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自家栽培ぶどうだけにこだわったワイン
「北海道のワインってこんなに美味しいんだ!」と感動したのが、2008年春に札幌のとあるレストランですすめられて飲んだ一本。
山﨑ワイナリー 2007ケルナー
ホワイトアスパラのコースにぴったりな、飲み口がすっきりシャープなキレのある辛口。ミネラル感がしっかり感じられ、柑橘系のさわやかな香りが印象的だった。
のちにこのワインが、世界的に有名なワイン評論家ロバート・パーカーから87点という高評価を受けていたことを知った時にはなるほどと頷けた。
あまりに感動して、食事をした翌週に空知の三笠市にあるワイナリーにひとり車を走らせた。
小高い丘の上にあるワイナリー施設に到着するまでの景色は、ぶどう畑が描く緑のグラデーションが一面に広がっていて、「ここは日本?北海道?」と思ってしまうくらいのヨーロッパの様な素敵な風景。
ワインの販売所では、山﨑家のお母様と娘さんのお二人がお客様をお迎えして、数種類のワインを試飲、説明してくださる。
私は車の運転があるので試飲をぐっと我慢して、例のケルナー、シャルドネ、そしてピノ・ノアールを手にして家路に着いた。
北海道で初めてピノ・ノアールを手がけたと言われている、元々は家業の農業に従事していた山﨑和幸さん。2001年に「山﨑ワイナリー」を設立し、妻の國子さん、東京農業大学応用生物醸造科卒の長男亮一さん、長女あかりさん、次男太地さんとほぼご家族のみで、自家栽培ぶどうだけにこだわったワインつくりをしている。
産炭地空知の炭坑が全て閉山して、「ブラックダイアモンド」として人々の生活の糧となっていた石炭発掘の産業がなくなり、人口流出、高齢化という問題がこの地を襲った。
しかしながら、和幸さんの一念発起とそれを支えるご家族の強い絆で結ばれた想いで、冷涼な北海道での栽培は無理だと言われていたピノ・ノアールという殆ど黒に近い、日にかざすと石炭のようにピカピカ光る空知の新しい「ブラックダイアモンド」を誕生させた。
山﨑ワイナリーのピノはベリーのアロマがふんわりと漂い、特有の酸味と果実味のバランスが絶妙で、あの土地でしか作る事のできない、まさに「空知テロワール」そのもの。
ワインのエチケットに咲く家族5人の指紋で形づくった一輪の花は山﨑家の結束と想いの象徴。
あの「ケルナー2007」が私と山﨑家との架け橋となり、年月をかけて映画『ぶどうのなみだ』の企画に発展することになったのは、運命としかいいようがない気がする。
先月リリースされた「ピノ・ノアール2014」は、映画の公開年のぶどう。
久しぶりに映画のDVDでも観ながらゆっくり味わうとしよう。
山﨑ワイナリー
住所:〒068-2163 北海道三笠市達布791-22
TEL:01267-4-4410
http://www.yamazaki-winery.co.jp
※掲載情報は 2016/09/08 時点のものとなります。
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キュレーター情報
クリエイティブオフィスキュー社長
鈴井亜由美
株式会社クリエイティブオフィスキュー代表取締役
株式会社Link&Loop代表取締役
北海道小樽市出身。1992年に芸能プロダクション「クリエイティブオフィス キュー」を設立。同事務所には、大泉洋らTEAM NACSが所属、個性派俳優を抱え 全国へ活躍の場を広げ、プロデューサーとして鈴井貴之監督作品「man-hole」 「river」やTEAM NACS全国公演「LOOSER~失い続けてしまうアルバム」以降の作 品等で采配を振るう。2012年、事務所創立20周年を機に「CUEのキセキ」を出版 (発行:メディアファクトリー)。食、観光、地域産品等北海道の様々な魅力を全 国に伝えたいという思いから映画『しあわせのパン』(2012年)、『ぶどうのなみだ』(2014年)を企画。
2012年に株式会社Link&Loopを設立、同年11月にオープンした「boulangerie coron」は現在札幌市内で2店舗展開。2015年9月17日にはレストラン「brasserie coron with LE CREUSET」(http://brasserie-coron.com/)がオープンとなった。