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ハプスブルク王家が惚れ込んだベーカリー
フランツ・ヨーゼフ皇帝から贈られた勅書
ウィーンに次ぐオーストリア第二の都市「グラーツ」。人口24万人ほどのこの都市では、中世から現代にいたるまでのあらゆる建築様式を、コンパクトな町の中で見ることができます。ここにかつて、オーストリア-ハンガリー帝国を築いたハプスブルク一家が愛し、今なお不動の人気を誇るベーカリー「ホーフベッカライ エーデッガー・タックス」があります。
古くは14世紀からベーカリーとして営業を始めたとも言われている「ホーフベッカライ エーデッガー・タックス」は、1883年に時のハプスブルク家の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世がグラーツに滞在した際パンを献上した事をきっかけに、以来、宮廷にパンを供給し続け、1888年に「王家御用達」の勅書を授与されました。
そして20世紀、タックス家の娘のもとにエーデッガー家から婿を迎え入れ、以来「エーデッガー・タックス」という屋号で営業しています。
「エーデッガー・タックス」で作られる至極のパン
オーストリアでは、外側はかりっとして、中はもっちり、バゲットとベーグルの中間のようなカイザー(皇帝が被る王冠を模した、小型のテーブルパン)がよく食べられています。ホテルの朝食には必ず登場しますので、現地に旅行に行かれた方はご存知かもしれません。
「カイザー」は元来、伝統的に手で成形して製造していましたが、近年は大量生産と効率化にともない、専用のスタンプで型押しするのが一般的になりつつあります。「エーデッガー・タックス」では、あえて昔ながらの手成形で製造しています。そうした手作業のゼンメルは、スタンプ成形のものと区別するため、「ハンドカイザー」と呼ばれます。
スタンプの場合、丸めた生地の上からスタンプで押しつける形になるので、生地がつぶれてしまいがちなのですが、手成形の場合、平たく伸ばした生地を折り紙のように折り重ねることで成形するので、生地の層がうまれ、結果的にふっくらもっちりした食感に仕上がります。
もうひとつ、「シシーブッセル」は、フランツ・ヨーゼフ1世の妻エリザベートのために、王家御用達店が捧げた一口菓子です。エリザベートは悲劇の女王とも呼ばれますが、夫との結婚生活に物足りなさを感じ、始終ヨーロッパ各地をあちこち旅しては、現地のカフェハウスでお気に入りのお菓子を食べるのが唯一の楽しみでした。
ゆえに、オーストリア各地の菓子職人は、エリザベートに気にいられるよう、さまざまな趣向を凝らしたお菓子を作ってきました。シシーブッセルに関しても、そうした背景のなかから編み出されたお菓子だといえるでしょう。ヘーゼルナッツを使ったメレンゲ生地は、フランスのマカロンよりもがりがりと固く、噛みごたえがあります。間にアプリコットジャムを挟んで、酸味がとてもさわやかです。
「エーデッガー・タックス」不動の人気の秘訣
昔ながらのの製法で、美味しいパンを作り続ける。奇をてらうのではなく、流行を追い求めるのではなく、毎日食べるパンを、丁寧に、美味しく作る。そうした当たり前のことを、当たり前にずっと続けてきたからこそ、「エーデッガー・タックス」は、長く愛されてきました。実際のところ、グラーツ市内にもおしゃれなベーカリーが次々オープンしていますが、「王家御用達」という信頼と、その信頼を裏切らない丁寧な造りが多くの方々から支持されているのです。
そうした信頼は、お客様を迎える店頭の木彫りのファサードの美しさ、王家の象徴である双頭の鷲のエンブレムに象徴されています。
2015年9月5日より、老舗ベーカリー「ホーフベッカライ エーデッガー・タックス」が、千代田区の商業施設「マーチエキュート神田万世橋」のS3区画にオープンしました。海外進出第1号店となるこちらのベーカリーでは、本店と変わらぬおいしさとパンへのこだわりを味わう事ができます!
ホーフベッカライ エーデッガー・タックス
住所:東京都千代田区神田須田町1-25-4マーチエキュート神田万世橋 S3区画
※掲載情報は 2015/12/08 時点のものとなります。
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キュレーター情報
オーストリア大使館
オーストリアはドイツの南方、中部ヨーロッパの内陸に位置し、面積は北海道より少し大きく、9つの州から成り立っています。地理的にヨーロッパの交通の要所だったため、さまざまな食文化の影響を受けています。18世紀、首都ウィーンはハプスブルグ王朝の帝都としてますます発展をとげました。ウィーン料理とお菓子の発展は、ハプスブルク家の歴史と深く結びついています。帝国の発展ととともに、ウィーンには様々な料理とお菓子が各国からもたらされました。ウィーンのお菓子職人によって、もともとは素朴なものだった郷土菓子が、豪華なスイーツに変身したといわれています。ウィーンだけではなく、9つの州それぞれに独特な郷土料理や文化を育んできたのもオーストリアの魅力です。歴史あるオーストリア料理とお菓子を通してみなさんにオーストリアの魅力を伝えると共に、興味を持ってもらえる話題をご提供していきます。