【クローズアップ】アメリカの「スペシャルティケーキ」の文化を日本に!鈴木ありさ

【クローズアップ】アメリカの「スペシャルティケーキ」の文化を日本に!鈴木ありさ

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20歳でアメリカのケーキビジネスと出会い、趣味と仕事が一本の道でつながったと感じた鈴木ありささん。単身で渡米し、ニューヨークの名門スクールで最先端の技術を身につけ帰国。まだ日本では数少ないケーキデザイナーとして、各方面から注目を集めています。そんな鈴木さんに、スペシャルティケーキとの出会いや留学時代のエピソード、日々大切にしていることを教えていただきました。

喜ばれることが嬉しかった趣味のケーキ作りから、ケーキデザイナーの道へ

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Q:ケーキデザイナーとは、どのようなお仕事ですか?
メインは、イベントやパーティーのためのオーダーメイドケーキの製作です。注文を受けて、お客様からヒアリングしたご要望をもとにケーキデザインのスケッチを描きます。それを見ていただき、ケーキ製作に入ります。私の場合、見た目だけでなくフレーバーもデザインの一部と考えているので、イベントのコンセプトや、パーティーの主役となる方が好きなものを教えていただいたりして、世界に一つのケーキに仕上げていきます。ほかにも、雑誌や広告の撮影でバックグラウンドに使われるケーキの製作、企業イベントやファッションブランドの展示会などのケータリングも行っています。

 

Q:ケーキデザイナーになろうと思ったのはいつ頃、どんな経緯でしたか?

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14歳くらいからケーキ作りが趣味で、友だちや家族のためにケーキを作っていました。みんなに喜んでもらえるのが嬉しくて、当時日本ではあまり見かけなかったデコレーションケーキを、高校を卒業するまでに100個くらい作ったと思います。高校を卒業して日本の大学の芸術学部に進学し、1年目でパーティーデザインなど空間をデザインする分野への興味が高まり、2年目からの専攻は空間造形学科を選択しました。でも、本当は前年まであったインテリアデザイン学科を一番希望していたこともあって、「ちょっと違うかも?」と違和感を抱きながら過ごしていました。

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春休みになり、当時アメリカで音楽留学していた幼馴染に会うため、ボストンへ行きました。そして初めて、アメリカでは私が趣味でやっていたケーキ作りがビジネスとして成り立っていて、しかもケーキデザイナーが人気の職業であることを知り衝撃を受けました。ケーブルテレビで数多くの番組が放送されている中、アートのケーキ関連番組だけで4番組くらいあることにも驚きました。そして「ケーキデザインは日本でも絶対ビジネスになる!」と強く感じ、「自分が進む道はこれしかない!」と思ったのが、ケーキデザイナーを本気で目指すことになった経緯です。

 

Q:その後ニューヨークへ渡るまでに、どのようなことがありましたか?
日本に戻り、大学でみんなが就職について考え始めている中、私は授業にもなかなか身が入らず、自分が本当にやりたいことが見つかった今、これ以上大学に通うのは時間とお金がもったいないと考えるようになりました。そしてとうとう「お願いだからケーキデザインを学ぶために留学させてほしい」と、親に申し出ました。「大学を辞めてまで選ぶのだから、いずれその道で起業できるくらいの覚悟と、それに必要な技術がしっかり身につけられるようなところへ進むべき」という親の意見もあり、ニューヨークにあるThe Culinary Institute of Americaという学校のペイストリーアーツ学科に進学することになりました。

 

この学校は、有名なケーキデザイナーを多く輩出していて、最先端のケーキアートや技術を学ぶことができることに加え、料理のジャンルで大学卒業の単位が認められている唯一の学校です。入学には半年以上の調理の実務経験が必須だったので、料理教室のアシスタントなどを経験した後、ミシガンで半年間語学学校に通い、約1年間の準備期間を経ての入学となりました。

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Q:留学当時の思い出や苦労話などのエピソードを聞かせてください。

最初の2カ月は座学が中心で、ペイストリー学科と料理学科が一緒の授業だったこともあり、何百種類もの食材の名前を英語で覚えるのが大変でした。半年も過ぎて学校の勝手にも慣れてくると、語学面で苦労することはほとんどなくなりましたね。2000人くらいの学生がいる中で、日本人は一番多い時で6人。私だけという時期もありました。卒業までの2年弱は本当にあっという間で、卒業後はニューヨークのケーキデザイナーのもとで2年間の実務経験を積み、帰国しました。

