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戸越銀座商店街を歩いていると
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戸越銀座の商店街を歩いていたら、一軒のおしゃれの佇まいのお店がある。外から覗いてみたら、試験管のような容器にカラフルな内容物が陳列されている。店の壁とインテリアは白と黒のモノトーンが素敵でトータルにまとめられており、手塩にかけながら作り上げたのだなと想像できた。ここはなんと塩屋なのだ。お店に入って、買い物をしてみようと、塩の話もたくさん聞いてみようと思い、お店のドアを開けた。
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白いシャツを着た店主の田中園子さんの塩に関する知識は豊富で面白く、料理に関しても詳しい。
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気仙沼018・写真真ん中の塩
気仙沼のお塩のお話から始まった。岩井崎で塩づくりをしていて311の震災で亡くなれた塩づくり名人の遠藤伊勢治郎の遺志を受け継ぎ地元有志が試行錯誤を重ねて塩づくりを再開した。岩井崎はプランクトンが豊富な海なので旨味を感じることができる。そして店主も好みなキラキラとした結晶は忘れることができないと語った。試食してみるとキメ、味も今まで使用してきた塩に旨味がプラスされているように感じた。日本という国は海に囲まれ、寒流と暖流が間近で流れて織りなす素晴らしい国だなと感じた。この塩をかけて焼いたお肉にこの塩の旨味が乗ったら、舌が震えて喜ぶに違いないと思った。
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モンゴルUvs401
私も以前好んでカレー作りにモンゴルの岩塩を使用していて、お世話になっている(株)きとうむらの日野雄策さんから教えてもらった塩がモンゴルのサンギンダライの塩だった。その慣れ親しんだサンギンダライの塩が入荷しなくなったので、他の塩を使用していた。それはそれで、色々と試せて良かったのだが、またここsolcoでモンゴルの塩に再会してしまった。ここsolcoのカレー塩はご塩(ご縁)でスパイス調合のお手伝いさせてもらった際、試作中いろんな塩で試しましたが、店主と一致したのが、モンゴルの塩とスパイスは合うことだった。塩の個性よりもスパイスを混ぜた方がより個性が出る塩なのです。モンゴルではジャムツ(神聖な)ダウス(塩)と呼ばれ、医療用に使用されています。
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兵庫の自凝雫塩フレーク021
兵庫県淡路島近辺に浮かぶ島々には、日本書紀や古事記に「おのころ島」として神様が塩の山を作ってできたという言い伝えがある。そのおのころ島から日本が作られたという神話がある。鉄鍋で炊き、甘さを引き出すためにゆっくり低温で蒸発させて作る作り方で、ゆっくりと結晶ができる。このフレークは2mmのふるいにかけて、残ったもののみ瓶詰めされている貴重品で、しょっぱ味が柔らかで料理を優しく仕上げられる塩。この塩はsolcoを訪ねてきたお客様が紹介してくださり、ご塩(ご縁)を結んでくださったと話されていました。
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伊達の旨塩を持つ店主。
店主田中さんと塩とのご塩(ご縁)の話をしなくてはなりません。塩を商売にするとは考えてなかったと話されていたのですが、食に関する勉強はなさっていて、食べることは大好きだったようです。食に関するお店を出したいと考えていたところ、東北を旅行している時、伊達の旨塩と出会って、塩にのめり込み、塩の素晴らしさを知ったようです。そしては今では塩を伝えたい一心でお店に立っています。そんな田中さんの心をとらえた伊達の旨塩は美味しいでしょうね。
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高知あまみ012と高知山塩小僧013
同じ海の海水から採取した塩ですが、何かが一緒であるだろうと思えるが、全くと言っていいほど違いがわかる塩です。これらは塩を作る場所、そして製法が違うのです。あまみ012は天日塩作りで、高知で最初に塩作りを始めたあまみ屋の塩。しょっぱくて旨い、昔かたぎの味と店主が話されていました。山塩小僧は海沿いで天日塩作りをされている方が多い中、あえて四万十川近くの山側まで海水を運び、ゆっくりと濃縮して天日塩作りをしている。ゆっくりと濃縮させるとカルシウムを残し、結晶させます。そうすることで甘味、苦味そしてえぐみ、雑味といろんな味が凝縮されていました。そしてしっとりとしている。ピラミッド型の結晶も少し残したこだわりのある塩でした。
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私の選んだ3本セット
最後に「フィッシュヘッドカレーを作りたいのですが」と店主に尋ねてみると、バリ島天日塩粗塩201を紹介してくれました。こちらの塩を味見してみるとココナッツのミルキーさを感じました。説明を聞くと濃縮させた海水をココナッツの幹に入れて結晶させ、塩田で使用する道具は全て天然素材のココナッツを使用していると教えてくれた。製法、道具で味が変わる塩の敏感さにも驚きでした。013の山塩小僧は前述した通りです。solcoはおにぎりを買って塩をかけながら試食できるサービスがあるのですが、その中でも満潮の塩がその時かけた塩の中で一番気に入りました。この満潮の塩は沖合の海水が岸に引き寄せられる満潮時に海水を取り、濃縮して作られたお塩です。最初しょっぱ味を感じ、その後コクと旨味を感じることができました。
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滋賀県の無農薬米のおにぎり(塩結び)を購入して、専用スプーンで塩をかけながら試食をしました。一口一口いろんな塩で試せるのが嬉しかった。
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お店を出た時、ブルーモーメントの戸越銀座の空が海近くでの塩づくりを彷彿させた。
※掲載情報は 2016/01/18 時点のものとなります。
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キュレーター情報
貿易商・スパイス調合師
シャンカール・ノグチ
1973年、東京都生まれ。
インド、パンジャブ地方出身の祖父L.R.ミグラニが立ち上げたインドアメリカン貿易商会の3代目としてインド食品の製造、輸入に携わる。
日印混合料理集団「東京スパイス番長」に所属して、雑誌などのメディアに情報やレシピを提供し、レストランのメニュー開発もしている。
著書に「ハーブ&スパイス事典 世界で使われる256種」「スパイス選びから始めるインドカレー名店のこだわりレシピ」や「インドよ!」、2016年には共著で「世界一やさしいスパイスカレー教室」がある。