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甘みと酸味が見事に融合したフランス菓子
今までは、レストランでしか味わえなかったエスキスのパティシエ、成田一世シェフのお菓子が、3月31日にオープンした銀座の新名所、東急プラザ銀座の4階 ESqUISSE CINq「エスキス・サンク」でテイクアウトできるようになりました。現在のガストロノミーを築き上げてきた、海外の偉大なる料理人やパティシエたちの影響を受けたというシェフ。今、その持てるだけの力を自分の作品に投入し、他のパティシエとは異なるチャレンジを続けています。そんなシェフが今提案するのは、素材の力でトータルなお菓子の味を引き出すという手法。
たとえば、このタルト・タタンを成田流に仕立てた「タタン」。タルト・タタンは砂糖をたくさん使うお菓子です。しかし、成田シェフの手にかかれば、砂糖はほんの脇役。甘さはりんごをたくさん使うことによって、素材を凝縮させた甘味で表現。でも、だからといって甘いだけではなく、酸味もまた凝縮され、潔い味に仕上がっています。さらに、土台の折りパイ生地の気持ちいいほどまっすぐな層に注目。「焼いても、絶対に変形しない生地作りを工夫しているんですよ。だからぼくの折りパイ生地は全部均一に同じ形に焼けます。」とシェフ。従来の製法を変えていくことは、決断力と時間が必要です。しかし、彼はあえて挑戦します。それはひとえに、美味しく美しいお菓子作りのため。今後の創作も期待したいですね!
※掲載情報は 2016/04/08 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フランス菓子・料理研究家
大森由紀子
学習院大学文学部仏文科卒。パリ国立銀行東京支店勤務後、パリのル・コルドン・ブルーで、料理とお菓子を学ぶ。パリ滞在中、ツール・ダルジャン、アンブロワジー、アルページ、フォション、ホテル・ニッコーなどで修業し、ピエール・エルメやジャン・ポール・エヴァンとともに仕事をする。フランスの伝統菓子、地方菓子など、ストーリーのあるお菓子やフランス人が日常で楽しむお惣菜を、メディアを通して紹介している。目黒区祐天寺にてフランス菓子と惣菜教室を主宰。フランスの伝統&地方菓子を伝える「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」の理事。「貝印スイーツ甲子園」のコーディネーター、「世界50ベストレストン」の審査員、ル・コルドン・ブルー卒業生代表を務める。毎年、フランスの地方の食を訪ねるツアー、サロン・ド・ショコラツアーを開催。主な著書:「フランス地方のおそうざい」「私のフランス地方菓子」「パリ・スイーツ」「フランス菓子図鑑」など30冊以上。