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昨年からラグビーの五郎丸さんフィーバーですが、北陸の五郎丸もスゴイって知っていましたか?
富山県小矢部市にある「五郎丸屋」は、創業は江戸中期の1752年という由緒ある老舗和菓子店。現在のご店主さんで16代目というから驚きです。
代表銘菓は「薄氷(うすごおり)」。
このお菓子は、ちょうど今の季節、2月3月の寒い朝に田んぼや水溜に氷が張っている様子をお菓子にしたもの。藩政時代には加賀藩主前田公から幕府に献上されたりしていたそうですよ。
富山の新大正米を使用した薄いお煎餅に和三盆等を塗って仕上げた干菓子なのですが、なんでも、他の和菓子店が真似をしようとしても出来ない技術で作られているんだそうです。
口の中に入れると、まさに薄い氷のようなパリンとした食感で、舌にのせると氷が解けるような口どけで、和三盆糖のやさしい風味が余韻に残ります。
さらに「季節の薄氷」も人気で、春は桜の花びらをモチーフにした薄氷「ひとひら」や、夏は「ほたる」、秋は「いちょう」、冬は「雪うさぎ」などがあります。さらに、おわら風の盆の期間中に販売される、笠をイメージした薄氷も人気を集めています。
老舗の挑戦 世界に通用する究極のお土産
そして、最も注目したいのが、「T五(ティーゴ)」という銘菓薄氷の進化版で、“世界に通用する究極のお土産”として観光庁に選ばれているんですよ。
※観光庁 2013年11月29日発表記事より
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news05_000169.html
お味は、桜、抹茶、柚子、和三盆、胡麻の5味。
和菓子と言うと、無難な味にまとまっていることが多く、特に老舗と言えば、安定感のある味が求められるわけですが、T五は16代目の挑戦心が覗けるお菓子で、老舗の技術をベースに冒険的要素が加わっていて面白いんです。
例えば黄色のは柚子味なのですが、しっかり柚子感があって、風味だけでなく酸味もしっかり効かせてあるんです。ピンクは桜で、風味や彩りの美しさはもちろんのこと、桜餅のように塩味も効かせてあって、味のメリハリも美味。
贈り物にすれば必ず喜んでもらえるはずです。
また、新たなお味として紅茶と加賀棒茶が登場しているのですが、こちらもオススメですよ。
「T五 加賀棒茶」は、丸八製の「献上加賀棒茶」を使用。風味の良さがそのままバーンと出ていて、まさに食べる加賀棒茶。ベースの甘さがイヤミでなく、風味の印象が鮮烈で、渋みまで味方に付けています。
「T五 紅茶」は、宇奈月にある「グレイスピース」さんのオリジナル紅茶「グレイスピース」という名の、マスカット香のするダージリンを使用しています。マスカットの香料を使っているわけではないのに、香りはマスカットそのもの。これは、氷筍水(ひょうじゅんすい)という日本では珍しい硬水を使用して、二次発酵させることで実現しています。
また、煮出した紅茶を練り込んでいるのではなく、粉砕した茶葉そのものが入っているので、その風味がしっかり出ているのもいい。
カリカリ食べるのもいいですが、最初は舌の上で溶かすのがオススメ。
最初はマスカットの風味が押し寄せて、次に品のある甘さが現れたかと思うと、紅茶のほのかな苦みが余韻を残すという、味の変化も面白いお菓子です。
今日もお腹いっぱい!あすかりんでした。
※掲載情報は 2016/02/15 時点のものとなります。
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キュレーター情報
一級フードアナリスト、利酒師
雅珠香(あすかりん)
金沢を中心に年間約600軒食べ歩くフードライター、通称あすかりん。
日本フードアナリスト協会認定1級フードアナリスト、SSI認定利き酒師、日本箸教育講師、食の親善大使「食のなでしこ2013」準グランプリ
著書に「あすかりんのおいしい金沢」「あすかりんのおいしい能登めぐり」がある。
北國新聞・富山新聞朝刊「あすかりんのランチで満腹」(毎週月曜日)連載中