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野菜の旨味をギュッと凝縮!「リュテニッツァ」作りから始まるブルガリアの冬支度
ブルガリアには日本と同じく四季がありますが、冬は氷点下10度を下回る日も続き、厳しい寒さが特徴です。冬の間は野菜不足になるため、野菜を使った保存食がブルガリアの冬の食卓に上ります。
中でも、ブルガリアの「おふくろの味」とも言えるのが、真っ赤なペーストの保存食「リュテニッツァ」。
鮮やかな色合いから、一見、トマトペーストと思いますが、この色の正体は・・・
真っ赤なパプリカなんです。ブルガリアのパプリカは一般的に大ぶりで濃厚な甘みが特徴です。リュテニッツァの旨味はまさにこのパプリカの味がベースとなっています。
パプリカの他にも、ニンジン、ナス、トマトなどが入っています。レシピによってはタマネギやニンニクなども入れます。
毎年、夏が終わると冬支度として、このリュテニッツァ作りが始まります。ポイントは、ずばり、主役であるパプリカの丁寧な下処理です。ペースト状にする前にパプリカを焼き、焦げた皮をきれいに落として、種が残らないように取り除いく作業を行います。少しでも皮や種が残っていると、食感が悪くなってしまいます。
材料をそれぞれすり潰し、ペースト状にして最後に混ぜ合わせます。調味料は基本的に塩、そして、ヒマワリオイルを加えます。見た目は辛そうに見えますが、まったく辛くはありません。
家庭によっては大量のリュテニッツァ作りのために、専用のすり潰す器械を持っているほどです。出来上がったリュテニッツァは煮沸消毒したビンに入れられ、冬の間、野菜の摂れる貴重な保存食として、大切に食べられます。
家庭で作るリュテニッツァ基本のレシピ
びん50個分
材料:パプリカ 20キロ
トマト 10キロ
ナス 5キロ
ニンジン 3キロ
パセリ 1束
ヒマワリオイル 500ml
塩 5~6大匙
砂糖 1大匙
1 パプリカの種を取り除いて、焼いてから皮を剥く
2 ナスは少し焼いて皮を取り除く
3 にんじんを茹でる。皮を取り除く。
4 トマト皮と種を取り除き加熱する。
5 1,2,3をペースト状にしてからトマトと混ぜる
6 少し水分が蒸発したら、ひまわりオイルをすこしずつ垂らしながら加える
7 塩と砂糖を入れて、少し煮込む(煮込む時間は1時間程度)
8 パセリを切って入れて、瓶詰めにする。
9 瓶を湯煎する(60分程度)
(ポイント)
瓶が割れないために、鍋の底に布を入れる。
水が沸騰したら、火を弱火にする(60分程度)
一番おいしいリュテニッツァはおばあちゃんのリュテニッツァ
リュテニッツァは肉団子やソーセージなど肉料理に添えたり、チーズと一緒に食べたりと用途も幅広く大活躍のペースト。
リュテニッツァの味を楽しむなら、シンプルにパンに塗って食べるのがおすすめ。たとえ冷蔵庫に何もなくてもリュテニッツァさえあれば、ご馳走です。
ブルガリアの人にとっては、欠かすことのできないリュテニッツァですが、もちろん、スーパーなどでも販売されています。種類も豊富で料理に合ったスパイスなどが入っているものもあります。
ただし、どんなに美味しいリュテニッツァが売られていても、「1番美味しいリュテニッツァは?」と質問すると、返ってくる答えは皆さん同じ、「おばあちゃんのリュテニッツァ」です。代々受け継いできた我が家の味が1番と、おすそ分けすることもあります。
ブルガリアの豊かな自然そのままに、野菜の旨味たっぷりのリュテニッツァ。一度食べたら、また、すぐに食べたくなる魔法のペーストです。
※掲載情報は 2016/12/07 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ブルガリア共和国大使館
ブルガリアはバルカン半島に位置し、北はルーマニア、西にセルビア、マケドニア共和国、南にギリシャ、トルコと隣接し、東には黒海があります。北海道より少し大きい国土で、首都はソフィアです。香水用のバラ栽培が世界最大産地ということでも有名です。ブルガリアの食でみなさんはヨーグルトを連想する人が多いと思いますが、さまざまな民族の食文化の影響、特にトルコ、ギリシャ、ルーマニア料理との共通点が多いです。また、良質なワインの産地としても有名です。