原点は、10代の頃にケーキを作っていたのと同じ「人を喜ばせたい」という気持ち

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Q:日頃大切にしていること、こだわりはありますか?
仕事の面では、「好きなことで仕事をしいているからこそやりがいがある」ということを、いつも意識しています。ひとりで仕事をしているので、モチベーションを維持しながら、どのお仕事もないがしろにすることなく、一つひとつを楽しみたいと思っています。私は率先してリーダーシップをとったり、人をまとめたりするような目立つタイプではなかったけれど、好きなことに関しては何がなんでもやり通す頑固なところがあります。それに、褒められて育つタイプなので、人に喜んでもらえて評価してもらえるのが何より嬉しいし、原動力になります。

 

ケーキ作りのこだわりは、アメリカのケーキというと、凄く甘くて着色料をたくさん使っているという印象を抱いている人がまだまだ多いと思うので、そのようなアメリカ=美味しくないというイメージを壊すこと。日本人向けの味にレシピを修正するなど、見た目だけじゃなく味にもこだわっています。

 

Q:ケーキデザイナーになって一番嬉しかった経験は?
たくさんありますが、日本ではケーキデザイナーを名乗っている人が少ないので、各方面で注目していただき、取り上げていただけるのは嬉しいです。留学中から「ケーキデザイナーへの道」というテーマで発信していたブログをずっと読んでくださっていた方が、帰国後も注目してくださっていたり、ケーキデザイナーはパティシエとは違う存在だということも理解していただけるようになっていたり、何より1人のアーティストとして扱っていただけるのが嬉しいですね。夢を仕事にした経験者として、教育機関からも多くの問い合わせをいただきました。

 

Q:教訓にしている経験はありますか?
ずっと友達や家族のためにケーキを作り、学校を卒業してからは月給で働いていたので、独立したての頃は自分の仕事に対する値段のつけ方がわかりませんでした。知り合いやその紹介で注文してくださっていたりするとなおさら、材料費くらいしかいただきたくなくて……。でも、ビジネスとして続けていきたいなら、それではいけないと。アートケーキの市場が成熟しているアメリカの相場をそのまま持ち込むのは難しくても、自分の仕事の価値を下げてはいけないし、それを守るのも自分なんだと自覚するようになりました。

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Q:今、目標にしていることを教えてください。
1人で活動できる仕事量の限界に達しているので、インターンを募集しています。実は、1年半前から準備している大きなプロジェクトが来年形になります。1人では絶対にできないことで、たくさんの人たちと関わりながら成功に持っていくことが今一番の目標です。

 

Q:鈴木さんにとって「食」とはどのようなものですか?
オフタイムに仲のよい友人と、美味しいもの食べて飲むのが一番のリフレッシュになります。私にとって「食べる」ことは親しい人たちとの「時間の共有」でもあります。衣食住の中で一番大切にしているのは「食」ですね。

 

Q:パーティー好きとして、おもてなしのコツを教えていただけますか?
自分なりにコンセプトを決めて、事前準備をしっかりしたら、あとは自分自身が楽しむことでしょうか。高校生くらいの頃から、仲間で集まってパーティーするのはいつも私の家だったので、クリスマスならクリスマスらしい装飾をして、デザートや料理を作って、みんなに楽しんでもらえるように、あれこれおもてなしを考えていました。やはり、ホスピタリティは欠かせないと思います。近々引っ越す予定があるのですが、新しい家のコンセプトとして、いつもみんなが遊びに来てくれて、わいわいパーティーしているようなお家にしたいと考えています。

【クローズアップ】アメリカの「スペシャルティケーキ」の文化を日本に!鈴木ありさ

【プロフィール】
幼少時代からアートや海外のパーティーに興味を持ち、大学ではビジュアルアートを専攻。学生時代に訪れたボストンでケーキビジネスの存在を知り、日本にもスペシャルティケーキの文化を広める存在になる事を決意。本場の技術を学ぶため、NYにあるThe Culinary Institute of America ペイストリーアーツ学科に進学。ケーキデコレーション第一人者であるBetty Van Norstrand氏と全米最高峰との呼び声も高いケーキデザイナー Ron Ben-Israel氏の元で学ぶ。二年次には学校代表でコンペティションでのセンターピースを任され金賞と最優秀賞と獲得。卒業後、元ファッションデザイナーCharlotte Neuville氏のケーキビジネスに一から携わりシニアアシスタントとして約2年間様々な作品制作を任される。2014年1月より5年ぶりに日本帰国。日本へSpecialty Cakeの文化を届けるという留学の本来の目標を達成すべく、独立。ウエディングやイベントでのデザインケーキ、デザート製作と共に、雑誌やウィンドウディスプレイ様の展示や撮影を目的としたケーキも製作している。

※掲載情報は 2015/12/08 時点のものとなります。

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