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ドイツは蒸留酒も盛ん
ドイツ人がよく飲むお酒といえば、ビールを思い浮かべる人がほとんどなのではないでしょうか?次にワインなど。しかし、それら以外のお酒もドイツではたくさん作られています。消化を促す食後に飲む蒸留酒も多くありますが、お菓子によく使われるキルシュは有名ですね。
穀類から作られるコルン(Korn)もあります。コルンはそれほど上品なお酒という位置づけはありませんでしたが、香り高く味わい深い、上質なシングルモルトにも匹敵するコルンを作る会社があります。ドイツ北西部、ノルトライン・ヴェストファーレン州のミュンスターラントという地域に、1707年に創業した蒸留酒メーカー、ザッセ社です。同社のコルンはヨーロッパの品評会でも高い評価を受けており、他にも様々な蒸留酒を作る家族経営の蒸留所です。
今回ご紹介するハーブリキュールは、ザッセ社が地元のベネディクト派修道院ゲルレーヴェと共同開発したものです。
修道院の知恵と伝統が詰まったリキュール
ヨーロッパの修道院では昔から自給自足が行われていました。修道僧たち自らの食糧の他、巡礼者に与える食糧なども作られていました。
お酒も同様で、ワインはキリストの血のシンボルとして礼拝などで使用され、ビールは「液体のパン」として断食中も飲むことを許された栄養源の一つでした。そしてリキュールは、中世の時代、薬酒として珍重され、学問や医学も発達していた修道院で作られるようになりました。様々なハーブ、スパイス、フルーツなどを使ったリキュールが生まれていったのです。
落ち着きという名のハーブリキュール
ゲルレーヴェ修道院は1899年に設立されましたが、このリキュールはおよそ500年前のベネディクト派修道僧が残したレシピに基づいて作られています。
ザッセ蒸留所、ゲルレーヴェ修道院、ミュンスター大学の3者の共同開発によるこのリキュールは、ゲルレヴァーというシリーズで3種類作られ、ニワトコ、カルダモン、ショウブ、メリッサ、ナツメグ、丁子、スミレの根、シナモン、レモンが配合されています。
そのうちの一つ、ゲラッセンハイト(Gelassenheit)は、心が平和でゆったりと静かに落ち着いている様子を意味する言葉です。
寒い冬の夜、暖かい部屋でこんなリキュールをゆったり味わってみてはいかがでしょうか?
※掲載情報は 2016/11/23 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ドイツ食品普及協会 代表
森本智子
ドイツ在住11年、日本帰国後はドイツ農産物振興会日本事務所にマーケティングマネージャーとして勤務。2010年同団体の解体を機に独立、株式会社エルフェンを立ち上げドイツ食品・飲料の輸入・販売サポート、展示会の出展サポート・コーディネート、ドイツの展示会、会社訪問のガイド・コーディネート、ドイツ食文化セミナーの開催、ドイツの食の情報発信に関わる活動を行っています。
株式会社エルフェン:http://elfen.jp/
一般向けのイベントではドイツ大使館主催「ドイツフェスティバル」の立ち上げ、運営メンバー。
日本ではただひとり、ドイツ ドゥーメンス・アカデミー認定ディプロム・ビアソムリエの資格を持つ。
なかなか日本では知られていないドイツのおいしい物をご紹介していきたいと思っています。
著作:フォトエッセイとイラストで楽しむ ちいさなカタコト*ドイツ語ノート 国際語学社
ドイツパン大全 誠文堂新光社
http://www.seibundo-shinkosha.net/products/detail.php?product_id=5380