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濃い目の味付け、しょうがの辛煮がアクセントに
折詰めのお弁当といえば……さまざまな店が思い浮かぶかも知れませんが、日本最初の折詰め弁当専門店は日本橋にある弁松総本店です。日本橋本店のほか都内の百貨店などで購入できる弁松の弁当。今回わたしが注目したのは、「並六 たこめし」です。並六。呼び方は“ナミロク”です。これは弁松専用の経木折のサイズのことで、六寸弱の大きさ(=10cm×16cm×2.7cm)がそのまま弁当の名前になっています。人気の並六は、白飯や赤飯とのセットがスタンダードですが、わたしは「たこめし」をチョイス。同店名物の惣菜に「たこの桜煮」があり、“タコへの強さ”を知っていた上での判断です。以前たこめしは季節限定品でしたが、現在は通年販売をしています。たこめしとおかずの二段のお弁当。コンパクトですが、中身はぎっしりと詰まっています。弁松の特徴はなんといっても“味の濃さ”。冷めた状態で食べることになる弁当では、ある程度の味付けが無いとご飯が進みませんが、弁松についてはこの心配事とは無縁です。同店のホームページには次のような文言が並びます。「弁松の弁当は味が濃すぎるとお感じになっているお客様、ごめんなさい。でもこういう味なのです。この味でなければだめというお客様、どうもありがとうございます。」……店としての揺るぎないポリシーを感じますね。
いただいたたこめし。タコは柔らかく味付けもしっかり。名物の玉子焼きやメカジキの照り焼き、豆きんとんや野菜の甘煮など……弁松のオールスターがスターらしい存在感で、食を押し進めてくれます。個人的にヒットしたのは、「しょうがの辛煮」。弁当の隅に漬物的なポジションで配置されていますが、この辛さがいいアクセントとなり、弁当全体にギュっと“締まり”を与えるような印象です。お江戸・東京を代表する老舗弁当、そんな逸品を手土産にいかがでしょう。
※掲載情報は 2016/04/02 時点のものとなります。
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キュレーター情報
コピーライター、グルメガイド
菅野夕霧
コピーライター、PRコンサルタント、Yahoo!ニュース配信元の『市ケ谷経済新聞』編集長。グルメや酒、沖縄離島旅が趣味。特にランチは“狙い”を定め、日々電車に乗って都内を中心に食べ歩いている。甘いモノを苦手としている関係で、“甘くない”土産の逸品を追求中。現在、All Aboutグルメガイドとして老舗店を紹介する「100年店ランチ」、日本トランスオーシャン航空の機内誌『Coralway』にて、「小さな島の小さな食堂」を連載中。著書に『ヤフートピックスを狙え』(新潮社)など。