いわしの丸干しが旅に出た。オイル漬けが世界旅行

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うるめいわしの丸干しをオイルとスパイスで楽しむ瓶詰めギフト

ちょっと気の利いたプレゼントを探していた。差し上げる相手は年上の料理自慢の男性で、ちょっとしたお礼のプレゼントを差し上げたい機会があった。いろいろ考えるのだがこれがなかなか難しい。食通で料理も上手にこなす男、生半可なものでは通用しない。ふと思い出したのは2年ほど前のスーパーマーケットトレードショー。帰り際に立ち寄ったブースで出会いがあった。その名も「旅する丸干し」。

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一体何が入っているのだろう?と洒落たラベルの瓶を覗き込んでいるとそこの店主であろうか、若いシャキッとした男性が色々と説明をしてくれた。「下園薩男商店」は干物の会社。創業70年の伝統の味を守りながら、トレーサビリティーなどにもこだわり、安心と安全を旨に事業を進めているそうだ。元気が無くなっている干物業界の今を逆にチャンスと捉え、ブランディングや購買層の開拓を行なっている。伝統をそのままに未来も見据えているその姿勢は大変に好ましいものだった。

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ひと瓶、サンプルをいただいた。私が渡した名刺を眺めて、彼は「これをどうぞ」と選んでくれたのだ。それが「旅する丸干し マドラス風」だ。マドラス風とは洒落ている。カレー風味なのだがそこをマドラス風と称す。マドラスはインド、タミルナードゥ州チェンナイ、港町だ。マドラスの名はイギリス植民地時代に使われていたもの。現代日本人から見ると1600年代から1990年代末期まで使われたその名前はエキゾティックに感じる響きがある。丸干しのその味、忘れ難く美味しかった。そうだ、あれを彼に送ろう。そう考えて、彼の分と共にひと瓶、自分用にも取り寄せた。料理上手の彼ならばこれをただ食べるだけでなく、面白く使ってくれるのではなかろうか。

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その前に自分でもちょいと試してみることに。この瓶詰めはうるめいわしの丸干しのオイル漬けだ。オイルサーディンでもアンチョビでもない。オイルサーディンのような頼りない噛み応えではなく具材となった時の存在感を持っている。ちょいと固いと思う御仁もいるだろう。それはつまり噛んでいってこそ旨みに辿り着くということ。これをスパゲッティに仕立ててみるかとフライパンを取り出した。漬け込みオイルはスパイスの香りがほんのり香り強すぎずバランスがいい。

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ここはこのオイルを生かしてシンプルにペペロンチーノといこう。「旅する丸干し マドラス風」の封を切ってそのオイルをフライバンに回す。少し温めて香りが立ち始めたら鷹の爪を輪切りにして適量入れ、辛み香りがオイルに移ったらニンニクスライスも入れる。これは少なめの方が丸干しの良さが出るのではないか。うるめいわしは少し砕いてパスタに絡みやすいサイズにして入れる。瓶の中に入っている豆類が、これが味がしみておりえらい美味しいのだ。勿体無いが、ケチらず一緒に炒めよう。少し煙が上がり始める前に和えるように茹で上がったパスタをオイルに絡めていく。

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好みできのこソテーなども入れるといいだろう。塩を加える必要はなかった。さあ、出来上がり。フォークを口に運ぶとスパイスと干し魚の相乗効果で深く奥行きが出ているのが一口目にわかり、ニヤリとしてしまった。プロフェッショナル感ある仕上がりだ。これはいい。そのまま食べるとスパイシー、料理に使うとほんのり香るという使い出の良さがこの瓶詰めにはある。彼もきっとそこをすくい上げてうまいものを作るだろう。もちろんそのまま彼の好きな蒸留酒と一緒にやるのかもしれない。彼の感想が楽しみだ。

※掲載情報は 2017/02/28 時点のものとなります。

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キュレーター情報

飯塚敦

カレーライター・ビデオブロガー

飯塚敦

食、カレー全般とアジア料理等の取材執筆、デジタルガジェットの取材執筆等を行う。カレーをテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」が10年目で総記事数約4000、実食カレー記事と実食動画を中心とした食と人にフォーカスする構成で読者の信頼を得る。インドの調理器具タンドールの取材で09年秋渡印。その折iPhone3GSを購入、インドにてビデオ撮影と編集に開眼、「iPhone x Movieスタイル」(技術評論社 11年1月刊)を著す。翌年、台湾翻訳版も刊行。「エキサイティングマックス!」(ぶんか社 月刊誌)にてカレー店探訪コラム「それでもカレーは食べ物である」連載中。14年9月末に連載30回を迎える。他「フィガロジャポン」「東京ウォーカー」「Hanako FOR MEN」やカレーのムック等で食、カレー関係記事の執筆。外食食べ歩きのプロフェッショナルチーム「たべあるキング」所属。「ツーリズムEXPOジャパン」にてインドカレー味グルメポップコーン監修。定期トークライブ「印度百景」(阿佐ヶ谷ロフトA)共同主催。スリランカコロンボでの和食レストラン事業部立ち上げの指導など多方面で活躍。

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