類も作っているのです。このパン工房では、他のレストランのパンも作っていて、銀座の肉の聖地ともいわれる「マルディグラ」はこのブーランジェリーレカンに特注の巨大なパンを頼んで焼いてもらっているのです。マルディグラで一度切る前の焼き上げのパンを見させていただきましたが、一抱えもある相当重量のあるパンで、肉料理によく合うパンだと思います。レストランで料理の出て来るまでに、パンをお替わりまでして食べ過ぎてお腹が一杯になってしまったことはどなたも経験があるのでは。日本人的な感覚なら、お米は主食で、パンは……。
いまさらですが、レストランで出て来るパンって何でしょうか。まず、テーブルに何も言わずに出て来るパンなら、普通は無料(サービス料金に入る)だと思います。メニューに、パンが別に掲載され料金がかかる場合があります。ただ、この場合は頼まないとパンは出てきません。サービス料とは別に、チャージ料やイタリアンならコペルト(席料)が派生するレストランもあります。レストランで提供される水がありますが、普通の水(水道水)なら無料で、特別ミネラルウォーターを頼むと別料金がかかるには当たり前ですが、パンの料金は判りにくいですね。フランス料理店で、わりとクラシックなら、パンとバターはセットでついてきて、高級店になれば、パンも最初のパンと次のパンは違うものが出てくる場合もあります。また、最初に籠に幾種類ものパンがあり、自分で選べる店もあり、本当にそのレストランがパンをどう考えているかがよく判ります。イタリア料理では、パンはグリシーニやフォカッチャなどが最初に出て来て、日本料理でいう“お凌ぎ”に近い感覚です。料理の出てくる前に、空腹を癒す簡単な食べ物で,前菜とは違います。この後にパンが出てこないのはイタリア料理のプリモピァツト(第1の皿)がパスタやリゾットなので、小麦粉のパンは出てきませんね。逆にフランス料理ではパンはソースをぬぐったりして食べますが(本当はマナー的には良くないが)、パンは最後まで卓上にあります。
ブーランジェリーレカンで朝食用にサクサクした味わいのクロワッサンと同じ生地で、フランス産のチョコレートを包み焼き上げたチョコレート入りのパン オ ショコラを買いました。実は私は逆流食道炎で、大量に作られている市販のパンに含まれている“イーストフード”が要因でパンを食べると具合が悪くなるのです。しかし、ブーランジェリーレカンのパンはそのような物がなく、食べ後でもすっきりしているので、安心して食べることが出来ます。美味しいだけではないグランメゾンのパンは素晴らしいですね。
※掲載情報は 2017/05/19 時点のものとなります。
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キュレーター情報
アートディレクター・食文化研究家
後藤晴彦(お手伝いハルコ)
後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。