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クラシックしいたけを育てる最高級の音源、知られざる企業努力
上の写真のラジオは、一関の防災ラジオです。東日本大震災以後、各所に置かれるようになったこのラジオを作っているのは、今回のトップ画面でお見せした「しいたけ」を作っているのと同じところなのです!
マランツ、という言葉を聞いてピンとくる方は、かなりオーディオに詳しい方でしょう。株式会社千厩マランツは、オーディオシステムをはじめ無線レシーバー等の電子機器を専門的に作っていた会社です。
ところが近年、電子機器の組立ての仕事は、東南アジア諸国にどんどんと流れていくようになってしまいました。
「自分たちで一から始められる仕事もやっていかなければいけない」
そう考えた彼らは、電子機器の作成のほかに新規の事業を模索し始めました。そうしてある日、展示会でハウス栽培の菌床しいたけの栽培を発見したのです。彼らは閃きます。「しいたけ栽培をする際に、クラッシックを聞かせたらどうなるだろう……?」
私が活動している肉業界で有名な話に、「松阪牛にモーツァルトを聞かせる」という話があります。モーツァルトを聞いてリラックスした牛は、肉質が柔らかくなるのです。他にもクラシック音楽を活用した事業は多く、乳牛に聴かせたらお乳の出がよくなった、トマトに聞かせたら糖度が増した、酒麹に聴かせたら醗酵が進んだ……など枚挙にいとまがありません。
総称して「クラシック効果」と呼ばれているこれらの現象、自社のオーディオシステムから発生するクラシック音楽は、しいたけにどのような影響を及ぼすのだろう……?ちょうど大企業が撤退した工場の跡地に新工場を移設し、しいたけを栽培できるスペースを十分に確保できる環境が整ったところでした。
盛岡の農場に研修に行き、ゼロからしいたけ栽培に取り組みはじめました。東日本大震災にも負けず「アグリ部門」を開設、電子機器製品を組み立てるラインの部屋の、通路を挟んで隣の部屋にしいたけ栽培のラックを作りました。
最初のうちは暗く静かな部屋で刺激を与えず、楢の木のおがくずで作った菌床に菌を添加。菌は上部からゆっくりと沈んでいき、時間をかけて満遍なく浸透していきます。準備の整った菌床は、別の部屋に移されます。
私も、しいたけが育ちはじめた部屋にお邪魔いたしました。扉を開けると、そこには天上界の歓喜の旋律……。モーツァルトの交響曲41番〈ジュピター〉に、全身が揺さぶられました。湿気とほのかな霧の中、幻想的な雰囲気が漂います。身も心も癒される。このしいたけは、そんな現場で作られていました。
クラシックを聞いて育った、千厩マランツ「クラシックしいたけ」。肉厚で、深みのあるしっかりとした味わい、「ものづくり・日本」。企業努力が、このしいたけに詰まっています。
※掲載情報は 2016/09/01 時点のものとなります。
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キュレーター情報
株式会社門崎格之進 代表取締役
千葉祐士(熟成肉おじさん)
お肉に真剣に向き合う(株)門崎「格之進」の代表取締役。
岩手県一関市の馬喰郎(牛の目利き)の家に生まれる。東京で一般企業に就職するも27歳で脱サラ、地元に戻り、1999年より黒毛和牛を一頭丸ごと使う焼肉店を開店。2002年より熟成肉を研究しながら、地元食材にこだわった商品開発にも力を注ぐ。
「一関と東京を食で繋ぐ」をスローガンに東京へ進出。店舗を「地元食財のショールーム」と考え、地元生産者、地方行政関係者と消費者を結びつける活動をしている。
知人達からは「熟成肉おじさん」として親しまれている。