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内戦続くシリアの高品質ワイン。平和を祈りつつ味わいたい
シリアでワインがつくられているのを知っていますか?
シリアは約3000年以上前からぶどうが作られていた土地ですが、ワインづくりの歴史は長い間途絶えていました。この地が故郷であるサードファミリーが、いま、シリアワインをまた世界に送り出し始めています。徹底的に探したというそのテロワールは高い標高、恵まれた地質と海風の吹く、ワイン作りには最適の土地。ですが、それと同時にそこは、いつ紛争にまきこまれてもおかしくない場所‥‥。すぐ近くで銃撃戦が行われ、また、実際に畑に爆弾が投下され、多くのぶどうの木が失われてしまったこともあるそうです。
シリア国内は内戦状態のため外国人の入国は禁止されています。そこで、サンプルをチェックするという作業ひとつにしても、タクシーを使いぶどうを氷詰めにして、8時間かけて輸送しています。もちろん、輸出するための手間も尋常ではありません。そうした想像を絶する困難を背負いながら、このワインはつくられています。
それは、この状況下でシリア国民が続々と国外に逃亡する中、なんとかして国内の雇用をつくりだし、守っていくため。そして、そんな苦労を追ってでもワインづくりするだけの価値ある素晴らしいテロワールがそこにあるから、とオーナーのサンドロ氏は語ります。
ワインを飲むことが平和につながるならば、という気持ちはもちろんわいてきます。でも、こうしてみなさんにワインを紹介したいと思うのは、このワイン自体が素晴らしいから。バージュラスのワイン造りは農薬や化学肥料を使わずにブドウを栽培。野生酵母で発酵させるというナチュラルな製法で行われています。赤は、シラー、カベルネソーヴィニヨン、メルローといった国際的な品種を使い、しっかりとした骨格がありながら、ミネラリーでタンニンはなめらか。シャルドネとソーヴィニヨンブランでつくられる白は、フレッシュでいて、フィネスを感じます。私が受けたワインの印象は赤、白ともにクール。ワインを味わうために何の先入観も感傷もいりません。そこにあるのは、ただおいしいワインがあるだけです。
ワインを飲みながら、世界の平和を願う。そんな日があってもいいと思いませんか。
※掲載情報は 2016/02/23 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理研究家
平野由希子
東京生まれ。料理研究家。日本ソムリエ協会認定ソムリエ。2015年にフランス農事功労章を叙勲。大井町のワインバー「8 huit.(ユイット)」オーナー。本格的なフレンチから毎日のおかずまで、素材をいかしたシンプルで作りやすいレシピが人気。近著に「ずっと使ってきた私のベストレシピ平野由希子のル・クルーゼ料理」(KADOKAWA)、「和つまみ」(ナツメ社)がある。2018年4月より、料理教室cuisine et vinを開講。