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心と体をオフにしてワイングラスで飲みたい、高知・安芸の秋の酒
「高知の日本酒」と聞くと、どんなイメージだろうか。豪快で痛快。剛毅な漢たちが杯を交わし合うヘビーなお酒。土佐犬やカツオの一本釣りに、坂本龍馬の漢っぷり。そんな世界が浮かぶかもしれない。実際のお酒は、そこまで豪放磊落ではないけれど、キレがよく辛口、その中にしっかりと『飲んだ感』があるお酒というのが伝統的なスタイル。名前も土佐 酔鯨、司牡丹など、確かにちょっと漢っぽい。
今回紹介する『安芸虎（あきとら）』。これも、名前からしてなにやら勇猛な雰囲気。安芸といえば、阪神タイガースが秋季キャンプ、春のファームキャンプ地として訪れるという場所。太平洋を臨む温暖で大らかな風土。これもまた漢の世界か。しかし、こちらのお酒、実にやわらかい。そしてきれいで、さわやかで、飲んでいくと、軽やかに、じっくりと旨味がからみあう。かつおの一本釣りや坂本龍馬の世界の豪快なイメージは、そこにはない。
なぜだろう？安芸虎を造る有光酒造場を訪ねた。高知から、JR、土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」、一両編成の電車に揺られ、約1時間。太平洋を眺めながら赤野という駅で降りる。まず感じたのは、風がやわらかい、ということ。9月中旬のこの地、湿度は高かったが、どこかゆるやかなのだ。海に出れば広い太平洋。そこから吹く風もまたやわらかく、やさしい。東京にいて勝手に豪快だと思われていた黒潮は、むしろ、南国ならではのゆるやかな静かさだった。
有光酒造場の有光尚社長の案内で酒蔵見学。専門的な話はここでは書かないが、南国ならではの酒造りの苦労と喜び。明治からの伝統の蔵を使いながら、少しずつ新しい機器を導入し、南国の酒のよさを残しながら、今の時代にあった新しい南国の日本酒のスタイルを育んでいく。これもまた、海から吹く風を感じながら。
実は高知の酒蔵は、今までの端麗辛口の良さを生かしながらも、もともとの風土を生かしたやわらかく、旨味があり、爽やかにキレていく酒も造り始めているという。2000年以降、有光酒造場でも社長と、その跡を継いだ若い杜氏の間での激しい議論を経て、この流れの走りのひとつとなった。こだわりは強いけれど、有光社長の笑顔もやわらかく、やさしい。
中でも、安芸の秋のお楽しみは、ひやおろし。平仮名のあきとらとかわいらしい虎。そのジャケットのとおり、ゆるやかで軽やか。そしてふわっと広がっていく旨味。注ぐなら、うすはり、少しふっくらとしたワイングラスが気分。鰹のたたきは厚切りで、が高知での定番だけれど、このお酒ならイタリアン、白身魚のカルパッチョやグリル、ローストを軽めのクリームソース、鰹もあえての薄造りを、海のお塩とオリーブオイルで。気持ちをゆるめたい時間に、どうぞ。
※掲載情報は 2016/09/30 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ワインナビゲーター
岩瀬大二
MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
（https://magazine.vinetree.jp/）ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde（ヴェルデ）』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。
